2000年度森基金報告書 - 研究者育成費

仮想基準点方式RTKにおけるインターネット利用

政策・メディア研究科 修士課程1年
川喜田 佑介



本研究の概要

仮想基準点方式RTK機構には、観測データを制御局へ収集する必要がある。本研 究では、観測データをリアルタイム収集する機構をインターネットを用いて設計・ 実装した。その結果を公開実験としてデモンストレーションし、実用に耐えるも のであることを実証した。

研究活動

2000年5月より、TV朝日、日立製作所、DXアンテナおよびWIDEプロジェクトが中 心となり、仮想基準局方式の検証を目的とした実験システムを構築した。この実 験システムは基準局部、制御局部、送信局部から構成され、私は基準局部を構築 した。

基準局部は、WIDEプロジェクトで運用している慶應義塾大学藤 沢局、(旧)郵政省通信総合研究所小金井局、同大手町局に加え、(旧)建設省国土 地理院筑波局、同鹿野山局、(旧)郵政省通信総合研究所鹿島局を設置した。私は このネットワークとソフトウェアの設計・実装・設置・運用を行った。

本実験の成果を2000年9月7日に公開実験という形でデモンストレーションした。公開 実験は千葉県習志野市の日立製作所習志野事業所で行い、約200名の来場者があ った。また、その様子はテレビ朝日ニュース番組内で紹介された。また、本研究 に関連する論文をIC2000に発表した。直接の著者ではないが、共同研究者が日本 航法学会GPS研究会のGPSシンポジウム2000で発表を行った。

上記実験システムに基づいた実験結果の一例を示す。習志野での1時間の観測の 結果、2drm=2.4cmという結果が得られた。これは、最も近い基準局まで30kmの地 点であり、通常ならFIX解が得られない(通常は10-15kmが限界)地点であり、通常 の短基線でのRTKとほぼ遜色のないものであるといえる。

本実験は、私企業と大学の共同実験であったが、2001年2月より社団法人日本測 量協会が主催する「リアルタイム実験」委員会として多くの企業大学が参加する 実験に発展しており、これは現在も行われている。この委員会では、慶應義塾大 学・WIDEプロジェクトはAグループ(情報提供者側)として参加している。

機材等の購入について

本研究予算では基準局部の機材、観測用の機材の購入に当てた。当初の予算計画 であった部分は別予算から調達した。

研究成果一覧

"インターネットを介したGNSS補正情報配信プロトコルの設計"

川喜田佑介, 植原啓介, 羽田久一, 村井純
インターネットコンファレンス2000論文集, pp.113--pp.122, Nov 2000

仮想RTK基準局方式の公開実験

千葉県習志野市の日立製作所習志野事業所,2000/9/7
ニュースリリース 概要

仮想基準局方式を用いた高精度位置インフラへのアプローチ

河口星也、笹野耕治、藤井健二郎、近藤雅信、羽田久一
GPSシンポジウム論文集, pp.177--pp.184, Nov 2000