ユーザの視点に基づいたネットワークの性能評価に関する研究

成果報告書

政策・メディア研究科・修士課程1年

牧 兼充

 

研究テーマ

ネットワークの性能評価指標の生成と実践

 

研究課題

本研究の目的は、ユーザの視点に基づいたネットワークの性能評価手法の確立である。心理測定法、トラフィック解析などの手法を用いて、ユーザのネットワーク性能の満足度を測定する実験を行い、性能評価基準を生成する。その結果をもとに、LAN(SFC-CNSなど)、地方自治体(岡山県、高知県)のネットワークなどの評価を行い、今後のインフラ設計に対する提言を行う。

 

研究成果概要

本研究ではユーザの視点に基づいたネットワークの性能評価指標を提案する。具体的には、ユーザが最も良く使うアプリケーションとしてWWWサービスを選び、あるネットワークを利用した際のユーザの満足度を定量的に評価する。

指標の作成のために、心理測定法による実験を行った。地理的・ネットワークトポロジー的に分散するサイズの異なる27Webページを選び、32人の被験者がそのページを閲覧した際のサービスの満足度を5段階で評価した。それと同時に、ネットワークのトラフィック測定を行い、RTT平均、コネクション時間などの既存のネットワークの性能評価指標と被験者の満足度の相関を分析した。解析の結果、RTT平均、データ転送開始時間、総転送量は、満足度と有意な相関が見られた(図「RTT平均と満足度の相関」「満足度との相関係数一覧」参照)。一方パケット数、コネクション数、スループットなどは、満足度と有意な相関は見られなかった。この結果に基づき、重回帰分析を行い指標を作成した。指標における説明変数は、RTT平均、データ転送開始時間、総データ転送量とした (図「評価式」参照)

また、性別、利用歴、利用環境、利用時間、利用目的などのユーザの属性により、ネットワークの利用した際の満足度に有意な差があるかを検証した。そのために、実験を行う際に、同時に簡単なアンケート調査を行った。結果に対して、分散分析を行った結果、全てのユーザの属性に関する値について統計的に有意な差は見られなかった。

最後に作成した指標を用いて、実際に接続環境の異なる2つのネットワークの性能評価を行った。具体的には、2つのネットワークにおいてネットワーク測定を24時間行い、その結果からRTT平均、データ転送開始時間、総転送量を算出した。そして作成した指標に基づき満足度を算出した(図「評価実験」参照)

本研究にて提案する、「ユーザの視点に基づいたネットワークの性能評価指標」を``UPM: User-oriented Perfomance Metrics''と呼ぶ。