分散コンピューティングの中で、1999年後半から社会的に注目を集めているの がピア・トゥー・ピアと呼ばれるコンセプトに基いたファイル共有サービスで ある。ピア・トゥー・ピア(以下P2P)コンピューティングとは、「計算機資 源およびサービスの直接交換による共有」を指す概念的な用語である []。P2Pというコンセプトは特に新しいものではなく、米IBM社が提唱する APPN(Advanced Peer to Peer Networking)の中で用いられたのが最初とされて いる。また以前からネットワーキングの分野では、マスタ/スレーブ関係によ る階層化を必要としない接続形態を持つLAN等を指して、ピア・トゥー・ピア・ ネットワークという用語が使われてきた。
ここでのP2Pとは自律分散システムの一種であるが、そのシステム構成によっ て以下のように2種類に分類されることが多い[]。
P2Pシステムが純粋なC/Sシステムと異なる点は、個々のコンピュータがサーバ としてもクライアントとしても機能する点であり、ネットワーク上に分散した 複数の計算機資源を対等な関係で共有する仕組である。C/Sシステムのような 垂直的な役割分担の構造は持たず、個々のコンピュータが対等・対称に機能す るようにデザインされている。P2Pシステムではネットワークに遍在するデー タを一元的に管理する必要がなく、負荷分散や大量のデータの並列分散処理等 に威力を発揮し、またデータベースの更新・維持にかかるコストが低い等の利 点がある。