森基金2000年度報告書

慶應義塾大学政策・メディア研究科 修士課程1年 小林真咲
学籍番号 80031561 E-mail:maako@sfc.keio.ac.jp

研究計画


	戦後50年間の保育の主流を担ってきたのは、保育園に代表され
る施設型集団保育である。このシステムでは、預ける側の親には場所、保
育士を選択する権利は無いに等しい。女性の社会進出、多様な個及び価値観の
存在により既存のシステム内での対応(延長保育、一時保育、夜間保育など)
も試みられている。旧労働省は平成5年以来ファミリーサポートセンター事業
として地域の資源を活用し、子供を預かってくれる人と預けたい人の仲介事業
を開始した。国の対応以前からNPO的に活動している団体、対応後に開始し
たNPO型企業など、サービスの頻度は増加している。地域資源として、子育
て経験のある人がその自宅において、預かってもらいたいというニーズのある
人の子供を預かるこのサービスの形体を、ここでは地域住民相互扶助による
「マッチング型家庭保育」と総称することとする。
	マッチング型家庭保育は、既存の施設集団型保育とは異なり、利用者の選
択権を最大限に活用する、つまりは「親が信頼できる人、預けたいと
思える保育をしてくれる人」を保育者として選択することができることで、そ
の良さや可能性を拡張する事ができる。ITを活用し、保育情報をオー
プンに公開し、共有する試みは、親の選択を信頼を主としておこなえるものに
すること、また預かる側同士のネットワークを深め。広げる事により、最も心
配の種とされる密室保育に関する信用をえることができる。また本来の趣旨で
ある多様な個による多様な保育サービスの定着化と発展に大きく寄与するもの
と考える。

	今回の森基金宛ての報告書には、マッチング型家庭保育サービスの現状と
して最も古い歴史を持つ乳幼児保育ネットワーク団体エスクの代表名木純
子さんのインタビューを主に掲載する。また、マッチング型保育を支援す
る横浜市関内にオフィスを構える有限会社トランタンネットワーク新聞社
での参与観察について報告する。最後に現在申請中であるIT活用事業
の概要にふれ、本年度の報告書とする。

	今後の予定としては、マッチング型保育サービスの現状を把握するた
めに、2002年末までにおよそ84ヶ所の市区町村に設置され運営されてい
るファミリーサポートセンター事業の定量調査調査により、全国的な
現状を把握する。これらの結果から、サービスの活発な地域と難航している地
域を選び出し、定性調査によってサービス成功の要因を分析する。そ
して、今後ITをマッチング型保育サービスに活用する実証実験を行う
上での保育コミュニティをトランタンネットワーク新聞社より抽出し、I
T利用によるサービスの変化、定着、意識の考察を試みる。子育て関連ではこ
のようなITの導入は画期的であり、トランタンネットワーク新聞社を対象と
したIT活用の実証実験の結果は、保育に限らず、介護、福祉全般に対して先
行したモデルを提案できる可能性を秘めており、今後の社会システムに変化を
もたらす重要な試みであると感じている。

CONTENTS

エスク代表名木さんへのインタビュー

有限会社トランタンネットワーク新聞社での活動(IT活用への提案)

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