・エスクの立ち上げについて ・家庭保育の利点とは ・地域住民相互扶助によるマッチング型家庭保育の今後の展望
エスクから学ぶマッチング型家庭保育サービスのマインド
今はお孫さんもいらっしゃるというエスク代表名木さんにエスク立ち 上げの動機を尋ねた。 上のお子さん3人が年子で、4人目の出産時には既に数年前から想い描 いていたエスクの構想はかたまっていたという。世の中の保育システムに対す る危惧を井戸端会議的に周囲の子育て仲間に語っていく日々が続いていた。と ても素朴な活動だったという。国際児童年、学校以外の学びの場の台頭、欧米 やアジア、日本型の保育の比較、子供の育ち方や育て方の社会システムに対す る関心の高まりと共に、名木さんの近所で子供を預かるという活動や構想が新 聞の社説に取り上げられる事になる。 この社説を読んだ読者から新聞社当てに手紙が殺到する。子供の世話 をしたい、子供を育てる事に関わる活動をしたい、そのようなチャンスが身の 回りにはなかったという文面の手紙だったそうだ。つまり、何か人の助けをし たい、子供に携わる分野で困っている人を助けてあげたいという人の声がつな がり始めたのである。70年代に、名木さんの活動を新聞を通して知った人々か ら届いた手紙を中心に全国的に意見交換が始まった。それがエスク発祥の第一 歩だったのである。 新聞の反響は思った以上にあったという。名木さん自身が4人の子育 て真っ最中ということもあって、居間を子供たちに開放することも多かったそ うだ。取材にきた新聞記者が残したコメントである「保育園って汚いんですよ ね。あれじゃ病気になりますよ」という言葉をうけて、実際に見学にいく。現 在では制度も充実し、保育園の質もよくはなってきているが、やはり集団で保 育するという点においては、ケアーが行きとどかない点も少なくはなかった。 特に0,1,2,3歳の子供たちにとっては、家庭的な雰囲気の中で育まれる重要 性を感じたそうだ。 子育ては決して閉塞してするものではない。普段知り合っていれば、 助けあえる環境さえあれば、地域で支えあって子育てを進めていく事ができ るはずだ。強い思いとともに、エスクという名を活動につける。1973年秋のこ とである。「電話一本で相談にのってもらえます」というようなキャッチコピー で、自分たちの生活そのままの状態で、地域で子育てを支えあっていこうとよ びかける。200名の人々が殺到し、支えあいに必要な知り合うためのしかけづ くりの必要性が実感されたという。 今回インタビューをさせていただいた事で、私はマッチング型家庭保 育サービスを研究する上で決して見落としてはならないマインドを実感できた ように思う。 エスクでは、「顔のみえるようなケースワーク」と「まさかの 時のフォローアップ」を着実に築きあげてきた点で会員間の信頼が蓄積されて きた。旧労働省のファミリーサポートセンター事業はエスクの活動をモデルと して発足したものではあるが、日も浅く、地域(主に各自治体による運営)の 中でのみの活動、行政施策の範囲では間に合わなかった内容が重点的にサービ スの対象となってしまいがちという点に改善の必要性があると感じる。エスク の保育者として登録する会員は自分づくりであり、本人生き方であり、資質、 家族の協力などがトータルに評価されてマッチングの質を高めている。利用者 にとって料金が安いことだけがサービスを選択する上で重要なのだろうか?コ スト以上に信頼性によりサービスが評価されていく事が重要なのではないかと 感じました。子供を共に育てていこう、困った人を助けたい、このような気持 ちを共有し、それぞれの活動が地域や、運営主体などの枠を超えた部分で共有 できるマインドをつなげることで応援しあい、支えあえるしくみが強化されて いくことこそが、今マッチング型家庭保育サービスに必要な動きであると感じ た。 ←最初のページへ