有限会社トランタンネットワーク新聞社との出会いは、2000年夏に神 奈川大学で開かれた第32回全国合同保育研究会である。冒頭から私が総称して いる「マッチング型家庭保育」活動ののネットワークとコミュニティを担う会 社である。トランタン新聞社は「ブラボー子育て21プロジェクト」を立ち上 げており、地域の子育て経験のある女性が保育ニーズに応えていくという有償 のコミュニティビジネス まずはこのブラボー子育て21プロジェクトの「家庭保育園」につい て概要を説明する。2000年1月から開始された「家庭保育園」はトランタン新 聞社が3日間の講習を終了し認定した親を園長として、彼らの自宅で有償で 子供を預かることを認定する。という意図よ同時に、園 長である親の自立を支援しているのが狙いとなる。保育料としては時給600円 程度を基本としており、各園の園長が独自に設定をおこなっている。保育時間 や、保育方針、延長がいかせる特技(ピアノが弾ける、アトピー対応食の知識 があるなど)を各自にPRしてもらる。保育利用者側は、預けたいと思える保育 方針の人に預ける事ができるという点で選択の幅が広い。実際に、プロジェク トが進行し始めて1年が経つ今、横浜を中心に家庭保育園は100園開設されてい る。
私自身家庭保育園開設者7期生として、時間の都合がつくかぎりで保 育を担当している。実際時間が取れずに、まだ一度しか預かっていないのも現 状だ。しかし、今後お互いに預けあえるしくみが充実していく事を願ってやま ない。そこで登場したのがITを活用し、マッチング型家庭保育サービスの充実 と規模拡大を支える事ができないどあろうかという提案である。ITを活用する 事で、サービスにどのような影響をもたらすのか、その流れを以下に掲載する。
現在横浜市を中心に100園が活動しているが地区別で見ると旭区が 圧倒的に多い。親の一時的な預かりのニーズや、保育園の送迎などのニーズを 満たすには、利用者の自宅や職場に近い園という距離的な制限がつきまとう。 100園ではまだまだ 少ないのが現状で、本当に預けたい人に預けるという しくみが成立するためには、選択肢がより充実する事、つまりはマッチング型 家庭保育サービスの規模が拡大することが必須条件となる。
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・今後、この形式のサービスが発展する上で保育者の自宅で預かってもらうために、 非常に閉鎖された空間での保育、密室保育というイメージのリスクを解消する必要が ある
・各家庭保育園の園長も、自分本意の保育を回避するためにも、その他の園長との連動 を促すしくみの充実が必要となる
・サービスの良さを理解し利用率が延びる
・地域での社会参加活動や母親の自立として多くの人の意識の中に園長希望が生まれる
など枚挙にいとまがない。そこで、今回は上記2項目に主に関連する情報公開 と情報共有が促進される事による、サービスの信頼性の向上という点に焦点を 絞って公募に応募することとした。ニューメディア開発協会により募集された 現在「介護・子育て分野における革新的なサービス提供に資するIT活用事業」 に実証実験の企画書を提出している。
企画の概要は 園長間の情報共有を促す事、保育内容や保育者プロフィール、 保育方針に関する情報公開をITにより整備する点といえる。
具体的にはコミュニティシステムとして、ローカル(地元地域でつながる)掲 示板、テーマ(2歳の男の子を預かる、牛乳乳アレルギーの子供の保育などの テーマでつながる)掲示板、その他一般的に質問や疑問を投げ合う不特定多数 を対象とした掲示板の3つである。これら掲示板上のコミュニケーションやソ リューションの導かれ方を分析することで、各掲示板の機能評価、有効性を検 証する。
マッチングシステムでは、利用者が保育者の保育スケジュールなどを 閲覧しながら預けたい時間に預けたい人を選ぶ環境を整える。今回は実証実験 の対象が既に開設済みである100家庭保育園であることから、IT化によりマッ チングが促進されたかどうかの計測はまだまだ難しいと考えている。よって、 どのような項目が保育者を選ぶ上で重要な要素になっているかという検証を行 うことで、マッチングに大きく影響する要素を抽出する予定である。
最後に保育利用システムでは、保育者にまつわる情報を、方針、夢、 関心、など項目ごとにデータベース化しておく。これにより系統的に情報を加 工し、マッチング型家庭保育サービスの傾向の抽出を行いたいと考えている。 加えて画像情報の交換、音声情報の交換による保育内容の信頼性の向上をみこ し、数園を対象として実験的にVocie over IPやカメラによるリアルタイム映 像の送信環境を設定し、信頼要素を検証していきたい。
これらの実験と、ITを活用することで、家庭保育園開設者や利用者を 通じて、地域のつながりが発生するかどうかも検証の対象として含める。子育 てというテーマでの地域活性化と考えられるだろう。
最後にこれら実験に関しては、すべて公募にとおりしだい、実験対象 である家庭保育園開設者100名にはPCを配布し、常時接続環境が敷かれる予 定になっている。