プロジェクト概要 環境の変化にともなって適応していく建築物を設計するにはいかにすればよいのだろうか。ある時点での環境にたいしては、中央集約的な解決法を用いても適切な解答を見つけることができる。しかし、我々の住む世界は変化と共に存在している。このような世界にあって、ある時点における解答のみ導き出すシステムではなく、この次にくる環境の変化にも対応できるシステムの構築は意義のあるものであるといえる。もし、建築も生命体のように個々の部分からその全体像を発生させることが可能であれば、そのシステムをつくり出すこともできるのではないだろうか。本研究においては、この問いにたいして分析、考察を行ない、その手法を見つけるためのツールとはどのようなものであるのかを追求する。 その鍵となるのは個々要素が連続して変化し続けることができるそれら要素間に働くルールをいかにしてみつけていくかということである。中央集約的な解決法では出すことのできなかった解答と解答の間を繋ぐものを見つけるための空間スタディツールは現在、存在しておらず、このようなスタディをおこなうことができなかった。 そこで、本研究においてはコンピュータ上で、個々のエージェント間のルールのシミュレーションを行なうことができるマルチエージェントを用いてシミュレーションを行なう。同時に、実際に集合住宅の生成プログラムを組むことを通してその実効性、構築法を研究、検証する。 | シミュレータ構築における3つのStep 1. デザインフィードバックを起こしやすい機構である | 2. 集合住宅としての要件を満たす機構である 3. 適応するシステムである | 1. デザインフィードバック 動態を設計する為のツールとしては、動きを持ち、3D形態をリアルタイムで観察することができることが求まれる。なおかつ、実行が容易なものでなければシミュレーションとはいうことができない。この条件を満たすツールを開発するため、コンピュータによるシミュレーションを行う。 | このシミュレータから書き出されるデータはまず、形態の3D情報をムービーで書き出し、これだけでは可視化されない部分の情報を得ることができない為、パラメータの変動をテキストデータによって書き出す。 | 図1. QuickTimeMovieによる3D形態の書き出し | 2. 集合住宅としての要件 それぞれの住戸は基本的な欲求を満たしながら、成長する。住戸へのアクセス、日照、通風、プライバシー、集合住宅内部環境がその欲求にあたる。 | 住戸成立の為の基本ルール ・『voidはvoidに繋がってなければいけない』 ・『新しいユニットはユニットが置かれていない地面上もしくは他のユニット上のvoidにおかれなかればならない(キャンティレバーで1つは支持することができる)』 ・『新しく置いてみて、その隣4方に接しているヴォイドが全体のエントランスにアクセス可能であれば、そこに置くことが可能、消し方は自由』 ・『任意の住戸のユニットはすべてつながっていなくてはいけない』 ・『各住戸は1階にユニットを最低1つはもたなくてはいけない』 | 図2. voidの評価(voidからvoidへの天空率の伝達) | 3. 適応するシステム 適応対象 | ・最大ユニット数 ・住戸数 ・階数 ・敷地形状 未適応対象 ・境界条件(隣地の状態) | 図3. 敷地形状の変化への適応 | | 図4. simulator flow図 |