2001年度森基金 プロジェクト科目助成-A
モバイルコンピューティング環境を対象としたアクティブマルチデータベースシステムの湘南藤沢キャンパスにおける実現
古川 康一(代表), 清木 康, 武藤 佳恭,
石橋 直樹, 酒井 大, 図子泰三, 石原 冴子, 佐々木 秀康, 倉林 秀一
本研究の概要
近年、ネットワークの広域化、高速化、および、PCの大容量化、高速化に伴い、多数のデータベース群がネットワークに散在している。また、モバイル機器の普及によって、既存のデータベース群から、位 置に応じた情報の獲得など、モバイル機器固有の情報取得方式の実現が望まれる。
本研究では、広域ネットワークに散在する、既存の異種データベース群を対象に、マルチデータベースシステムによる、能動的な検索環境をSFC内に実現し、キャンパス内のデータベース資源を友好的に活用する知的情報環境を実現する。また、時空間的な処理系を同環境に実現することにより、モバイル環境への適用を行う。
研究活動
既存の異種データベース群を、時空間的な関連性に応じて統合するマルチデータベースシステムの設計・実現、および、評価を行った(図1)。具体的には、データ間の多様な関連性を動的に計量 し、異種のデータベース群を連結するメタレベルシステムのデータ統合方式(図2)を実現した。本方式は、時空間 を対象とした多様な計量機能を、ローカルデータベース群の抽象層・上位層(メタレベル)に設定することにより、応用に応じた多様な時空間的計量 を実現し、マルチデータベースシステムから適切な情報を検索・結合する。また、本方式はメタレベルシステムにおいて異種の計量 システム群を統合することにより、それら計量システム固有の適用範囲を拡大する。本方式の有効性を示すために時間的、および、空間的なデータ間の計量 機構群を例示し、それらを用いた異種データベース間連結実験、および、その結果 を示した。
図1. マルチデータベース・システム・アーキテクチャ
図2. 異種データベース間のデータ結合モデル
既存の異種データベース群を、能動的、かつ、時空間的に結合するアクティブ・マルチデータベース・システムの設計・実現・評価を行った。具体的には、マルチデータベースシステムに対するユーザからの能動的な問い合わせを記述するための知識モデル(Meta-ECA Rule Model、表1)、Meta-ECA Ruleの実行モデル(図3)、および、これらのモデルを実現するアクティブ・マルチデータベース・システム・アーキテクチャ(図4)を設計・実現した。本方式は、前述の時空間的計量 機能を有する能動的問い合わせ処理機能を、ローカルデータベース群の抽象層・上位 層(メタレベル)に設定することにより、マルチデータベースシステムからの能動的な知識獲得を実現し、ユーザの所在に応じた情報提供などを実現する。本方式の有効性を示すために、仮想空間上のユーザの空間的推移に応じたデータベース間結合実験を行い、その結果 を示した。
表1. Meta-ECA Rule Model
図3. Meta-ECA Ruleの分散・実行モデル
図4. アクティブ・マルチデータベース・システム・アーキテクチャ
研究成果
データ変換に要するデータ記述量を、異種データベース間結合に要する実現コストとして評価した場合、本方式(図5)は、従来の関連性記述方式(図6)に比べ、より低いコストでデータベース間を結合することを確認した。
図5. 本方式において空間的な関連性の計量に要求される変換記述量 の推移
図6. 関連性記述方式において空間的な関連性の計量に要求される関連性記述量 の推移
本研究の成果は、次の論文誌に採録予定である。
石橋 直樹, 細川 宜秀, 清木 康: ``時空間的文脈に応じた 動的関連性計量機構を有する異種データベース間結合方式'', 情報処理学会論文 誌: データベース(TOD12), 採録予定. (2002)
A) 本方式、B) アクティブデータベース機能を有するが時空間データベース機能を有さない従来方式、C) 時空間処理機能を有するがアクティブデータベース機能を有さない従来方式、および、D) ローカルレベルにのみアクティブデータベース機能を有する従来方式を対象に、仮想空間で移動するユーザの要求に応じた能動的データベース間結合を行い、正規に結合が実行された度数を比較した(図7)。この結果 より、モバイル環境における能動的データベース間統合を、本方式が有効に実現していることが確認された。
図7. モバイル環境におけるの能動的データベース間統合の正規実行度数
本研究の成果は、次の国際会議において発表を行った。
Kurabayashi, S., Ishibashi, N. and Kiyoki, Y.: ``A Multidatabase System Architecture for Integrating Heterogeneous Databases with Meta-Level Active Rule Primitives'', Twentieth IASTED International Conference, APPLIED INFORMATICS (AI 2002), (2002)
今後の展望
本プロジェクトでは、今後、音楽データなどのマルチメディアデータベースを対象としたデータ統合方式、アクティブ・マルチデータベース・システムの高速化・最適化などに取り組む。
参考文献