近代日本とアジア・北太平洋プロジェクト  2001年度森基金プロジェクト科目助成費A報告書 
  本プロジェクトでは、開発ないし近代化の過程に伴なって起こる社会的課題を理解するため、「女性」「老人」「少数民族」といった開発ないし近代化の過程でマージナライズされやすい人間集団に特に注目し、日本の内外における個別のフィールドワークを通じて生活調査を行ってきた。同時に、それらの素材をSFCにおいてデータベース化し、ネット上において公開してきた。今年度は、上記の活動の継続を前提とし、本プロジェクトの基盤的技法としてのデジタルドキュメンテーションの開発を引き続き行うとともに、集めたデータを編集・公開するシステムの改良を行った。具体的には、森基金の助成により、研究環境の整備とミニワークショップを行うことができた。

▽研究環境の整備

 ・ファイルサーバ、DHCPの設置
  昨年度までは、編集した画像や映像などのデータを、MOディスクを使って他の端末に移動したり、バックアップしたりしていたが、今年度は、研究室内にファイルサーバを設置し、どの端末からもアクセス可能になった。このため、複数の端末を使っての同時進行の作業が容易になった。また、DHCPを設置したことにより、メンバーのノートPCなども共同作業に活用できるようになった。

 ・マルチメディアデータを収集、編集、公開するルーティンの整備
  画像や映像などを収集し、公開できる形に編集する作業は、器材やソフトウェアの使い方に習熟している必要がある。扱うデータの種類が増えるほど、作業の複雑性も増すことになり、データ収集以外の作業の負担が過大になっていた。 今年度は、デジタルカメラ、ノンリニア編集ソフトを購入し、画像と動画、テキストをを統合したものを、試験的に編集から公開まで行った。これにより、今後は同様の作業がルーティン化され、容易に行えることになった。 なお、この際編集したデータは "Digital Archive for Sustainable Development(DASD)"に公開中である。

▽ミニワークショップ 11月21日から23日までの三日間、チェンマイ大学(タイ)、ハノイ工科大学(ベトナム)、梨花女子大学(韓国)から8名の参加者を招いて、ネットワークキャンパス構想に関するミニワークショップを行った。参加者数と討議内容は以下のとおり。
 
参加者:タイ2名、ベトナム4名、韓国2名

内容:
11月21日 午前セッション参加者によるブリーフィングが中心。内容は、個々の参加校のNTインフラの現状とエンドユーザとしての参加者によるインフラの評価。チェンマイ大学や梨花女子大学のようにインフラがかなり整備されている場合では、参加者モ積極的に調査ないし授業にITを取り入れている現状が報告された。このセッションではSFCの萩野、千代倉両教授が参加し、SFCのインフラの紹介とe-learning のための環境整備の進捗状況が披露された。参加者が特に感銘を受けたと思われるのは千代倉教授がリーダーとなって進めている各種授業のアーカイヴ化。富士ゼロックス開発のメディア・デポの活かし方などはこのネットワークキャンパス構想においても取り入れるべきとする意見が出た。

11月21日 午後セッション特にe-learning の実情の検討を進めた。SFCから中国語専門の重松教授が出席し、北京大学、パモナ大学とで行ったdistance learning を紹介。現状ではポリコムというシステムを使用してはいるが、当システムでは参加者の人数が限られてしまうなどの問題点が指摘された。

11月22日 午後セッションこのセッションから、ネットワークキャンパス構想をどのように具体化してゆくかの検討に入った。このセッションでは、これまでティースマイヤ、梅垣と、参加者との間で進められてきた共同研究の整理を行い、同時に新規の共同研究のためのテーマの開発ならびにそのコストなどを検討した。また、ネットワークキャンパス構想の3月の拡大会議のためのアジェンダの検討も進めた。

11月23日 午前メディアデポによる処理を進めるためのパイロットプロジェクトの選定にセッションを割り当てた。これは1月末日ないしは2月上旬を期限として、調査資料(ビデオほか)を参加者が持ち寄るというもの。以下のテーマを特定した。
  • ハノイ工科大学グループ:紅河一体の開発と環境問題
  • 梅垣グループ+ハノイ工科大学:過疎の国際比較予備調査
  • 梨花女子大学グループ:韓国における女性の社会進出
  • ティースマイヤ+チェンマイ大学グループ:Community resource management と gender
  • ベトナム国立大学グループ:農村部リーダーのビジネストレーニングとその追跡調査


JANP