2001年度森泰吉郎記念研究振興基金研究成果報告書

「プラスチックリサイクル方法の環境的・経済的評価と選択」

政策・メディア研究科 修士1年 加藤美穂子

 

1.       一般廃棄物処理の現状

     排出量:バブル経済とともに急増、最近は横ばい傾向であるが、依然として高水準である。

     処理方法:10年前と比較すると、資源化が増えているが、直接埋め立てが8割近いということは不変である。

     処理事業費:1人あたり17,800円/年であり、ここ数年は横ばいである。しかし、これには地域差があり、また、この費用に含まれない費用もあると考えられる。

 

2.       廃棄物問題対策

 廃棄物問題対策には2つの側面がある。まず排出そのものを減量化させる「排出抑制」(ReduceReuse)と、排出されたものを適切かつ経済的に処理する「処理技術」(ReuseRecycle)である。排出抑制とは具体的に、有料化・デポジット・規制・啓発活動のことであり、処理技術とは具体的に、リサイクル(マテリアル・ケミカル・サーマル)・RDF・焼却のことである。

 これまで排出抑制について、一般廃棄物発生の要因分析、有料化の有効性の分析などを中心に研究を進めてきた。経済的手段の活用については、環境省でも研究を行っているが、実現は程遠い状況である。本年度以降は、特に処理技術について研究を進める。

 

3.       処理技術の最近の傾向

 最近は排出抑制よりもリサイクルを強化する傾向にある。また、排出者責任から拡大生産者責任へと変化してきていることも指摘できる。環境省の方針としては、マテリアルリサイクル(物質循環)を促進している。マテリアルリサイクルは天然資源節約、廃棄物処理量の抑制という利点があるためと考えられるが、一方で、新たなエネルギーや水資源などの環境負荷が発生することにも考慮することが必要である。

 サーマルリサイクル・熱回収の取り組みとして、焼却余熱利用(ごみ発電、暖房・給湯、温水プールなど)があるが、促進には、廃棄物の量・質の変動への対処など技術的問題が存在する。

ごみ発電とは、ごみを焼却するときに発生する高温の排出ガスの持つ熱エネルギーをボイラーで回収、蒸気を発生させてタービンを回し、発電を行うものである。現在、焼却施設の10.3%、処理能力ベースで45%、発電能力は約84kW/年(170万世帯分)である。発電効率は10%、余熱利用も含めて4分の3の熱量はロスとなっている。

RDF(ごみ固形燃料)は、石炭並みの発熱量と安定した焼却が可能であるため、ダイオキシンの発生量を低く抑えられるほか、もとのごみの重量の半分程度になるので、運搬が容易になり、長期保存が可能になるという利点がある。ただし、発電効率などの問題は残ったままである。

環境省はごみの排出抑制・分別強化を進めてきた経緯からマテリアルリサイクルを促進している。しかし、環境負荷や技術的問題、環境と経済成長・ライフスタイルの維持との両立などを考慮し、ケミカルリサイクル・サーマルリサイクルの現状と問題点を把握する必要があるのではないだろうか。

 ところで、わが国の一般廃棄物の組成はどのようになっているのだろうか。下図は、容器包装廃棄物に注目した形で家庭ごみの組成を示したもの(19999月、6都市平均 容積比)である。

この図から、全体の61.2%が容器包装廃棄物、残りが厨芥類などであることがわかる。また、容器包装廃棄物の中でも、特にプラスチック類が多いことから、プラスチック廃棄物のリサイクルについてテーマを設定することにした。

 

4.       プラスチック廃棄物のリサイクル

 プラスチック廃棄物をリサイクルすることの意義として「資源循環・ごみ減量化」と「地球温暖化防止・二酸化炭素削減」が挙げられる。特に後者については次のように関係性を考えることができる。すなわち、プラスチックのリサイクルによって、@廃棄量の減少→廃油/廃プラ焼却量減少、A製造必要量の減少→エネルギー消費減少、B製造工程の変更→エネルギー消費減少、Cエネルギー代替→化石燃料消費減少となり、温室効果ガスの排出量が減少するという関係である。

 プラスチックのリサイクル方法はマテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルに分類される。

マテリアルリサイクルとは、粉砕等、再成形の加工を実施し、再生材料として使用することであり、プラスチックからプラスチックへのリサイクルである。平成13年度のリサイクル量は34,000トンであった。現在はこのマテリアルリサイクルが入札時には最優先されている。

ケミカルリサイクルとは、@油化、Aガス化、B高炉還元法、Cコークス化学原料化法のことを言う。Aガス化とは、熱分解させたCOからアンモニア・メタノール等を製造するものであり、B高炉還元法とは、高炉用還元剤のコークス代替として使用するもの、Cコークス科学原料化法とは、コークス、タール・軽油、ガスに分解し、化学原料化するものである。平成13年度リサイクル量は、それぞれ、@20,000トン、A18,000トン、B73,000トン、C84,000トンとなっている。

最後にサーマルリサイクルとは、燃焼させて発電やその他熱利用用燃料としてしようするものである。これは、現在のところ容器包装リサイクル方でのリサイクル方法としては認められていない。

プラスチック廃棄物の排出量は、まず、容器包装プラスチックの排出規模が300万トン/年、厚生労働省試算のリサイクル計画が2010年時点で100万トン/年である。また、参考までに全国の廃プラ発生量は、1995年の段階で880万トン(一般系・産業系 各440万トン)/年であり、2001年現在では900万トン/年であると推測されている。

なお、二酸化炭素の部門別排出量の割合(%、1998)を示したものが下図である。

廃棄物部門の二酸化炭素排出量、すなわち、化石燃料由来の廃棄物(=廃油・廃プラ)の焼却等による排出量は全体の2%と少ない。しかし、1999年度の排出量は対1990年度比約86.3%の増加となっている。その主な要因は、プラスチック等の焼却量が約93%増と、ほぼ倍近く増加したことであり、これは注目すべき点である。