研究課題 「自律的な情報家電機器制御機構の構築」
名前 青木崇行
所属 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程1年
はじめに
本研究報告書では、2001年度の私の研究に関して、研究概要、研究報告(論文実績)、今後の研究課題を述べることにより、研究報告を行う。
研究概要
近年の家電機器には,高度な情報処理能力やネットワーク接続機能を付加したものが多くなっている.私の研究では,ネットワーク接続機能を保持した家電機器を情報家電機器と定義し,それらの制御方法について,考察及び研究した.情報家電機器における大きな問題の一つとして,機器制御の複雑さ,煩雑さが挙げられる.本研究では,ユーザの情報家電機器制御に関する負担を減らすために,ユーザとは自律的かつ非同期的に機器の制御を行うSONA(Smart
Operation of Networked Appliance)システムを構築した.SONAシステムではシステム実現に必要なアプローチとして,ネットワークに接続されたホスト間を移動可能なソフトウェアであるモバイルエージェントを適用し,自律性,非同期性を実現した.図\ref{fig:requirements}は,従来からの家電機器制御と自律性,非同期性を備えた家電機器制御を比較している.
研究報告
以下に今学期の研究実績として、学会投稿・発表論文リストを示す。
- 情報処理学会情報家電コンピューティング研究グループ第1回研究会(July, 2001)
「自律的な情報家電機器制御機構の構築」 提出論文:pdf
概要:本論文では,モバイルエージェントを用いた自律的な情報家電機器制御機構であるSONA(S
mart Operation of Networked Appliances)システムの設計,実装,評価について述べる
.従来の家電機器制御におけるリモートコントローラやウェブブラウザ搭載携帯電話によ
る情報家電機器制御において,ユーザは家電機器に同期的に操作命令を送る必要があった
.SONAシステムでは,ユーザの直接的な家電機器制御に代わり,モバイルエージェントが
情報家電機器を制御する.また,家電機器ルックアップサーバを実装することにより,家
電機器の検索を自動化した.これらのモバイルエージェントと家電機器ルックアップサー
バの利用により,SONAシステムは自律的かつ非同期的な情報家電機器制御機構を提供する
.SONAシステムの実装例として,Smart Space Laboratoryへの適用を紹介する.
- IEEE 2nd International Workshop on Smart Appliances and Wearable Computing
(July, 2002 to be appeared)
"Autonomous and Asynchronous Operation of Networked Appliances with Mobile
Agent"
概要:This paper describes the Smart Operation of Networked
Appliances (SONA) system w
hich realizes the autonomous and asynchronous operation of networked appliances
by using mobile agents. In SONA system, the mobile agents operate networked
appl
iances in place of user's direct manipulation. Existing appliances operation
sys
tems such as remote controllers require users to input their demands synchronous
ly with the appliances, while SONA system only requires users to input their
dem
ands in a lump once for all. To realize autonomous and asynchronous operaton
sys
tem, the SONA system is equipped with appliances lookup service, operation
plan
composer, and mobile agent system. As an application of SONA system, we introduc
e the operation of a light and a fan from web enabled cellular phone. In this
pa
per, we present the design and first implementation of SONA system.
今後の研究課題
- 研究課題1:Agent Based System
これまでのSONAシステムをモデル化し,既存のDocument Based Systemとの比較を行う.Agent Based SystemとDocument
Based Systemの大きな違いは,移動する実体が情報処理能力を持つか,持たないかである.ネットワーク帯域が少ない環境においては,処理プログラムを持ったモバイルエージェントをネットワーク上で通信するのは,効率が悪く,Document
Based Systemを利用する方が,環境に優しく効率的だと言える.しかし,近年のコンピューティング環境では音楽データや映像データなど,大容量のデータをネットワークを介して利用することが多い.したがって,このようなマルチメディアデータの場合,そのまま情報収集をして,ネットワーク上を移動させるのではなく,モバイルエージェントにより情報処理をしながら,必要な情報だけに削減し,ネットワーク上で利用する.
- 研究課題2:Context Aware Computingでの応用
ユーザは物理空間上を移動する.モバイルエージェントはサイバー空間上をユーザの移動にともない移動する.ユーザの好み,嗜好情報をモバイルエージェントが保持し,常にユーザとともに存在することにより,各場所,状況,環境において,ユーザの周辺機器をモバイルエージェントがユーザの好みの設定に変更が可能となる.つまりContext
Aware Computingでのモバイルエージェントの利用を実現する.
- 研究課題3:Real Time Control
現在の家電機器制御やウェブページ取得を行う際,処理が終わる時間は保証されていない.しかし,場合によっては,重要なタスクなどをある一定時間で終わらす必要がある.そのため,SONAシステムにリアルタイム性,タスクプライオリティの設定機能を実現することにより,よりきめ細かな利用方法が可能となる.
まとめ
2001年度森泰吉郎記念研究振興基金により、研究に必要な実験機材、書籍を購入することができ、また国外での関連学会への出席が可能になり、私の研究の助けになった。今後も本年度の研究結果に基づき、修士論文につながるよう、個人研究に励みたい。