2001年度森泰吉郎記念研究振興基金 報告書

 

モバイル仮設住宅データベース構築と応急仮設住宅の開発

 

佐藤慶一/80131661/ksato@sfc.keio.ac.jp/「都市空間のリスクマネージメント」所属

2001年度は、防災研(塚越・梶研究室)大学院生ゼミナール、プレハブ建築協会・神奈川県土整備部住宅整備課へのインタビュー、都市計画学会防災復興委員会でのトルコ調査、資料収集と整理などの活動をした。活動を通して、災害で住宅を失った被災者のすまいの問題は、避難所・知人宅・ホテル・社宅などへの応急避難、応急仮設住宅・疎開・借家などへの応急居住、そして公的支援住宅・自力住宅確保などの恒久居住へと、多種多様であることを確認した。問題の解決には、避難所から恒久住宅の再建までトータルに考える必要があると言える。従って、研究の対象を「仮設住宅」から「災害時の被災者の住まい」全般へと拡大し、調査を進めている。

これまでは、災害時応急仮設住宅の供給において主導的な役割を果たしてきたプレハブ建築協会規格建築部会の応急仮設住宅について調査してきた。その中から浮かび上がってきた問題点を以下に整理する。

       都道府県側の問題

       敷地選定

           時間がかかるケース

           立地が妥当でないケース

           インフラ(電気・ガス・水道)の整備

       必要戸数の把握に時間がかかる

       備蓄の問題

       現在まだ備蓄されていない

       施工の問題

       規格建築の施工は専門業者以外には難しい

       専門業者の労働力<部材の供給能力

       輸送の問題

       阪神淡路では資材の輸送ルートの確保に手間取った

       撤去の問題

       全員が退去しないと撤去できない(35年かかる)

       規格建築の供給能力限界の問題

       規格建築部会では「災害対策業務関連資料集」の中で、労働者の確保を前提として、関東地区において3ヶ月で7万3千戸の供給が可能であるとしている。しかしながら、東京都都市計画局「東京都における直下型地震の被害想定に関する調査」(平成98月)によると、マグニチュード72規模の直下型地震が発生した場合、建物の全壊・半壊は約14万棟、焼失建物は約38万棟で、1ヵ月後の避難所生活者は、阪神淡路の20万人に対して4倍強の90万人という想定がされている。応急仮設住宅の需要も、阪神・淡路大震災時の4倍になるとすると、現在の応急仮設住宅供給体制では、供給しきれないといえる。

 

今後は、阪神・淡路大震災では例外的であったプレハブ住宅メーカーによる仮設住宅についての資料収集、鳥取県西部地震での住宅再建補助金についての資料収集を中心に、大規模災害時における被災者の住宅再建について調査・研究を進めていく。

 

2001年度の研究の一部は、2002年度日本建築学会学術講演梗概として、論文とした。(→論文へのリンク

 

以上を、2001年度森泰吉郎記念研究振興基金の報告とする。