2001年度

森泰吉郎記念研究振興基金 研究報告書

 

 

政策メディア研究科修士1

大江守之研究室所属

今井 岳彦

学籍番号:80131176

 

 

1 概要 

 

 本報告書は、平成12年度実施の国勢調査結果が順次公表され始めたのを受けて、家族類型に関する動向分析を行ったものである。なお、この分析は自分の研究内容である「家族類型別世帯推計」に指針を与えるものである。

 主に使用した国勢調査表は、

     平成12年度国勢調査第13表〔世帯の家族類型(16区分)、世帯主の配偶関係(4区分)、世帯主の年齢(5歳階級)、世帯主の男女別一般世帯数、一般世帯人員及び親族人員〕

     平成7年度国勢調査第18-01表〔世帯の家族類型(16区分)、世帯主の配偶関係(4区分)、世帯主の年齢(5歳階級)、世帯主の男女別一般世帯数、一般世帯人員及び親族人員〕

     平成2年度国勢調査第18-01表〔世帯の家族類型(16区分)、世帯主の配偶関係(4区分)、世帯主の年齢(5歳階級)、世帯主の男女別一般世帯数、一般世帯人員及び親族人員〕

である。

 

 

2 世帯規模 

 

 世帯主年齢ごとの一般世帯規模の変化を表したのが図1である。平成2年度から順に世帯規模が各世帯主年齢で縮小していることがわかる。なお、全体の世帯規模を表したのが表1である。最近10年で世帯規模が約0.323人縮小している。世帯主男女別に見ると、世帯主男だと世帯規模の縮小は約0.320人と全体と同程度の変化なのに対して、世帯主女だと約0.090人とほとんど変化がないことがわかる。

 

 

1 世帯規模

 
 

 


 

 

 

 

 

 

 


また、世帯人員別の一般世帯割合を表したのが図2である。平成2年度から平成12年度まで1,23人の世帯は割合が増加しており、逆に4人以上の世帯は各世帯規模で割合が減少していることがわかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


次に世帯主年齢ごとの一般世帯規模の変化を世帯主の男女別に表したのが図3,4である。世帯主女では世帯主年齢「3539歳」で規模の縮小が見られる以外はほぼ変化がないことがわかる。それに対して世帯主男では男女の合計と同様に各世帯主年齢層で世帯規模の縮小が見られる。これは世帯主男の世帯が世帯主女の世帯に比べて多い(平成12年度国勢調査で一般世帯の内約80%が世帯主男。)こと原因の一つとして考えられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


その世帯主男の一般世帯数の変化を表したのが図5である。これを見ると世帯数のピークが「4044歳」「4549歳」「5054歳」と移動しているが、これはいわゆるベビーブーム世代の影響であると考えられる。それがはっきりとわかるのが、図5をコーホート別に表した図6である。ベビーブーム・コーホートである1940年代後半コーホートの規模が目立って大きいことが見てとれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


3 世帯主率 

 

 この章では一般世帯全体を世帯主率で見てみる。一般世帯の世帯主年齢別の世帯主率を表したのが図7である。また、それを世帯主男女別に表したのが図8,9である。図7を見ると、若年層・高齢層で世帯主率の増加、中年層で世帯主率の減少が見られる。ここで図8,9を見てみる。若年層の世帯主率の増加は世帯主女の顕著な特徴であり、世帯主男ではほとんど見られない。中年層での世帯主率の減少は、世帯主男で見られるが、世帯主女では逆に世帯主率の増加すらみられ、世帯主男が原因になっていることがわかる。高齢層の世帯主率の増加は世帯主男女ともに顕著に見られ、この傾向が続けばベビーブーム世代が高齢層に到達する2010年には高齢者を世帯主とする世帯(高齢単身者もしくは高齢者夫婦が主であると予想される。)が大量に発生することが予想される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


4 夫婦と子供から成る世帯 

 

次に世帯の家族類型ごとに見ていく、まず全国の一般世帯人員約12500万人のうちの5500万人が所属する「夫婦と子供から成る世帯」の世帯主年齢別の世帯規模の変化を表したのが図10である。また、図11はその「夫婦と子供から成る世帯」の世帯数を表したものである。図10を見ると世帯主年齢に関わらず「夫婦と子供から成る世帯」の世帯規模は変化がほとんどないことがわかる。しかし、図11をみると世帯数は世帯主年齢「4044歳」では減少し、「5054歳」以降では逆に増加していることがわかる。また、「3539歳」「4549歳」では増減の入れ替わりが見られる。これをコーホート別に表したのが図12である。ここでも1940年代後半コーホートの影響が強く見られるが、同時に1950年代前半コーホートと1950年代後半コーホートの差異も大きく表れている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


5 親と子供から成る世帯 

 

 前章の「夫婦と子供から成る世帯」に「男親と子供から成る世帯」と「女親と子供から成る世帯」を合わせた、「親と子供から成る世帯」について見てみる。世帯主年齢別の世帯数を表したものが図13で、それを世帯主男女別に表したのが図1415である。またその世帯主率を表したのが図16,17,18である。図13と図14、図16と図17を比べると世帯主男の推移は男女合計とほとんどかわらないことがわかる。これもやはり世帯主男が世帯主女と比べて多い(全体の約86%が世帯主男)ことが影響していると考えられる。一方図15をみると比較的非規則的な変化を見せている。しかし図18を見ると、世帯主率は各世帯主年齢で一貫して増加していることがわかる。つまり図15の非規則性はコーホート規模の変化が反映されたものであることがわかる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


6 単独世帯 

 

 単独世帯の世帯主男女別世帯主年齢別世帯数を表したのが図19.20である。ともに全体的な世帯数の増加が特徴的だが、世帯主男は40代後半から50代後半、世帯主女は60代後半以上の世帯増加が特徴的である。これを世帯主率で表したのが、図21,22である。世帯主率で見ると、世帯主男は特に年代による特徴的な変化はなく全体的な増加が見られ、やはりベビーブームコーホートを中心とした規模の大きいコーホートの影響が大きいことがわかる。一方世帯主女は30代後半以下と70代前半以降で世帯主率の増加が顕著である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 次に単独世帯を世帯主の配偶関係別に見たのが図23,24,25,26,27,28,29,30である。世帯主の男女を比べてみると、未婚・死別・離別ではあまり大きな違いは見られず、違いは高齢期の世帯主率の減少が女性の方が緩やかである程度である。しかし、有配偶では世帯主の男女で大きな差異が見られ、特に世帯主女は20代後半から30代前半にかけて世帯主男にはない増加が見られる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


7 夫婦のみ世帯 

 

 図31,32,33は「夫婦のみ世帯」を世帯主率で表したものである。図33を見るとわかるように、「夫婦のみ世帯」の世帯主女は非常にボリュームが小さく影響が少ないことがわかる。よってここでは世帯主男のみを取り上げる。また世帯主女のボリュームの小ささにより、図31と図32は形状はほぼ同じである。「夫婦のみ世帯」世帯主男の世帯数を表したのが図34であり、それをコーホート別に表したのが図35である。図32と図34を比べると、ほとんど同じ特徴が見られるが今後ベビーブームコーホートが高齢期に入ると高齢世帯主の夫婦のみ世帯が大幅に増加すると考えられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


8 最後に 

 

 来学期は、この報告書の分析や今学期進めていた平成2年度国勢調査に関する推計などの進行と、それらを利用した地域レベルでの家族類型別世帯数の推計モデルに関する研究を行う予定である。