2001年度(平成13年度) 2学期研究報告

 

Co店の立地に関する研究

―――居住スタイルの変化と時間消費型ショップの展開

(旧題:住宅地に混在する商業空間によるコミュニティ形成の可能性

〜タウン・イン・タウンに見る現代の都心ライフスタイル)

   

政策メディア研究科 大江守之研究室

 小川幸

論文要旨

 

 店舗の大型化の影響を受けて、商店街をはじめとした小規模の店舗が減少する昨今の流れに逆らうように、カフェやレストランなど小さな店が目立たない路地裏や住宅地に増えている。本研究ではこの新しく現れた店舗をCo店と名づけ、その立地的特性に現れる生活空間と商業の関連性に目を向けながら、その実態を明らかにすることを目的とする。

 ここで定義するCo店とは、

  住宅地や路地裏など、わかりにくい場所に存在する

・ 個人経営で規模が小さい

というふたつの条件を満たす小売店、飲食店を指す。

 

 本論文では、メッシュデータを用いたCo店の立地分析から生活空間との関連性を探り、次にCo店と非Co店の比較調査およびCo店の経営者に対するインタビュー調査によって、具体的なCo店の特徴を捉えた。

1) メッシュデータを用いた店舗立地分析

 東京23区から世田谷区、目黒区、杉並区、中野区の4区に絞り、マクロ的視点とミクロ的視点でCo店の立地特性を分析した。駅から離れた場所や人口密度の多いエリアにCo店が比較的多い。

2) 4区における店舗の変遷

 10年前から現在にかけて店舗の種類の変化を見た。住宅地ではカタカナ名の洋食系飲食店や喫茶店・カフェ、雑貨屋、花屋などの数が増えていた。米屋や肉屋、個人商店などの昔ながらの店は、新しく現れたものはほとんどなかった。また、メディアにおいても駅から離れた店に対する注目の高まりが見られた。

3)実態調査

 店舗における滞在時間の比較調査とインタビューから見えてきたものは、小規模ゆえに客と店の顔の見えるコミュニケーションがなりたつ特殊性であり、それが不利な立地条件にあっても客をひきつける魅力の一つであるということだった。また、ゆとりある時間を過ごすことが潜在的な目的となる「時間消費型ショップ」としての性格は、街の中に自由な時間および空間を与える居間的空間としての機能を持っている。

 

 こうして最終的に明らかになったCo店の居場所としての多様性やコミュニケーション空間としての機能といったものに社会的な背景を絡め、単身者の増加や物質主義的な価値観の終焉など、変化するライフスタイルニーズに合致した街に新しい空間をもたらす存在として、Co店の存を位置付けた。

 人間関係の希薄化が叫ばれる現代社会において、客との親密な関係を構築するCo店は、単身者の増加や変容する家族形態を受け入れ、新しい形の人間関係を生み出していくポテンシャルを秘めているといえる。

 

注)旧題のコミュニティ寄りの内容から店の立地分析を主とした内容にシフトしていったため、森基金申請時の題名を変更しました。

 

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