2001年度森基金 活動報告書

双方向遠隔授業での
フィードバック取得に関する研究

慶應義塾大学政策・メディア研究科2年
鳥谷部 康晴 toyabe@sfc.keio.ac.jp

●本研究の概要

 近年におけるインターネットの高速化や常時接続回線の普及により、より多くの人々が快適なインターネット環境を手にすることができた。そうした環境を最大限に利用したアプリケーションとして地理的な制約にとらわれない映像中継技術を用いた遠隔授業中継が行われ始めている。しかし、現在までに行われている多くの遠隔授業中継ではインターネットの最大の特徴と言える複数拠点を結んだ双方向コミュニケーションが実現されていない。通常の対面授業であれば容易に実現できる教師と学生との質疑応答などを含めたやり取りが現状の遠隔授業中継モデルでは実現されていない。本研究では実際に双方向授業中継を行う場である遠隔スタジオの構築に携わり、遠隔からの講義における双方向なやり取りの実現に向けて研究を行った。

●研究活動

-School on the Internet Studio (以下SOI Studio)プロジェクトに参画

 2001年7月よりSchool on the Internet Studio Projectの一員として海外の複数地点にサテライトスタジオを構築するプロジェクトに参画した。SOI Studioプロジェクトではアメリカの東海岸のワシントンDC、西海岸のサンフランシスコにサテライトスタジオを構築した。ワシントンDCはアメリカ政治の中心であり、経済の中心であるニューヨークからも近い。サンフランシスコは近年、情報産業が急発達している。そうした各分野の先端を行く人々を遠隔授業中継を快適に行うための設備が整ったサテライトスタジオにお招きし、日本あるいは世界各地に向けて講義を行うことを目的としている。

 私は2001年10月よりアメリカ・ワシントンDCに滞在し、遠隔授業中継の拠点となるワシントンDCスタジオおよびサンフランシスコスタジオの構築を行った。スタジオでは低遅延な映像・音声伝送ソフトウェアであるDigital Video over IPを用いて相手先地点にいる学生を大型50インチプラズマディスプレイに表示し、講師はその画面を見ながら講義を行った。

 これまでに行われた授業中継は以下のとおりである

11/09/2001 WashingtonDC"Design Language Workshop E"
Ms. Gyoko Yoshida
11/30/2001 San Fransisco"Internet Infrastructure Business"
Mr. Stephen Stuart, VP Internet Technology of Above Net
12/07/2001 Washington DC"Design Language Workshop E"
Ms. Gyoko Yoshida
12/08/2001 Washington DC"Nikkei Digital Core Conference"
Mr. Elliot Maxwell
01/11/2002 Washington DC"Design Language Workshop E"
Ms. Gyoko Yoshida
01/18/2002 Washington DC"Design Language Workshop E"
Ms. Gyoko Yoshida

 本プロジェクトに積極的に参加し、実際に遠隔地より講義を行った講師に対して調査を行い、遠隔地で講義を行う際の問題点を明らかにした。

-遠隔地の学生から講師に対して情報を発信できるシステムの研究と実装

 SOI-Studio Projectにより遠隔地の講師と学生とのやりとりが少なく、学生と講師との間の双方向な情報のやりとりが必要であることが浮き彫りとなった。

 本基金により機器類を購入し、情報収集サーバを構築した。本実装は以下の構成において実装した。
 FreeBSD4.3, PostgreSQL7, PHP4, apache1.3.22

 本システムでは講師が質問を設定し、教室のスクリーンに表示される質問に対し表示されるURLに学生がアクセスし、それに対して入力を行い、講師側の画面に学生からの意見が集約されたグラフが表示される。

 本システムにより講師が通常の対面型講義であれば容易に実現できる、学生に対して質問を投げかけ、挙手を求めるモデルを遠隔地より可能にした。


●研究成果

-遠隔地の学生より意見を収集するシステムの実装
 講師が発した質問に対して学生が意見を入力し、一覧表示するシステムのプロトタイプを作成。実験を行った。

-2002年7月に提出予定の修士論文の一部として成果発表する予定である。

●今後の予定

-本研究で実装した意見収集システムを実際の授業において使用し、特定の授業形態に限らないシステムの構築を目指す。

-2002年7月提出予定の修士論文の執筆