2001年度 森基金 研究報告書
修士2年 金杉朋子
中等教育における映像メディアを使用した「表現教育プログラム」の開発と実践
近年若者のアイデンティティ喪失が叫ばれている。筆者は慶応湘南藤沢中高等部において教員として生徒と接するの中「自分について分らない」「やりたいことがわからない」という生徒の悩みに触れてきた。「自分だけが悩んで苦しんでいる」と思っている生徒達にクラス内で「自己表現」させる事で、自分の思いを「吐き出し」、他者の思いを「共有する」機会と場の提供を試みた。
本論の目的は筆者の開発した「映像メディアを使用した表現教育プログラム」が生徒の「自分を見つめる」「他人を知る」という作業に従来の手法よりも有効であることを実証し、最終的には2002年に始まる「総合的学習の時間」に向けた提案を試みる。
第1章では研究の背景として青年期におけるアイデンティティの危機の問題についてErikson の理論を軸に考え、学校教育に取り入れるべく「アイデンティティ形成モデル」の具現化を試みる。
第2章では「新しい表現教育プログラム」の内容を説明し、以下の4つの特徴を提示した。
@ 「私という存在」というテーマによる表現
A 自由度の高い表現形態
B 映像メディアが使用できる環境設備
C クラス内発表(共有化)
第3章では本プログラムは従来の手法に比し「自分を見つめる」「他者を知る」ということを上記の4つの特徴をすべて併せ持つことで、より効果的に誘発する事を実証していく。
第4章では、4つの特徴を有す本プログラムは、他の教育プログラムと比較しても有効であることを、前章で使用したパラメーター分析等を用いて検証する。
第5章では「映像メディアを使用した表現教育プログラム」が「総合的学習の時間」に向けより多くの学校で導入できるよう具体的提案を試みる。
キーワード
1.アイデンティティ 2自己表現 3.自分を見つめる
4他者を知る 5.映像メディア 6.「弱さ」の共有
慶応義塾大学大学院 政策・メディア研究科 金杉朋子