E-CELL project

2002年度 森泰吉郎記念研究振興基金 研究者育成費 成果報告書

シアノバクテリア概日リズムにおける遺伝子ネットワーク予測

政策・メディア研究科 博士課程二年 三由文彦

研究成果報告

近年、プロテオーム解析などから遺伝子制御ネットワークを構成する、mRNA やタンパク質に関するデータが大量に観測されつつある。これらの情報を用い て、遺伝子制御ネットワーク予測する試みが始まっている。しかし、現状の手 法では、その遺伝子制御ネットワークを表現する式のパラメータ探索範囲が広 いため、一意に生物学的モデルを得られないという問題が生じている。よって、 この探索空間を限定することを目的として、スモルコフスキー式を用いた新た なシグナル伝達の表現法を開発し、これを用いて予測を行った。しかし、今年 度に入ってから、新たにシアノバクテリア概日リズムに関係する因子の働きが 徐々に明らかになり、これを元にして遺伝子発現に関しても、転写、翻訳の時 間遅延や染色体レベルの発現制御などを精密に表現できるものを開発した。こ れらは従来の手法に比べ、パラメータ数は増加したが、そのうち重要なものは 化学・物理学的性質によってパラメータ範囲を限定できるため、結果として探 索空間を極めて小さくすることが可能になった。

これらの手法を用いて、比較的小規模なシステムであるシアノバクテリア概日 リズム機構を対象として、E-Cell システムを用いてそのシグナル伝達及び遺伝 子制御ネットワーク予測を行った。その結果、周期振動を起こす概日リズム経 路の候補を得ることができた。

図:E-Cellシステムを用いたシミュレーション結果

さらに詳細な分析の結果、mRNA及びタンパク質の分解速度がリズムの周期に大 きく影響することを示唆する結果が得ることができ、当初目標としている成果 を挙げることができた。今後は、より安定した振動を生じるための条件検討を 行っていく予定である。 以上の研究成果は、森泰吉郎記念研究振興基金 研究者育成費の助成によって 得られたものである。この結果、2002年度だけで学会誌 1本掲載、口頭発表4 回、ポスター発表4回を行うことができた。こ の研究費がなければ、ここまで成果を挙げることはできなかった。心より感謝 したい。以下に研究成果の詳細をまとめておく。以下は、全て筆頭発表 である


2002年度成果発表一覧

1)学会誌等における誌上発表

2)学会等における口頭発表3)学会等におけるポスター発表4)その他



FumihikoMiyoshi(fumi@sfc.keio.ac.jp)

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