研究課題名	擬似衛星測位動作検証
氏名		川喜田佑介
所属		政策・メディア研究科 博士課程 1年

擬似衛星を動作させる環境として、地下や鉄筋コンクリートなどの不感地帯、都 市部のビル影などの測位不可能地帯が想定される。後者は、測位はできないもの の、GPS衛星からの電波を受信することにより時刻同期のみは可能である。しか し、前者の不感地帯では、その時刻同期も不可能であり擬似衛星機構に加えて時 刻同期機構が必要になる。後者の擬似衛星の一般的な利用事例として、露天掘り の鉱石採掘現場などがあるが、前者の場合あまり例がない。

今回、動作検証を行った擬似衛星装置は、日本国内でほとんど動作例がなく、電 波の発信に関して総務省への申請および認可が必要であった。実験の場所として、 外部からGPSの電波が進入しないことを確認した、慶應義塾大学湘南藤沢キャン パスの大講堂(θ館)を用いた。大講堂内に、測位に必要な最低限の数である4個 の擬似衛星およびアンテナを設置した。また、時刻同期を行う為、屋外に設置し たGPSアンテナよりリピータを介して屋内にGPSの再発信を行うことで時刻同期を 試みた。移動局は、Novatel社製GPS受信機を、ファームウェアを入れ替えて利用 した。

今回の動作検証では、電波強度の調整に終始し、擬似衛星自体の動作検証には至 らなかった。これは、移動局が移動し、擬似衛星に接近するとそれ以外の擬似衛 星の信号が取れなくなるという現象が起こった。アンテナを交換し指向性をある 程度緩和することで多少緩和したが、今回の実験環境のような空間の場合、移動 局の位置により選択的に擬似衛星を利用する検討を行う必要が生じた。ただ、こ の場合ファームウェアの改良が必要な為、今回の実験では見送った。

慶應義塾大学における実験は、以上を持って終了したが、本実験は、東京大学、 東京駅丸の内駅などに会場を移し継続された。本実験は、慶應義塾大学、衛星測 位技術、東京大学、日立通信等の日立グループによって実施された。