2002年度 森基金 研究成果報告書

研究課題名「市民と行政の協働によるコミュニティ運営の実現方法」

政策・メディア研究科 修士課程2年 中川祥子


修士論文題目:市民と行政のパートナーシップの実現方法と効果の測定

−横浜市パートナーシップ推進モデル事業を事例として−

 

1.はじめに

 本研究の目的は、横浜市パートナーシップ推進モデル事業の成果について差が生じた要因の把握と、パートナーシップ推進の方策を示唆することである。  近年、財政難や情報化、市民ニーズの多様化など様々な社会環境の変化を受け、行政のみでのサービス提供が困難となる中、様々な分野で、NPO/市民活動と行政とのパートナーシップが求められ、実施されている。  パートナーシップとは、「市民と行政が政策に関する決定権と責任を共有している関係」である。例えば、まちづくりについては、アメリカではCDC(Community Development Corporation)、スコットランドではCBHO (Community-based Housing Organization)といったNPOが、衰退したコミュニティの再生に取り組み、行政は、それを資金面・制度面から支援している[1] 。日本では鎌倉市や神戸市は、各市が制定している「まちづくり条例」に基づき、まちづくりのルールなどを市民が提案できるようにしている[2] 。教育については、イギリスでは、保護者・行政・教員・地域の代表や校長で構成される学校理事会を中心に、授業カリキュラムや教員採用、予算などが決定されている[3]。日本でも、学校長や地域住民による協議会に学校運営の権限を持たせるというコミュニティ・スクール・モデル校が実施されている[4]。

 横浜市パートナーシップ推進モデル事業も、このような背景の中で行われた事業である。この事業の目的は、「パートナーシップ推進モデル事業を18区で展開し、そこでの成果と検証をもとに、横浜型のパートナーシップ型行政の仕組みを定着させる」ことだった。具体的には、公共施設の市民管理・運営を目指した「施設系」、地域の課題に関する協議の場の創出を目指した「プラン系」、地域の課題を担う市民活動の育成・支援を目指した「支援系」の3つの事業タイプが提示され、全18区で25事業が展開された。しかし、25事業の現状を見ると、市民と行政がパートナーシップを組んで、「継続的に」地域の課題解決やサービス提供に取り組んでいる事業もあれば、モデル事業実施期間のみの「一時的な」関係に終わってしまった事業もあるなど、成果に差が生じていた。事業目的から見ると、施設系、プラン系、支援系と事業タイプ別に成果があがっていた(表1)。しかし、より詳しく調べると、事業タイプ別ではなく、施設系では、市民が予算を与えられ、施設でのサービス提供を担っている事業の方が、プラン系では、市民提案が政策反映されている事業の方が、そうではない事業に比べ、成果があがっていた。即ち、パートナーシップがより強い度合いで行われていた方が、成果があがっていたことがわかった。

 このような結論は、これまで報告された中では、必ずしも導き出せていなかった。NPO/市民活動と行政とのパートナーシップの実現については、「行政がいかにNPOを支援するか」が、中心に論じられていた。だが、本研究によって、NPO/市民活動に求められる役割・責任が強まるほど、パートナーシップ事業の成果があがることが明らかとなった。

 本事業を事例とした研究に、内海・守屋・小林(2001)[5] のものがある。しかし、それは主に個別事例の紹介が中心である。横浜市の行政研究誌『調査季報』でも、事例として取り上げられているが、いずれも「区役所が果たすべき機能」「合意形成のはかり方」という視点から考察したものである[6]。行政内部でも、実施後の評価は行っていないとのことだ。

 「効果的なパートナーシップの実現方法」をテーマとした主な先行研究には、世古(2000)[7] 、牛山(1998)[8] 、田中(1999)[9] 、LeachとWilson(1998)[10] の研究などがある。しかし、これらの研究では、行政への調査は行われているが、NPO/市民活動への調査は、十分には行われていない。また、「パートナーシップの評価」をテーマとした主な先行研究には、後(2001)[11] 、山本(2002)[12] 、Murray(2000)[13] 、Jacobs(2000)[14] の研究などがあるが、全体的に見ると、パートナーシップの評価基準が明らかには示されていない。

 これらを踏まえ、本研究では次の4つの異なる尺度で、横浜市パートナーシップ推進モデル事業を総合的に評価した。

@横浜市パートナーシップ推進モデル事業の事業目的から導かれた評価基準

A25事業それぞれに参加した市民を対象としたアンケートの結果

B市民と行政の事業担当者へのインタビューの結果

Cケーススタディによる実際にもたらされた効果の測定

以下では、それぞれ「事業目的から見た尺度」「市民の満足度」「市民と行政担当者の声」「実際の効果」と呼ぶ。

 アンケートは、2002年6月中旬から9月中旬にかけて、25事業それぞれへの参加市民を対象に行った。359配布し、233回収(64.9%)、うち有効票は220(61.3%)だった。インタビューについては、2002年5月中旬から11月中旬にかけて、市民52人と現在ないし当時の区と市、外郭団体の事業担当者69人に行った。

 

表1 「事業目的から見た尺度」による横浜市パートナーシップ推進モデル事業の成果一覧

事業名 事業タイプ 「事業目的から見た尺度」による成果の有無
鶴見 つるみ発見・輪が街発展 支援系 ×
神奈川 りゆーす・かながわ(RCC) 施設系
西 ボランティア活動育成 支援系 ×
洋館を活用した山手の街づくり活動推進 施設系 ×(2001年度まで○)
蒔田公園の再整備 施設系 ×
  南子育て支援事業 支援系 ×
  ボランティアフォーラム・みなみ 支援系 ×
港南 マイコミュニティ港南21 プラン系 ×
  港南まちづくり塾 支援系 ×
  港南中央ガーデンプラザ構想検討委員会 施設系 ×
保土ヶ谷 今井地区センター・地域ケアプラザの建設 施設系
今宿地区センター・地域ケアプラザ整備 施設系 ×
磯子 既成市街地におけるまちづくり基本計画策定 プラン系 ×
金沢 街づくり支援システム推進事業 支援系 ×
  地域文化生活圏モデルプラン策定 プラン系 ×
港北 地域ケアプラザ・地区センターを活用した福祉コミュニティづくり 支援系 ×
緑と水の回廊 施設系
  いきいきみどりっ子支援 支援系 ×
  ささえ愛のコミュニティづくり 支援系 ×
青葉 青葉台駅バス対策検討事業 プラン系
都筑 都筑中央公園第2期区域企画検討 施設系
戸塚 まちづくりのための地区懇談会(ちくこん) プラン系
本郷ふじやま公園古民家活用策検討 施設系
センターロードいずみ中央地区における街づくり プラン系 ×
瀬谷 ふるさと瀬谷のさんぽ道 支援系 ×

 

2.事業タイプ以外に成果に影響を与える要因の検討

 まず、事業タイプ、即ちパートナーシップの度合い以外に、「事業目的から見た尺度」による成果の有無に、強く影響を与えている要因があるかどうか、地域特性、行政の事業担当者の意識、市民の意識の3つを取り上げ、検討した。

 横浜市は、都市形成史と人口動態によると、高齢化率が高く、異動率もほとんどない都心・都心周辺部、昭和40年から50年代にかけて盛んに開発が行われたが、近年、急速に高齢化が進んでいる南西部郊外、異動率が激しく、平均年齢も37.7歳と、成長過程にある北部郊外の3つに分かれる[15]。これらの特性を踏まえ、コミュニティが成熟している地域の方が、成果があがるかどうかを検討した。しかし、成果をあげた事業は都心・都心周辺部は9事業中2事業、南西部郊外は10事業中2事業、北部郊外は6事業中3事業である。そのため、「コミュニティが成熟している地域の方が、成果があがる」という結論も、この結論とは相反する「成長過程の地域の方が、成果があがる」という結論も成り立たなかった。

 緑区の「いきいきみどりっ子支援」、南区の「南子育て支援事業」などは、行政の事業担当者が熱意を持って取り組んでいたが、成果があがらなかった。支援系の事業に参加していた市民の多くは、熱心に取り組んでいたが、いずれも成果があがらなかった。このように、事業タイプ以外に、成果の有無に強く影響を与えている要因は見当たらなかった。

 

3.事業タイプ間の成果の比較分析

3.1 「市民の満足度」による比較分析

 15問の選択式回答の結果を、事業タイプ間で比較分析した。その結果、以下の6問で、有意水準0.05で、3つの事業タイプで差があることが認められた(図1〜図3で一部を示す)。

 ・いろんな参加者が提案・課題を出し合えた  

 ・行政の考え・仕組みがわかり、行政を身近に感じるようになった

 ・行政の情報提供は十分だった

 ・参加するごとにやる気が高まった

 ・行政は自分達の意見を吸い上げようと努力してくれた

 ・自分達の提案が活かされた

 

  これら6問を見ると、市民の事業に対する満足度を表していると言えるだろう。以下では、これらを「市民の満足度」と呼ぶことにする。全体的傾向をより把握しやすくするため、グラフのみではなく、参考として、総合得点を出すこととした。選択肢である「強くそう思う」「そう思う」「あまり思わない」「まったく思わない」に4点、3点、2点、1点という点数をあて、それぞれの回答者数にかけ、事業タイプごとのサンプル数で割った。 プラン系の方が、施設系に比べ、「市民の満足度」が高いものもあるが、全体的な傾向として、施設系、プラン系、支援系の順に、「市民の満足度」が高くなることがわかった。

 

図1 事業タイプ間の「市民の満足度」の差の検定結果(1):

「行政の考え・仕組みがわかり、行政を身近に感じるようになった」 n=214

総合得点:施設系=2.94 プラン系=2.86 支援系=2.50

 

図2 事業タイプ間の「市民の満足度」の差の検定結果(2):

「行政は自分達の意見を吸い上げようと努力してくれた」 n=213

総合得点:施設系=2.88 プラン系=2.94 支援系=2.41

 

図3 事業タイプ間の「市民の満足度」の差の検定結果(3): 「自分達の提案が活かされた」n=204

総合得点:施設系=2.83 プラン系=2.65 支援系=2.46

 

3.2 「市民と行政担当者の声」による比較分析

 次に、アンケートの自由記述、市民と行政の事業担当者へのインタビューの結果から、市民と行政の事業担当者は、それぞれ事業をどのように感じていたのか、事業タイプ間で差があるかどうかを比較分析した。その結果、2つの違いがあった。

 1つは、市民が事業を通して、「行政との関わり方がわかった」と感じていたかどうかである。

 「事業目的から見た尺度」と「市民の満足度」によると、多くの成果をあげていた施設系に参加していた市民からは、「日頃、このようにしたいと思っていても、行政にどのように反映していけばよいかわからなかったが、それがわかってよかった。今回のパートナーシップ推進モデル事業はお互いの意見を取り入れて積み上げた成果なので、満足している」といった回答が複数寄せられた。また、「行政との情報交換の大切さを、もっと市民も知っていかなければいけない」というような、パートナーシップを推進するには、行政だけではなく、市民自身も変わる必要性を指摘した声が、アンケートのみではなく、インタビューでも聞かれた。

 プラン系に参加した市民からは、「市民参加というが言葉だけ」といった回答があった一方、「以前は行政に何を言っても、やってくれないと思っていたが、今は違う。できないときは説明してくれ、代替案も一緒に考えてくれるので助かっている」といった感想も、二次資料[16]で見られた。

 しかし、支援系に参加した多くの市民からは、「行政の設定した場に出させられ、それを行政がどうするのかが見えない」といった感想が、アンケートの自由記述で見られた。中には、「自分が参加した活動が、「街づくり支援システム推進事業」という事業の一部であったことを知り、大変驚いている」という声もインタビューで聞かれ、事業目的どころか、事業名でさえ、市民と行政との間で共有されていなかったものもあった。そのためか、「行政に何を言っても解決しない。自分達で考え、行動を起こすのが1番」といった、パートナーシップを望まないような声も聞かれた。

 2つめの違いは、行政の事業担当者自身も、手ごたえを感じて事業に取り組んでいたかどうかである。施設系の事業担当者からは、「これまで、いかに市民の声を聞いていなかったかがよくわかった。この事業を通して、行政も変わるんだ、ということを示せたと思う」といった声が多く聞かれた。

 プラン系を選んだ事業担当者からは、「市民との話し合いの準備に追われ、事務量ばかりが増えて、パートナーシップなど考える余裕はなかった」といった声もあった一方、「実態をよく知ることができた。いろんな人の事情をぶつけあいながら、考えることができた」といった声も聞かれた。

 それに対し、支援系の複数の事業担当者から聞かれたのは、「どこまで行政が関わっていけばよいかわからない」という声だった。「お金と時間をかけてできたのは移送サービスのみ。パートナーシップ推進モデル事業でなければできなかったわけでもない。ある地区の住民は、行政を批判する一方で、行政に依存する。うるさいという感じだった」と話していた事業担当者もおり、パートナーシップとは正反対の状態もあったようだ。

 このように、「市民と行政担当者の声」による比較分析結果からも、施設系、プラン系、支援系の順に、市民も行政の事業担当者も、事業を肯定的に捉えており、成果をあげていたことが明らかとなった。

  しかし、それらの視点で成果をあげていた施設系、プラン系の中でも、成果をあげた事業は、それぞれ9事業中5事業、6事業中2事業と、成果の有無に差がある。さらに、施設系については、2001年度まで成果をあげていた中区を含む6事業で、行政から市民に委譲された権限の度合いに差が見られた。つまり、施設系、プラン系を行えば、成果があがるというわけでは、必ずしもないようだ。では、何が成果の差の要因となっているのだろうか。

 

4.施設系8事業、プラン系6事業における事業間の成果の比較分析

4.1 「市民の満足度」による比較分析

 ここからは、「事業目的から見た尺度」「市民の満足度」「市民と行政担当者の声」の3つの尺度ではかって、成果があがらなかったことが一致した支援系を除く、施設系、プラン系に焦点をあてる[17] 。施設系は、市民が施設を管理・運営している5事業と、そうではない3事業、プラン系は、市民と行政の協議が継続している2事業と、していない4事業に分かれる。これらの間で、どのような違いが見られるのか、3.1と同様に「市民の満足度」で比較分析した。その結果、施設系では、

 ・行政の考え・仕組みがわかり、行政を身近に感じるようになった

 ・異なる意見の人の考え・事情も理解できた

 ・話し合いの回数を重ねるごとに具体的な提案・課題解決につながっていった

 ・行政は自分達の意見を吸い上げようと努力してくれた

 

の4問で、プラン系では、

 ・自分達の提案が活かされた

 ・自分達の責任でできる充実感があった

 

の2問で、有意水準0.05で、それぞれ「市民管理・運営の有無」と「市民と行政の協議の継続の有無」で、差が認められた(図4〜図6で一部を示す)。施設系では、市民が施設を管理・運営している事業、プラン系では、市民と行政の協議が継続している事業の方が、「市民の満足度」が高くなることが明らかとなった。

 

図4 施設系8事業における事業間の「市民の満足度」の差の検定結果(1):

「行政の考え・仕組みがわかり、行政を身近に感じるようになった」 n=98

 

図5 施設系8事業における事業間の「市民の満足度」の差の検定結果(2):

「話し合いの回数を重ねるごとに具体的な提案・課題解決につながっていった」n=98

 

図6 プラン系6事業における事業間の「市民の満足度」の差の検定結果

「自分達の提案が活かされた」 n=47

 

4.2 「市民と行政担当者の声」による比較分析

 3.2と同様、「市民と行政担当者の声」によって、施設系、プラン系それぞれの事業タイプの中を、比較分析した。その結果、施設系では5つの要因が、プラン系では3つの要因が、成果の差をもたらしていたことが判明した。

4.2.1 施設系における成果の差の要因

 表2 「市民の満足度」による施設系8事業の成果一覧

事業名 施設名 「市民の満足度」による成果の有無
神奈川 りゆーす・かながわ(RCC) リサイクルコミュニティセンター(RCC)
保土ヶ谷 今井地区センター・地域ケアプラザの建設 今井地区センター
緑と水の回廊 北八朔公園
都筑 都筑中央公園第2期区域企画検討 都筑中央公園
本郷ふじやま公園古民家活用策検討 本郷ふじやま公園古民家
洋館を活用した山手の街づくり活動推進 山手234番館 ×
蒔田公園の再整備 蒔田公園 ×
今宿地区センター・地域ケアプラザ整備 今宿地区センター ×

 1つめは、市民が管理・運営を担う意識を持っていたかどうかである。「事業目的から見た尺度」と「市民の満足度」で成果があがっていた神奈川区、保土ヶ谷区、緑区、都筑区、栄区の5つの区の事業では、市民はそのような意識を持っていた。2001年度まで成果があがっていた中区の事業でも、「関わるうちに、山手234番館を他の洋館に負けない、もっと素晴らしい洋館にしたい、成果をあげたいと思うようになった」という言葉が表しているように、市民は同様の意識を持っていた。

  しかし、成果があがらなかった旭区と南区では、市民は管理・運営に対する意識を持っていなかった。特に、南区では、行政の意識とは裏腹に、消極的だったという。「広域的な連合町内会でやろうとしても、それぞれの町内には街区公園[18] があり、それぞれの愛護会[19] を持っているという実情がある。だから、蒔田公園のためにどれだけ人員を出せるかというと、限界がある。大きいことばかりワークショップで言うけれども、実際にそんなことできるか」と、議論が紛糾し、もめたこともあったそうだ。

 2つめは、行政の事業担当者が、この事業で実現しようとしていることは、従来のやり方と違うと、明確に意識していたかどうかである。現在、市民が施設を管理・運営している5事業は、行政の事業担当者がいずれもこの点を強く認識していた。神奈川区と都筑区は、市民管理・運営が従来所管する市の局・外郭団体に受け入れられなかった場合、「区が、区民利用施設協会[20] に管理を委託し、運営は市民に委託しようと考えていた」「選択肢の1つとして、自主活動も考えていた」といった代替案をそれぞれ持っていた。

 一方、成果があがらなかった旭区は、市民管理・運営に対する意識は持っていなかった。南区では、緑政局[21] の事業担当者は、「「従来どおり、行政が管理・運営し、町内会による愛護会が日常的な清掃・除草を行う」「ボランティアが管理・運営をする」「何もできない」の3つを可能性として想定していた」というが、南区の事業担当者は、「従来どおり、行政が管理・運営し、町内会による愛護会が日常的な清掃・除草を行うことを考えていた」そうだ。中区では、区政推進課の事業担当者は、従来のやり方を変えようと考えていたというが、地域振興課の事業担当者は、従来から施設の建設・計画には市民参加を取り込んできているから、234番館の実験といっても、それほど新しいものではないと感じていたという。中区の中でも意識に温度差があった。 

 3つめに、区が市民への管理・運営を考えていた理由が、従来のやり方に問題があり、その解決には市民管理・運営が有効だという考えに起因していたかどうかである。成果があがった5つの区のうち、栄区の事業担当者は「単なる管理では、ものめずらしさがなくなると廃れてしまう。常に創造的で新しいことをやっていけるような、本当にいいサービス、いい管理・運営は情熱を持っている人でなければできるわけない」と話しており、「行政が管理・運営するなんてありえない」とも言い切っていた。神奈川区の事業担当者は「リサイクルプラザ[22] のようなものにはしたくないと考えていた」という。2001年度まで成果があがっていた中区の事業担当者も、「市民が管理・運営をすると、面白い活動ができるだろうと思っていた。このような施設にしたくないという代表例が、他の山手の洋館だった。単に見せているだけで、死んでいるような冷たいようなものに感じていた」と言っていた。

  一方、成果があがらなかった旭区と南区は、従来のやり方に対する問題意識を抱いていなかった。

 4つめに、区内や類似施設における前例を持っており、区内にない場合は、区外の事例を調査していたかどうかである。成果があがった保土ヶ谷区と都筑区は、区内に前例を持っており、神奈川区、栄区、緑区は、区外の類似施設に対し、調査をしていた。中でも、都筑区の事業担当者は「都筑区内の公園については、ずっと西部公園緑地事務所[23] と一緒になってやってきていた。烏山公園は、ずっと前からやってきているが、これは区主導というよりも、西部公園緑地事務所率先でやっていた。前例があった、そのために、共通の意識を持ってできたことが大きい」と話していた。

  しかし、成果があがらなかった旭区、2001年度まで成果があがっていた中区は前例を持っておらず、区外に前例があっても、調査は行っていなかった。南区は、前例があり、調査も行っていたが、南区の事業担当者が、市民管理・運営に対する明確な意識と、従来のやり方に問題意識を持っていなかったために、成果があがらなかったと考えられよう。

  5つめに、それぞれの施設の位置づけが明確だったかどうかである。この要因については、2001年度まで成果があがっていた中区の山手234番館のみ、位置づけが不明確だった。

 原因の1つは、他の洋館と異なり、山手234番館が公園内になかったことである。こうした理由により、他の洋館を所管していた緑政局が、山手234番館の所有を断ったため、もともと建物を所管しない都市デザイン室[24] が暫定的に所管していた。もう1つは、山手が観光地でもあったことである。中区の地域振興課の事業担当者は、市民管理・運営を継続させるため、「区で保有する可能性もまったくゼロではなかった」と言っている。実際、区政を行う上で必要であれば、区で予算化している施設もあるという。しかし、山手234番館は「観光施設であるため、区政推進において必要ではない」とみなされたそうだ。

  山手234番館の市民管理・運営は、「市民と行政との間で「5年」と約束されていた」と、市民と中区は言っている。しかし、5年が3年に短縮された理由について、都市デザイン室の事業担当者は、緑政局との話し合いの結果、山手234番館が公園の拡張地域になったこと、以前から行政内部で話し合われてきた、山手の洋館の一括管理に関する調整のめどがついたことなどを挙げている。また、「234を管理している人には洋館全体を管理・運営するほどの体力はないということがわかった」「234は微妙なバランスで、自分達の施設という風になりかねない」とも話しており、都市デザイン室は、市民に対し、不信感を抱いていたようだ。このような様々な要因によって、山手234番館の管理・運営は、2001年度を最後に、市民から外郭団体「緑の協会」[25] に逆戻りした。

 

4.2.2 施設系6事業で市民に与えられた権限の度合いが異なる背景

 「事業目的から見た尺度」「市民の満足度」「市民と行政担当者の声」の3つで、成果があがっていた神奈川区、保土ヶ谷区、緑区、都筑区、栄区と、2001年度まで成果があがっていた中区の施設系6事業で、市民に与えられた権限を再整理したのが、表3である。

表3 施設系6事業で市民に与えられた権限

施設名 市民グループ 役割 予算(年間) 活動内容
神奈川 リサイクルコミュニティセンター(RCC) 横浜市神奈川リサイクルコミュニティセンター運営活動機構 運営を委託 470万円 サービス内容、広報の仕方、ボランティアの育成、ボランティア同士の役割分担などの決定
保土ヶ谷 今井地区センター 今井地区センター企画委員会 委託ではない なし 一部のサービス内容の決定
北八朔公園 北八朔公園愛護会 管理・運営を委託 7万1,000円 サービス内容、広報の仕方、ボランティアの育成、ボランティア同士の役割分担などの決定
都筑 都筑中央公園 都筑中央公園自然体験施設管理運営委員会 上記同様 900万円 上記同様
本郷ふじやま公園古民家 本郷ふじやま公園古民家ゾーン運営委員会 上記同様 未定 上記同様
山手234番館

山手234番館運営委員会

上記同様(2001年度まで) 1,200万円(2001年度) サービス内容、広報の仕方、ボランティア同士の役割分担などの決定

 ここで注意したいことは、緑区では、市民は年間7万1,000円の予算しか与えられておらず、保土ヶ谷区に至っては、予算を与えられていないだけではなく、イベントを行ったり、ボランティアを育成できないなど、市民が有している権限は、他の事業に比べ、限られていることである。その背景には、通常、地区センターの管理・運営は、第3セクター「区民利用施設協会」が担うものと、暗黙的に決められている「地区センター条例」の存在があった。保土ヶ谷区の事業担当者によると、「区民利用施設協会による管理・運営は開館時間や館長に左右されるなど、問題点が指摘されていたが、定められている以上、どうにもならない状態だった」そうだ。区民利用施設協会による管理・運営が前提にある中で、いかに市民が入り込むかが焦点だったことが、他区の事業に比べ、市民の権限が限られている理由と考えられる。緑区の北八朔公園愛護会に与えられている予算が少ないのは、北八朔公園内に施設がないためである。そのため、公的に認められた団体として管理・運営を行うには、年間7万1,000円程度が限度額となっている「公園愛護会」という選択肢しかなかった。

 

4.2.3 プラン系における成果の差の要因

表4 「市民の満足度」によるプラン系6事業の成果一覧

事業名 「市民の満足度」による成果の有無
青葉 青葉台駅バス対策検討事業
戸塚 まちづくりのための地区懇談会
港南 マイコミュニティ港南21 ×
金沢 地域文化生活圏モデルプラン策定 ×
磯子 既成市街地におけるまちづくり基本計画策定 ×
センターロードいずみ中央地区におけるまちづくり ×

 1つめは、問題解決のために、市民も自主的に活動していたかどうかである。「事業目的から見た尺度」と「市民の満足度」によると、成果があがっていた青葉区の青葉台駅前の渋滞問題は、もともと市民が率先して取り組んでいた。昭和54年からの青少年保護育成活動をきっかけに、市民は、風俗関係の看板の除去、植樹、駐輪対策など、まちのあらゆることに取り組むようになったのだという。こうした流れを経て、平成9年度の「青葉台駅バス対策検討委員会」、現在の「青葉台魅力のまちづくり検討委員会」に至っていた。戸塚区では、地区懇談会をきっかけに、環境改善された平戸みはらし公園の管理・運営、名瀬川の美化、阿久和川の美化などを市民が行っている。

  しかし、成果があがらなかった港南区、磯子区では、市民による自主的な活動は見られなかった。金沢区では、市民はまちづくりに関する自主活動を行っているが、市民と行政の情報共有が不十分だったためか、多くの市民が、行政の事業の一部として、自分達の活動が位置づけられていたことを認識していなかった。泉区では、市民と行政との協議会はあるが、現在、休止している。行政は、市民による協議会の自主運営を望んでいる一方、市民は、行政による協議会の再開を求めているなど、協議会の運営主体をめぐり、市民と行政との考えには、大きな隔たりがあった。

 2つめに、協議の場は政策形成過程において、ある程度拘束力を持っていたかどうかである。成果があがっていた青葉区では、青葉台駅周辺の渋滞を緩和するため、市民が青葉台駅の利用者と周辺住民へのアンケートやヒアリング、交通量調査などを実施する一方、行政が、早朝、青葉台駅まで送迎する車両に対し、協力を求める看板を設置したり、チラシを配布するなどといった役割分担を行ってきた。その結果、現在、「キス&ライド(自家用車で駅まで送迎すること)用降車エリア設置」「青葉台駅タクシー乗り場への一般車の右折進入・退出制限」などの対策が実施されている。戸塚区では、名瀬地区へのバスルートの新設、平戸みはらし公園の環境改善などが実現している。

 しかし、成果があがらなかった港南区では、「区の計画に反映させようといったことは考えていなかった」そうである。金沢区では、プランは策定されたが、内容は実現していない。磯子区、泉区でも、協議の場は、行政が市民の意見を聞く程度の機能しか有していなかったようだった。

 3つめに、従来のやり方に問題があり、その解決方法として、市民と行政の協議の場が設定されていたかどうかである。成果があがった青葉区の渋滞問題は、従来は警察が担うものである。しかし、行政の事業担当者は、「青葉台駅前の渋滞は、十分な駐車スペースが確保されていないため、路上駐車せざるをえないという商店街の事情が絡んでいる。単なる取締りだと、商店街の枯渇問題になりかねない。だから、地域の実情をよく知っている市民と対策を考え、実行する必要があった」と話している。戸塚区の地区懇談会は、「財政難の中で、何でも行政がやることはもうできない」という、従来の要望・陳情に対する問題意識から、平成5年度より始められたものだった。

  それに対し、成果があがらなかった港南区、金沢区、磯子区、泉区では、いずれも従来のやり方に対する明確な問題意識は持っていなかった。

  以上の「市民と行政担当者の声」による比較分析結果から、より直接的に成果の有無に影響を及ぼしていたのは、どの事業タイプを実施したかということよりも、市民に予算を与え、施設でのサービス提供を担ってもらうという権限委譲もしくは政策反映を実施したかどうかだったことがわかった。では、権限委譲と政策反映は実際にどのような効果をもたらしているのだろうか。2001年度まで行政から市民に施設の管理・運営の権限が委譲されていた中区を含む施設系6事業と、プラン系1事業を事例に検討した。

 

5.ケーススタディ

5.1 政策反映の効果 −青葉区の「青葉台駅バス対策検討事業」を事例に−

5.1.1 協働による対策実施前後の渋滞比較

  青葉台駅周辺の渋滞を解消するため、市民は、青葉台駅利用者と周辺住民へのアンケートやヒアリング、交通量調査などの実施、行政は、青葉台駅まで送迎する車に対し、協力を求める看板の設置、チラシの配布などの役割を担ってきた。こうした役割分担による取り組みの結果、平成12年度から「キス&ライド(自家用車で駅まで送迎すること)用降車エリア」が設置されることとなった。設置前後の渋滞を比較すると、青葉台駅北側では平均237mから11mとほぼ解消、駅南側では平均267mから239mと約10%減少した(図7)。

 

図7 キス&ライド用降車エリア設置前後の渋滞の長さ

(「青葉区役所からのお知らせ」2002.5をもとに作成)

 

5.1.2 住民と行政の声

 青葉台地区の住民でもあり、平成9年度から平成11年度に設置されていた「青葉台駅バス対策検討委員会」、平成13年度に発展した「青葉台魅力の街づくり検討委員会」のメンバーでもある市民と、青葉区の事業担当者は、協働による対策の効果を一定程度、認めつつも、「問題を引き起こしている、遠くから車で青葉台駅に来る人が参加してくれないから、解決は難しい。けれども、これからもどんどん解決策を考えていく」「成果は長い目で見ないとあがらない。次のステップにつなげていこうとすることが大切」と話している。実際、青葉台魅力の街づくり検討委員会が提案した「青葉台駅タクシー乗り場への一般車の右折進入・右折退出の制限」という対策が、平成14年度より実施されている。市民と行政双方の問題解決に対する意欲的な姿勢が、渋滞緩和を実現しているのではないだろうか。

 

5.2権限委譲の効果

5.2.1 行政の直接事業とのサービス比較

 同様の2つの施設で、市民が管理・運営しているものと、行政が管理・運営しているものを比較してみよう。

■リサイクルプラザ vs リサイクルコミュニティセンター(神奈川区)

 リサイクルプラザは、外郭団体「廃棄物資源公社」が管理・運営している。リサイクルコミュニティセンター同様、「環境問題に対する啓発、啓蒙活動」を目的としているが、展示が中心である。講座も行われるが、紙すき、石けんなどに限られており、毎日行っているわけではない。一方、リサイクルコミュニティセンターは、約20の企画があり、毎日、何かの講座を行っている。また、学校への出前講座や発表会の受け入れも行っている。

 

■従来の地区センター vs 今井地区センター(保土ヶ谷区)  

 従来の地区センターでは、地区センターまつりの内容は事務局が決めるため、地区センターでサークル活動を行っている人しか来ないという。しかし、今井地区センターでは、地域の人々や企画委員、館長など多様な人々が内容を決めるため、普段、地区センターを利用していない人も参加するそうだ。管理・運営側である第3セクター「区民利用施設協会」によると、「他の地区センターでは今井地区センターほど人は集まらない」そうである。  他のケースでも、これらと同様、市民が管理・運営しているものの方が、多様で柔軟なサービスを提供していた。

 

5.2.2 利用者の声

 まだ市民管理・運営が始まっていない本郷ふじやま公園古民家(栄区)(2002年9月現在)を除く、5つの施設に対し、利用者にインタビューした。

■北八朔公園(緑区)

 千草台保育園の保母さんであるAさんは、「七夕の時、竹を年長組が切るのを、愛護会の人たちが手伝ってくれた。七夕の竹は、普通は切ったものがあり、切る機会はない。だから、子供達は本当に喜んでいた」と話している。「育ちには自然が必要。けれども、公園といってもいろいろだから、使いきれていなかった。ほうったらかしの自然の中で、子どもが遊ぶのは危険。北八朔公園は、いい意味で、人の手で自然を保ってくださっている」とも言っていた。

 

■山手234番館(中区)

 横浜山手中華学校のB先生は、山手の学校が協働して、山手234番館を丸ごとアートにしようという企画「山手のしあわせな時間」のメインコーディネーターだった。B先生はこう言っている。「行政が管理・運営している施設ではすぐに規制がかかるが、山手234番館の市民は意識も高く、子供達が楽しくやっていけるよう、サポートしてくれた。あのようなイベントができたのは、ハートがあたたかい市民が管理・運営していたからだ」。だから、「行政の管理・運営に置かれることを知った時、すごくショックだった」そうだ。「これまでの洋館の管理・運営はとてもクオリティが高いが、見せているだけで人の交流は生まれない。交流が生まれるには、思いを持った人が関わらなければいけない」とB先生は言う。

 

 今井地区センター(保土ヶ谷区)については、市民が、全ての自主事業の提案に関わったり、イベントを実施できるわけでもないためか、利用者は企画委員の存在を特に認識していなかった。しかし、2001年度まで市民が管理・運営していた山手234番館(中区)を含む4つの施設では、利用者は「市民と行政の管理・運営は明らかに異なる」と認識した上で、「市民管理・運営の施設の方がよい」と感じていた。このような市民管理・運営を、肯定的に捉えている市の局・外郭団体もあれば、否定的に捉えているものもあった。中部公園緑地事務所は、本郷ふじやま公園古民家運営委員会(栄区)に対し、「本当に委託できる能力があるのか」と強く疑念を抱いていた。山手234番館(中区)については、所管局であった都市デザイン室は、市民主導による予算の執行に危険性も感じていた。

 

5.2.3 経済効果−中区の山手234番館を事例に−

  2002年度より、山手234番館を含む7館の洋館全てが、外郭団体「緑の協会」の管理・運営下におかれることとなった。この移行により、人件費と庭園管理費が発生した一方、イベント費が大幅に削減された。市民は1つのイベントに40万円をあてていたが、現在は10万円から15万円程度である。また、洋館内に生ける花代も確保されなくなった。

 サービスの質の重要部分であるイベント費を削ってまで、庭園管理費も含めた人件費に多額の資金を投入する背景には、行政・外郭団体側の「ボランティアはどこまで責任が持てるのか」という不信感がある。しかし、行政・外郭団体であれば信頼性が確保される保証も、根拠もないだろう。では、NPOが洋館の管理・運営を担ったら、どのような変化が見られるだろうか。以下の前提をもとに計算した。

 ・NPOは7館全ての管理・運営に関わる

 ・洋館の休館日、開館時間は現在と同様とする

  ・各館に常勤スタッフ1人、パートタイムスタッフ2人をあて、1日2人ずつ業務を行う

 ・常勤スタッフは20万円の月額給与、パートタイムスタッフは900円の時給とする[26]

  ・人件費の総額は、「雇用者に支払う給与(月額給与+賞与など)+各種手当(役手当、住宅補助、扶養手当など)+保険料(事業主負担分)+交通費」である

  ・イベント費は2100万円(1館に300万円)、事務費は350万円とする

 

 これらを踏まえ、計算した結果を、表5に示す。ある程度、余裕を持って計算しているため、現実的なオプションが示されていると言ってもいいだろう。

 

表5 NPOが洋館の管理・運営を担った場合の負担額とその構成 (単位:円)

  ボランティアグループ NPO 外郭団体
人件費
0
60,774,000
           67,000,000    
保守管理費
9,000,000
9,000,000
           9,000,000
庭園管理費
0
0
21,000,000
事務費
3,500,000
3,500,000
4,500,000
イベント費
21,000,000
21,000,000
3,500,000
総計
33,500,000
94,274,000
110,000,000

 

6.まとめ

 本研究では、横浜市パートナーシップ推進モデル事業を、「事業目的から見た尺度」「市民の満足度」「市民と行政担当者の声」「実際の効果」という4つの尺度を用いて評価した。   「事業目的から見た尺度」「市民の満足度」「市民と行政担当者の声」の3つではかった結果、施設系、プラン系、支援系の順で成果があがっていたことが一致した。一言で言うと、パートナーシップの度合いが強まるほど、成果をあげていた。しかし、より直接的に成果の有無に影響を及ぼしていたのは、どの事業タイプを実施したかということよりもむしろ、市民に予算を与え、施設でのサービス提供を担ってもらうという権限委譲もしくは政策反映を実施したかどうかだった。ここから、NPO/市民活動に求められる役割・責任がより強まるほど、パートナーシップ事業の成果があがることがわかった。実際に、「市民と行政の協働で対策を行った方が、行わない場合に比べ、より効果的に問題解決できる」ことと、「市民が施設でのサービス提供を担った方が、直接事業に比べ、コスト面でもサービス面でも優位である」ことが明らかとなった。

  「権限委譲」をすることは、パートナーシップ事業の推進方策として有効なだけではなく、NPO/市民活動の育成においても、有効であることが示唆されよう。だが、NPO/市民活動に権限が委譲されるには、NPO/市民活動自身も、権限を委譲されるのに十分な信頼性を確保しようと、努力することが必要である。

 


[1] CDCやCBHOなどについては(財)ハウジングアンドコミュニティ財団『NPO教書』風土社、1997に詳しく紹介されている。

[2] 名和田是彦『コミュニティの法理論』創文社、1998は神戸市を事例にあげている。『造景 特集:「参加のまちづくり」はいま』No.9 1997.6は、豊中市のまちづくり協議会や日本とドイツの市民参加の制度と仕組みの比較などを紹介している。また、近年では「まちづくり条例」から発展した「自治基本条例」を制定する動きが目立つ。『地方自治職員研修 特集:自治基本条例と市民参加条例』2002.3を参照のこと。

[3] 小松郁夫、「学校改善と学校理事会の役割〜学校の「自律的」経営の行方」『学校経営』1999.7、Brian Fidler and Geoff Bowles,"Effective Local Management of Schools," BEMAS (英国教育経営行政学会)1992

[4] http://www.vcom.or.jp/index.html を参照のこと。

[5] 内海宏、守屋直、小林康夫「横浜市パートナーシップ推進モデル事業の成果と定着化」『都市政策研究シリーズ コミュニティ・ネットワーキングとパートナーシップ』横浜市立大学経済研究所、2001

[6] 横浜市企画局政策部調査課『調査季報 特集 転換期の行政運営システム』133号、1998.3、『調査季報 特集 自治体における合意形成〜まちづくりの視点を中心に』141号、2000.3など

[7] 世古一穂「自治体とNPOのパートナーシップ」『都市問題』第91巻第1号、2000.1

[8] 牛山久仁彦「地方政府による市民セクター支援政策と現状と課題」『愛知大学法学部法経論集』148、1998.12

[9] 田中建二「行政−NPO関係論の展開」『名古屋大学法政論集』178、179号、1999

[10] Steve Leach and David Wilson(1998)Voluntary Groups and Local Authorities: Rethinking the Relationship, Local Government Studies, Vol.24, No.2

[11] 後房雄「行政からNPOへの事業委託の現状と課題」『地域問題研究』2001.12

[12] 山本啓「NPOと自治 アウトソーシングと事業性」『月刊自治研』2002.1

[13] Vic Murray(2000)Evaluating the impact of public-private partnerships: A Canadian perspective in Osborne, S ed., Public-Private Partnerships: Theory and Practice in international perspective, London Routledge, pp.277-292

[14] Brian Jacobs(2000)Partnerships in Pittsburgh: the evaluation of complex local initiatives in Osborne, S ed., Public-Private Partnerships: Theory and Practice in international perspective, London Routledge, pp.219- 234

[15] 横浜市企画局調査課編・発行『よこはまの暮らしやすさ』2001.11

[16] パートナーシップ推進モデル事業3局トライアングル事務局『パートナーシップ』第16号、1998.6

[17] 精度のより高い結果を得るため、横浜市パートナーシップ推進モデル事業の趣旨と多少異なるが、本事業を25事業行うための数合わせに入れられた港南区の「港南中央ガーデンプラザ構想検討委員会」は、分析の対象外とした。また、緑区の「緑と水の回廊」は、区の事業として平成6年度から行われていたものであり、当初はプランをつくることが目的とされていた。しかし、横浜市パートナーシップ推進モデル事業が行われた平成10年度は、市民による北八朔公園の管理・運営の実現が目的とされ、検討が進められてきた。そのため、本研究では、「緑と水の回廊」を、プラン系ではなく、施設系として扱う。

[18] 身近な公園のこと。

[19] 横浜市では、「横浜市公園愛護会事務取扱要綱」をもとに、街区公園の日常的な清掃、除草を行う愛護会の結成を、強制ではないが、地元町内会に呼びかけている。愛護会の活動内容から言うと、正確には「市民による公園管理制度」ではない。なお、緑区の北八朔公園愛護会は、愛護会ではあるものの、清掃、除草のみではなく、保全活動を中心に行っており、従来の愛護会の範囲を超えた活動を展開している。

[20] 地区センターやコミュニティハウスなどの管理・運営を行う第3セクター。全18区に設置されている。

[21] 緑の保全と創造、農業の保全と振興、都市公園の管理と整備を主な業務としている横浜市の組織の1つ。

[22] 環境問題に対する啓発、啓蒙活動を目的とした施設であり、外郭団体「廃棄物資源公社」が管理・運営している。

[23] 緑政局内の組織の1つで、公園の管理を主な業務としている。横浜市では、公園緑地事務所は「中部」「南部」「西部」「北部」の4つがある。

[24] 都市計画局内の組織。各地域の自然、歴史を生かした広場、オープンスペースの確保、街並みづくりの企画、調整を主な業務としている。

[25] 正式名称は(財)横浜市緑の協会。よこはま緑の街づくり基金の造成および管理・運用、公園緑地の管理、緑化思想の普及、よこはま動物園の管理運営、駐車場の経営を主な業務としている緑政局の外郭団体。

[26] 経済産業研究所が行ったNPO法人アンケート調査(経済産業省「産業構造審議会NPO部会 中間とりまとめ」(http://www.meti.go.jp/report/committee/index.html)ならびに厚生労働省の「賃金センサス」をもとに設定した。