2002年度森泰吉郎記念研究振興資金 研究者育成費(修士・博士)

 

マルチエージェントモデルによる証券市場の価格変動分析

政策メディア科1年 広兼 賢治

 

 

概要

今年度より、マルチ-エージェントによる分析方法の具体化に取り組んでいるが 今学期は分析する上での具体的なシミュレーション状況を決めた。

 

 

研究目的

       ある証券の価格に対して起こり得たシナリオを分析することで、市場が認識している基本価格とそのリスクを数値的に表す

       ある期間(本研究では90年-02年)の基本価格とリスクの変容を数値的に表す

 

証券市場の仕組み

       証券市場には様々な投資家(エージェント)が存在する

 

l   個人投資家

l   生命保険、損害保険

l   証券会社

l   投資信託

l   企業

l   外国人投資家

 

       それぞれの投資家は異なる状況で証券投資を行っている

l   長期的運用タイプ

l   短期的運用タイプ

 

証券市場の仕組み

 

手法

       解析的手法(確率過程に基づく強い前提を必要とする) 
S(証券価格変動)=時間的変動要因+ノイズ(ランダムウォーク)などにわけて、数理理論から微分方程式を解く

 

       統計的手法ー計量経済学ー(大雑把な分析しかできない)

Y=aX+bX2+cX3 など

 

       コンピュテーショナルファイナンス(シミュレーションにより値を算出)

解析解の出ない微分方程式を対数の法則を使いシミュレーションにより算出する。

 

       マルチエージェント(多数の投資家を造りシミュレーション)

投資家が投資を行う場合、ある証券の価格を予想する(期待値)、投資家には将来の価格が確実に分かっているわけではないため、自分の持っている情報から期待価格を算出する。

シミュレーション例

シミュレーションとの比較

 

 本研究のアプローチ

       本研究においては予想は行わない。そのため、これまで起きた株価のプロセスを分析することが研究課題となる。

 

       株価の要因を、新しい情報によるものの変化と、内部的な変化にわける

       過去のデータを使用するために、9月11日の事件が起きた際に、株価の上昇確率を事前に変化させる

       株価の期待価格を、これまで起きた株価の分布から確率的に予想する

       マーケット構造も実装する。

 

 シミュレーション設定

       各エージェントの比率を東京証券取引所の、各投資家比率に従って作る

 長期的運用タイプと、短期的運用タイプに投資家をわける。

 個人投資家20%

 外国人投資家30%

 金融機関40%などと設定

 各エージェントの比率を東京証券取引所の、各投資家比率に従って作る

 

 

       本研究の手法の利点と欠点

               各投資家のリスク回避度(リスクの好む幅)を測定可能

               投資家の嗜好が証券価格に与える影響(価格プレミアム)を測定

 

               ある一定の投資関数を仮定する必要性

 

 

 シミュレーションパターン

ー投資家の嗜好リスクの分析ー

     ・200人ほどの投資家(エージェント)を造り、ランダムにリスク回避度を

     振り分ける

     ・関数により次の期sの証券価格を算出する

     ・マッチングする投資家を算出して価格を推計する

     ・繰り返す

 

 

ーリスク回避度の推計ー

     ・200人ほどの投資家(エージェント)を造り、ランダムにリスク回避度を

     振り分ける

     ・関数により次の期の証券価格を算出する

     ・実際に取引が行われた価格を参照して、それに適する価格でマッチング

     ・その投資家のリスク回避度を測定

     ・これを繰り返す

     この場合、実際に起きた株価に対してパラメーターを推計するために、ある最適化理論を適応する。(遺伝子アルゴリズムにより株価に対する最適なパラメーターを算出する)

 

実装方法

 現在別プロジェクトで進行しているBoxed Economy Project で、社会の「エージェントベースモデリング」を行うための基本的な枠組みと、それをコンピュータ上でシミュレートするためのプラットフォームを構築している。エージェントベース経済モデルのシミュレーション研究を支援するためのプラットフォームとして「Boxed Economy Simulation Platform(BESP) を開発・提案している。BESP は、エージェントベース経済モデルのシミュレーションを作成・実行・分析するためのプラットフォームであり、以下の仕組みを提供している。

 以降はそこで開発されたプラットフォームを使用して今年の春に実装を行い、学会発表を行う予定である。