2002年度 森泰吉郎記念研究振興基金 研究成果報告書

キャンパスコミュニティメディアによる情報流通活性化

ネットワークガバナンスプログラム・ネットワークコミュニティプロジェクト所属

政策・メディア研究科修士課程2年 学籍番号:80132168 西村慶太 ログイン名:kn

 

<研究成果>

研究成果を修士論文『キャンパスメディアに見るコミュニティメディアの可能性』付録)にまとめる

 

▼要旨

本研究は自発的な学生達等がIT(情報通信技術)やそれに伴うサービスを活用して効率的に情報の受発信を行なうことで、大学キャンパスにおける情報流通を担いつつある主体をキャンパスコミュニティメディアと総称し、その調査、分析を行なうものである。

目的は大きく分けて二つある。近年、増加傾向にあるキャンパスコミュニティメディアの動向、現状を明らかにすること、その上で活動内容の調査・分析、ケーススタディを行ない、更なる発展、充実や問題点克服のための施策を立案すること、である。

調査、分析の結果、休止、廃止したものも含めると52大学に75サイトが存在し、これらは特に1999年頃から増加傾向にある新しい主体であることがわかった。彼らはそれぞれが基盤とする大学キャンパスの情報環境に応じて、それを補完するように柔軟な形態を取りながら、“オフラインでの人間関係を超えたコミュニケーションの場の提供”や、“キャンパスや生活に密着した身近な情報の迅速な提供”等を行ない、キャンパスの活性化や学生生活の支援を図っていた。また、200210月の全国大学コミュニティサイト『unist』開設に代表される横の連携や協力を行なうなど、様々な新しい試みがあることもわかった。

一方で、自発的な情報発信に不可欠な意欲やスキルを持つ人材の確保といった継続性の問題、情報の信頼性や責任の所在といった問題や課題も抱え、実際に閉鎖や休止に至っているサイトも少なくなかった。しかし、それらを克服する試みも多く見受けられた。

最後に大学キャンパスの特殊性と一般性を鑑みながら、得られた成果をもとに、コミュニティメディア全般が持つ可能性について言及する。情報の受発信に伴う参入障壁を乗り越えて、活動を展開するキャンパスコミュニティメディアの潮流は紙や電波を媒体とする従来の情報メディアでは存在し得なかった、存在したとしても活動を制限されていたような規模、種類のコミュニティにも情報流通を担う主体が形成され、大きな役割を担っていく可能性を強く示唆しているものと考えるためである。

本論文が今後のキャンパスコミュニティメディアやコミュニティメディアの成立、発展におけるドライビングフォースとして寄与すればこの上ない幸いである。