2002年度森泰吉郎記念研究振興基金 研究報告書

政策・メディア研究科 修士課程2年
楠本宏樹 (80131514)

    研究概要

    本研究は農地分析に用いる自己組織化(Self-Organizing Map)アルゴリズムの 計算コストを削減するアルゴリズムを提案し、実用化に向けて大きく前進させた。 自己組織化アルゴリズムはKohonenによって開発されたニューラルネットワークの教師無し学習の手法の1つで、 オリジナルはO(M^2)の計算量が必要であった。 これまで計算量O(M log M)の木構造SOMや、O(M)のポインタを使ったSOMなど 様々な計算量削減のための改良がなされてきたが、 提案手法はO(log_2 M)にまで減らすことに成功した。 今後は提案手法応用して衛星画像等による農地の分光画像(各ピクセルが多次元データとなる)を解析し土壌分析の 研究を進める。

  1. 提案手法

    提案手法はSOMを以下の点で改良した。
    • 勝者ベクトルの探索: 初めは大雑把に探し、徐々に細かく探していく。
    • 学習空間: 初めはサイズを小さくしておき、徐々に大きくしていく。
    • 学習: 従来は近傍学習を行なっていたが、提案手法は近傍学習を必要としない。(勝者ベクトルのみの学習)


  2. 実験
    • 入力データ

      12個のクラスターをもつ20×120ピクセルの画像データ。1ピクセルが1データとなる。

    • 計算時間

      Size of Map The basic SOM The proposed algorithm
      9 9.8 1.5
      17 34.7 1.8
      33 132.5 2.1
      65 509.4 2.4
      129 2149.7 2.7


      提案手法はオーダーに通り短時間で計算することができている。

    • マッピング結果

      「提案手法による学習後のSOM」と「各クラスタがマッピングされる範囲」





  3. 実験結果のまとめ

    提案手法はlog_2 Mの計算時間でマッピングすることができた。 また、マッピングの性能は、局所的にも大局的にも最適なものであったといえる。


  4. 今後の課題

    今後は提案手法応用して衛星画像等による農地の分光画像(各ピクセルが多次元データとなる)を解析し土壌分析の 研究を進める。 現在は数百枚の分光画像を入力データとして提案手法による特徴抽出を行なっているところである。 画像枚数が多くなる(つまり入力ベクトルの次元数が多くなる)と様々な問題点が出てくるので更なる工夫が必要である。

    email: kusu@sfc.keio.ac.jp