災害時におけるプレカット工法による木造応急仮設住宅の供給に関する研究

 

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科

修士課程

原野 泰典

 

 

想定される南関東大地震をはじめ、関東地域で地震が起こった場合に必要とされる仮設住宅の戸数は、阪神・淡路大震災において供給された約5万戸を大きく上回る、約20万戸の仮設住宅が必要とされている。

その仮設住宅の供給形態は、大きく二つに分けることができる。ひとつは、政府主導によって行われる供給形態であり、日本においては、通常時に工事現場の現場小屋として利用されているプレファブ型の仮設住宅が阪神・淡路大震災で供給された。

もうひとつは、セルフビルド型と呼ばれる方式であり、これは、被災者をはじめとした民間が中心になって各々の仮設住宅を建設するという方式である。

本研究で行ったことは大きく二つである。第一に、政府主導の仮設住宅の供給形態において、阪神・淡路大震災で供給されたプレファブ現場小屋で形式はなく、木造による仮設住宅の供給の可能性を探ったことである。第二に、セルフビルド形式の仮設住宅の建設に関して、災害時においても十分に手に入れることのできる部材を用いて、実際に仮設住宅を建設するという研究である。

第一の研究である、木造による仮設住宅の供給に関する研究は、日本の木造住宅の生産能力に着目することで、災害時にそれを仮設住宅の供給に転用しようというものである。そのなかでも、本研究では、住宅の建設において近年急速にそのシェアを伸ばしているプレカット工法を中心にその生産能力について調査を行った。プレカット工法とは、木造軸組工法において、柱や横架材の接合部に施される継手・仕口の加工を、回転刃などを持つ機械で行う方法のことで、これにより、工期の短縮等のメリットがある。このプレカット工法は、1985年の時点で木造住宅建設の5%程度しか採用されなかったのだが、現在では50%を越える採用率となっており、その工場数、生産規模ともに増加しており、この工法を仮設住宅に転用すべく、調査を行った。現在のところ、工場数、生産能力等が明らかになっており、現在はそれを組み立てる大工といった職人の人数把握を調査している。

第二の研究である、セルフビルド形式の仮設住宅の研究については、第一の研究で使われる無垢材が災害時に価格高騰した場合のことを想定し、何処でも大量に入手可能であり、その量の多さゆえに価格高騰の心配もない材であるベニヤ板に着目し、それをセルフビルド形式で建設することを試みた。この基金を利用し、ベニヤ板を購入し、ベニヤ板の仮設住宅を、大工といった職人を介さずに建設することで、実際の災害において、被災者らが中心になって仮設住宅を建設する方法についての可能性について研究しようとするものである。このプロジェクトは、現在のところ、建設途中であり、3月中の完成を目指している。