災害後の木造応急仮設住宅供給システムの提案

政策・メディア研究科 修士2年

原野 泰典

yas@sfc.keio.ac.jp

 

 

本研究では、大規模な災害が発生した際に、家屋が倒壊・焼失した世帯に対して供給すべき応急仮設住宅について必要な要件について抽出し、実際に建設実験を行った。

 研究は、@既往研究による応急仮設住宅供給システムの現況と問題点の抽出、Aアンケート調査による応急仮設住宅需要の調査、B新しい応急仮設住宅の提案、という流れをとっている。

 @の「既往研究による応急仮設住宅供給システムの現況と問題点の抽出」においては、現況の供給システムでは、都市直下型の大規模な災害が発生し、大量の家屋喪失世帯が発生した場合に、応急仮設住宅供給の遅延が発生し、多くの避難者が体育館などの避難所での生活を余儀なくされることが明らかになった。短期間で素人(未熟練労働者)建設することができる応急仮設住宅の必要性が明らかになった。

 Aの「アンケート調査による応急仮設住宅需要の調査」では、藤沢市を対象に、応急仮設住宅の潜在需要の概要を明らかにするためにアンケート調査を行った。ここでは、災害が発生した場合、『必要な水回りが整っている』、『入居までの日数が短い』という応急仮設住宅が必要とされていることが明らかになった。

 Bでは、@及びAより、必要とされる応急仮設住宅を『大量に供給できる』、『設置コストが安い』、『平常時に豊富な供給量が確保できる』、『解体後の再利用ができる』という要件を満たした新たな住宅モデルを建設することを試みている。

 これらの条件のうち、『設置コストが安い』ことを成立させるためには、本題である木造による仮設住宅のように、全てを木造で成立させること難しく、材木の利用は、ベニヤ板など、豊富な生産量を持ち、災害後おいても価格が高騰する恐れのないものを利用することが適切であると考えた。その他の部材では、『大量に供給できる』要件を満たすために、プラスチック製品(ここでは仮設トイレ)を利用した。

 建設は200312月末に行われ、作業員2人によって4日間で建設することができた。

 

 このような研究を潤滑に行うことができたのは、本研究基金のよるものであると、強く感謝いたします。