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2003年度 森基金活動報告 「社会科学調査研究プラットフォームの開発」

概要

社会科学の調査研究において、フィールドワークを行う研究者や、日常の生活のなかでデータを記録する一般の被験者や参加者が携帯電話を用いて情報を記録することができ、収集したデータを統合して効率的に分析するためのプラットフォーム "UbiMob" を開発した。

開発者

システム

"UbiMob"は機能的に以下の主要なコンポーネントより構成される
  • データ収集モバイルコンポーネント(i-mode,ez-web,j-skyインターフェース)
  • データ確認、編集コンポーネント(ウェブブラウザインターフェース)
  • データベース構成コンポーネント(ウェブブラウザインターフェース)


UbiMobのシステムアーキテクチャは以下のようになる
データ収集は主に携帯電話(モバイルコンポーネント)からi-modeやe-mailを介して行い、そのデータを後にウェブブラウザから編集する(データ確認、編集コンポーネント)。どういったデータを収集するか、調査毎に項目を設定したり、表示順序を構成するのがデータベース構成コンポーネントである。このコンポーネントによりユーザはデータベース編集の基礎知識がなくとも容易に調査データの項目を構成、編集することができる。以下の章でコンポーネントの説明を詳細に行う。

データ収集モバイルコンポーネント

携帯電話を代表とするモバイル端末から取得した静止画像や動画像、テキストなどのマルチメディアデータとGPS位置情報と時間という2つのメタデータを用いることで、実世界の位置と時間とリンクした調査データの収集が可能となる。
i-modeなどの携帯ウェブブラウザで調査入力項目を入力したあとデータを登録する。このときあらかじめデータベース構成コンポーネントで作成しておいてプルダウンリストを活用すると手入力の手間が省くことができる。
データがデータベースへ登録されるとデータIDが返される。このIDをサブジェクトヘッダとしてe-mailで写真、位置情報などのコンテンツを送信することで、先ほどの調査データに写真や位置情報といった情報を関連付けて保存することができる。

下図のようなIDが返される。(図はPCのブラウザで見た場合。)


IDをサブジェクトに記入し、位置情報、写真、テキストを送信。


Data IDによってメールと調査データが関連付けられる。


位置情報と写真が調査データに関連付けられる。(PCのブラウザで見たデータ確認画面。)

データ確認、編集コンポーネント

データ確認、編集コンポーネントでは、先ほど説明した写真や位置情報も含め収集したデータをPCからブラウザで確認することができる。簡単なWebインターフェースでデータの修正や追加などの変更が可能となる。収集したデータはODBC(Open Database Connectivity)を介してマイクロソフトエクセルや、アクセスといったソフトへ取得が可能となる。

収集したデータの一覧。チェックボックスをチュックし編集画面へ

データベース構成コンポーネント

Webインターフェースとして提供されるデータ確認、編集コンポーネントは以下のサブコンポーネントにより構成される。
  • Data Base Manager
  • List Editor
  • View Creator

Data Base Managerは調査項目などをWEb上で作成することをサポートするツールである。これによりユーザーはデータベースの設計を意識することなくテーブルに新たなフィールドを作成することができる。以下のインターフェースにより項目を作成する。


List Editorでは、調査データの入力項目に表示させるプルダウンメニューを作成することができる。リストをあらかじめ作成しておけば携帯電話からフルテキストで入力する手間を省くことができる。


View Creatorはi-modeなどのブラウザに表示させる入力項目の選択、表示の順序を構成する。調査毎に必要な入力項目だけを優先度の高い順にi-mode/ez-web上に表示できるため時間がない状況下で優先する項目だけを入力するという場合に便利である。


今後の展開

現在、小檜山研究室のグループ、及び大阪産業大学のグループが本システムを用いて実際に調査を行うための準備をしている。また南カリフォルニア大学および、イギリスの社会科学を専門とする調査グループも現地での運用を検討しており、携帯電話の仕様について調査中である。
今後の技術的な展開としては、携帯電話を代表とするモバイル端末から取得した静止画像や動画像、テキストなどのマルチメディアデータとGPS位置情報と時間という2つのメタデータを用いることで、実世界の位置および時間とリンクしたヴァーチャルな3次元空間を構築し視覚化するという研究をすすめており、この技術をフィールドワークのサポートとすることを今後検討していく。
以下のような空間を構築中。

謝辞

2003年度、森基金のサポートにより上述のようなシステムを企画からおよそ10カ月という短い期間で構築、運用まで実現することができました。この場をかりて感謝の意を述べたいと思います。