研究内容

 

研究課題名:商談・交渉に見るアラブ商人の判断基準

 

牧田 直哉

政策・メディア研究科修士課程1年

グローバル・ガバナンス・プログラム所属 80332490

 

Ø      研究課題

長期のフィールドワークを通じてアラブ商人の商談・交渉を観察し、その判断基準を考察する。

ケーススタディとして、シリア・アラブ共和国第2の都市アレッポにて、この地の特産品のひとつであるフストク(ピスタチオ)の取引を扱う。フストクが製品の生産業者から小売店の店頭に並ぶまでになされるアラブ人同士の商談・交渉をビデオカメラやレコーダで記録し、観察材料とする。その際、この地に深く根付いているイスラームの教えを念頭に置き、商人達が実際とった行動との関係性に着目する。

 

Ø      研究の目的

 商談・交渉におけるアラブ商人の判断基準を探る。ケーススタディとして、シリア・アラブ共和国第2の都市アレッポにて、この地の特産品のひとつであるフストク(ピスタチオ)の取引を扱う。その際、この地に深く根付いているイスラームの教えを念頭に置き、商人達が実際とった行動との関係性に着目する。

 

Ø      研究の背景

 日本にとって疎遠な地域と思われがちなアラブであるが、現代アラブの都市を歩けば、至るところで日本企業の看板を目にすることができる。また近年では日本人の経営者や技術者がそのノウハウを提供することにより、アラブの産業的自立を促すといった試みがなされ、ある程度の成功を収めてきている。IT産業が多くの国で一時期の勢いを失いつつある中、中東地域ではまだまだ発展が続いている。さらには貴重な観光資源も看過できない。経済面において、今後日本とアラブの関係はますます緊密になっていくことが予想される。

異文化に対しては自らのルールを押し付けるのではなく、相手の考え方や習慣を理解し、受け入れることが大切である。ビジネスを円滑に成功させるためにも同じことがいえる。だから我々はアラブ人の商売におけるこれらの点について理解し、どう対処すべきかについて考える必要がある。

日本人は欧米人に比べ言いたいことをはっきり言わない、とよく指摘される。私はシリアに滞在した経験から、アラブ人との比較においても似たようなことが言えると考えている。アラブもはっきりと言いたいことを言う。会話でも文章でも文脈によって様々な省略をおこなう日本語に比べ、アラビヤ語では何から何まではっきり言ったほうが自然である。ところがアラブ人は時として日本人のように建前を言うこともある。「言う文化」だからといって、欧米と全く同じように対処すれば良いというわけではない。

また、人々の間に深く根付いているイスラームの教えも無視できない。この教えは資本主義、社会主義のどちらとも異なる経済のあり方を標榜しているといわれるからである。 イスラームの教えが示す商人のあり方は、資本主義におけるホモ・エコノミクス的な人間像とは異なる。とはいえ利潤の追求が否定されているわけではない。一方で社会全体の利益が重視されるが、社会主義のように私的財産権を完全に否定しているわけでもない。この指針が実際の商売にどう反映されているのかを知る必要がある。

これら2つの点が最もよく現れるのが商談・交渉の場面である。それぞれ前者は交渉の話術に、後者は商人の価値観に影響して、契約成立の判断基準となる。本研究においてアラブ人同士の実際の商談を観察するのはこのためである。

 

Ø      研究手法

 シリア・アラブ共和国第2の都市アレッポにて行なうフィールドワークを中心に据える。フィールド調査ではアレッポの特産品であるピスタチオ(フストク・ハラビー)の流通を研究対象として取り上げ、流通におけるどのような過程で値段交渉が行なわれるのかを調査する。値段交渉の場面はビデオによって記録し調査材料とする。また並行してアラビヤ語による文献研究を行い、イスラームの示す商業の規範について調査する。