皇居周辺地域における都市再生ビジョンとプログラム作成

 

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科修士二年

平本 督太郎

 

T、研究の背景・目的

 東京は、その中心に巨大な森を有する世界でも稀な都市である。皇居とその周りに存在するオープンスペースは、無数の庭園により彩られた庭園文化都市である江戸が残した貴重な財産であり、また明治・大正・昭和という時代の流れの中で、積極的に人々が生み出してきた財産でもある。私たちは、東京の中心に存在するこの貴重な財産を、国際的価値をもつ社会的共通資本として明確に位置づけていく必要がある。そして、それによって、国際都市東京が抱く魅力を世界中の人にメッセージとして、発信していく必要があるのである。

 以上の背景を受けて、本研究は皇居周辺地域(以下パレスゾーンとする)が有する多数かつ多様なオープンスペースを対象とし、以下の二つの目的を設定した。

 

1、                                                                                                                                                                                                                               パレスゾーンが有する多種多様かつ多数のオープンスペース全てを対象とした調査・分析を行うことで、パレスゾーンのオープンスペースの特徴を明確にすること

2、                                                                                                                                                                                                                               パレスゾーンが有する多種多様かつ多数のオープンスペースを管理・運営していくための手法、すなわちパレスゾーンにおけるオープンスペース・マネジメントのあり方と、それによってかなえられるビジョンを提示すること


 


U、対象とするオープンスペース

行政資料及びフィールドワークにより、確認することが出来た、

「対象地内の36件の公園、緑地、広場」「公開空地(特定街区制度7件、総合設計制度34件)「寺社地」により構成される計83箇所のオープンスペース(図2参照)


V、研究のフロー

 


 まず、パレスゾーンの地域構造を明確にし、地域分類を行う。次に、人々に対する意識調査を基に、パレスゾーンのオープンスペースを分析するための視点を定め、それにより、パレスゾーン内にあるオープンスペースに対しての調査・分析を行う。そして、パレスゾーンのオープンスペースを分類し、特徴と課題が明らかとする。

 次に、オープンスペースのネットワーク性に対しての調査・分析を行い、パレスゾーンに存在するネットワークの特徴と課題が明らかとなった。

 以上の、調査・分析結果を基に、マネジメントエリアを設定し、それぞれに対してマネジメントプログラムを提案する。そして、最後にそのマネジメントプログラムを活かすことによってかなえられる、パレスゾーンのビジョンを示した。

3:研究のフロー

 

 

 


■パレスゾーンの地域構造の分析■

都市基盤整備の変遷と、オープンスペースの変遷を調べることで、対象地がもつ地域構造の把握を行った。また、その地域構造の特色をより明確にするために、「植生」「水」「都市軸」「オープンスペース」「街路」「文化」の6つの面からの分析を行うことで、対象地が内包するエリアの類型化を行った。その結果、大きく5つのエリアに分類できることがわかり、そのエリア毎の特徴と課題を明らかとした。

4:各エリアの位置

 

■オープンスペースの分析■

 空間、利用、管理という3つの面から対象地内に存在するオープンスペースの特徴を明確なものとした。空間面においては行政資料をもとに、利用面においてはオープンスペースの利用者に対する観察調査をもとに、管理面においては管理者に対するインタビューをもとに、調査分析を行った。そして、空間面と利用面からの分析をGIS上で重ね合わせることによって、オープンスペース特徴を地域構造の分析によって明確となった5つのエリア毎に示した。また、その地域エリアの特徴とオープンスペースの管理に関する現状を重ね合わせることにより、エリアごとにオープンスペースが持つ課題を明らかとなった。

5:エリア別のオープンスペース

 

 


■オープンスペースのネットワークの分析■

従来の研究では明らかにされなかった地区間でのオープンスペースのネットワークの姿を明確なものとした。具体的には、空間、利用、管理という3つの面から分析を行い、空間面においては地図上でのオープンスペースの位置関係をもとに、利用に関してはオープンスペースの利用者に対する観察調査をもとに、管理面においては管理者に対するインタビューをもとに、調査分析を行った。また、空間面と利用面からの分析をGIS上で重ね合わせることにより、オープンスペースのネットワークのまとまりがどこに生じている場所と、その特徴を明らかにした。その結果、パレスゾーンには、ネットワークのまとまりが9つあることがわかり、(図6参照)その上で、管理面からの分析を重ねあわせ、ネットワークのまとまり毎の課題を明確にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6:ネットワークのまとまり

 

■オープンスペースマネジメントプログラムの提案■

 これまで行った分析結果を元に、マネジメントエリアの作成を行った。その結果、パレスゾーンに20のマネジメントエリアを作成し、そのマネジメントごとに課題を明らかにし、それに対応するマネジメントプログラムの提案を行った。また、マネジメントプログラムに基づく、プロポーザルを作成し、それによって描かれるパレスゾーンのビジョンを示した。

 

テキスト ボックス: 図7:マネジメントエリア

 

 

 

 

 

 

 


 


テキスト ボックス: 図8:プロポーザル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


テキスト ボックス: 図10:地形と濠が彩る現代の庭園都市(ビジョン)