― 2003年度 森基金報告書研究成果報告書
韓国における政府主導NPOの運営改革へ向けて
政策・メディア研究科 2年
鄭 芝 永(チュン ジ ヨン) 80132876
序論
民主主義や市民社会の形成・熟成をベースに踏んだ伝統を基にして発達してきた先進国のＮＰＯと比べると、韓国のＮＰＯは未熟な段階にあるものの、次世代の社会システムとして急速に注目されつつある。その理由として、現在活動中の法人ＮＰＯ約700）の約75％、任意ＮＰＯ（約3,000）の60％が1987年以後設立されたものであり､韓国の政治的民主化の進展と深い関係を持っていること等が挙げられる。
1970年代以来､権威主義的な韓国政府は､国民統制手段として政府主導型のＮＰＯを全国的規模で設立・運用してきたが、執権勢力の宣伝組織化しがちな点や政府のＮＰＯ支援予算（約16億円）の36％を３箇所の政府主導型ＮＰＯに偏向支援している点など、様々な問題が広く指摘されている。
1994年以後，韓国政府は既存の抑圧，対抗関係にあったＮＰＯに対して，競争，協力，共助関係にあると認識を変えて，ＮＰＯを共同の事業パトナーとして受け取るようになった．その証拠として，既存の支援事業(政府主導ＮＰＯを中心に)から一歩前進にて，非営利民間団体支援法(2000年試行)に基づく事業共募方式，政府政策開発機構への代表者参加，制作執行過程への参加等に変えて，財政的支援や共助体制を維持している．
このような政策転換は肯定的な評価を受けているが，事業課題の選定，事業に対する中間評価や最終評価などを政府側が持っているので，ＮＰＯ固有の役割や自律生を発揮することが難しくなっている．そして，過去の支配形ＮＰＯ政策の延長線に止まっているとの視覚もある．
本研究は、こうした状況のなかで、韓国におけるＮＰＯのさらなるエンパワメントのためには、政府とＮＰＯの対称的関係性を担保するための政策改革を行う必要があることの証明、そしてＮＰＯの健全性を担保するための具体的政策の構築・提案を目的としている。
1． NPOに対する政府支援の根拠
1－１ NPOの社会的機能と役割
１－１－１ 国家権力と市場権力の牽制
啓蒙時代以来市民の滋養うを高揚し自由な企業活動を維持するために国家権力を牽制するのは市民社会の重要な役割の一つである。この傾向は行政国家や福祉国家が発達し国家の権限が拡大されると同時に市民の参与意欲が増大することによってより強化されてきたが、このような国家権力を牽制するのはNGOの重要な存立の根拠になる。[1]
国家権力を相対にしているNGOは、監視と牽制の活動を通じて市民の権利を守り、現在の代議民主主義せいどの下で望ましい政策の導出や変化を導いている。具体的に政府の政策独占や非効率的予算の浪費、そして組織の肥大化を監視・牽制するためにNGOは政府の政策に対する健全な批判と世論形成を通じて代案や政策方向を停止している。
他方、NGOは市場の権力に対しても批判と監視の活動を行う。市場は本質的に利潤追求を目的に活動するので、情報の非対称的優位を通じ消費者を欺瞞する誘引を持ている。そして、環境汚染などの社会問題を起こす。政府が提供する公共サービスの限界を私的領域で需要を充足させる役割を部分的に行うが消費者が十分な情報を持っていない場合、私的企業の機会主義的行為を事前に防ぐことは難しい。特に、教育や医療分野のように生産者が消費者より多くの情報を持つ場合民間営利組織は機会主義的に行動する可能性が高い[2]。
Hansmannは、このような特徴を持つ商品は契約が成立し難いので利潤極大化市場では生産と消費が少なくなると主張する。従って、教育、医療のような分野には営利企業よりは、信頼できる民間非営利組織がせいふを補完し公共財を提供すべきであると言う[3]。実際に数多い環境保護、消費者保護団体が経済正義の実現と市民権利保護のため企業の非倫理的利潤追求行為を監視、告発する役割を遂行している。
１－１－２ 公共的財貨の供給
NGOは政治・経済的制約によって派生する社会の諸分野の超過需要を充足する。多数決の原則によって中位投票者を満足させる政策を選ばざるを得ない政府の限界をNGOが補完すると言うことである。
市場体制の下で打算が合わないため注目を得ない領域、つまり宗教、学術などの分野又は少数人種、貧民の人権問題などにおいてNGOの公的活動は活発である。
そして、非営利団体の運営は市民の自発的参与を随伴するので、既存の主人―代理人理論において強調される道徳的弛緩と逆選択とこれによる組織の非効率性を排除できるという面が重要である[4]。
１－１－３民主主義的参与の場
民主国家の政策立案課程での市民参与は市民による国家統制という要因として存在する。多様な利益集団の役割は既存の体制と享受する便益を維持しようとする否定的側面はあるが、多様な参与の場を提供すると言う意味で特に疎外された集団のセ策課程での参与という側面で重要な役割をする[5]。従って、市民参与は市民団体などを通じて多様に行われ、この団体の役割は市民の意見収斂から前進し政策化することにあるといえる。
1－1－4資源確保の限界
NGOの自律性を高めるためには財政的自立が重要であるが、Salamonは、NGOの失敗を寄付金の不充分性を指摘している[6]。そして、寄付者による制限主義、寄付者支配主義もNGOが自体活動に必要な財源を確保できないことから起因する弊害であると言える。
NGOが公益を追求し社会問題を効果的に解決できる代案として浮上したのは事実であるが、韓国社会で会員の自発的会費と寄付金だけで活動財源を調達するのは難しい。
１．
韓国における政府の対NPO政策
２－１ 規制と支援
韓国政府がNPOに対して持っている視覚は規制と支援の両面があるが、特に財政の面では、寄付金品募集規制法と非営利民間団体支援法に基づいて動いている。
規制法は1951年制定されて、政府が無分別な寄付金の募集行為を防止する目的で制定された。国家と市民社会の関係を相互対立関係的側面から見ると、当時韓国の市民社会が発達していなかったので、NPOにとって不利な法律が制定されるのを防ぐことは出来なかった。そして、国内の情勢が戦争状態であったことで、政府の規制は正当性を持つと言える。ところが、市民社会領域の急速な成長のような時代的変化が起こっている現時点で規制法がNGOの活発な活動を阻害しているのにも関わらず、当時のまま改定しないのは、政府の視覚にまだ権威主義政権の理念や視覚を持っていると言える。
他方、支援法は韓国社会の中で急速に成長した非営利民間団体を対象に政府が財政支援が可能になるように2000年1月制定、頒布された。法律の制定過程を見ると、政府は少なくともNGOの成長と社会的役割や価値に対して新たに認識の転換をしていると見られる。
２－１－１ 寄付金品募集規制法
現行の寄付金品募集規制法(以下規制法)は1951年11月7日、寄付金品募集禁止法として制定、公布された以来、1962年、1970年、1996年に大幅な改定が断行されて現在まで至った。1951年、制定当時の立法趣旨は“社会的窮乏と混乱の中で無分別に乱立した寄付金品の強要から国民の財産権を保護し、生活安定に寄与する”ということである。それは、民生保護と治安維持のために当時の内務部(現在の行政自治部)が法の必要性を提起し規制的立法が成立されて、その執行も内務部が担当してきた。
1962年と1970年の改定趣旨は、“政府が必要とする事業の後援のために部金許容の範囲を広げる”であった。当時は、規制法によって社会事業、社会福祉界の募金は同法の第3条(募集の一般的禁止・許可) 4項‘顕忠記念施設と慈善事業のための金品`によって募金の許可を得た。そして、赤十字募金、災害救護募金、結核予防募金など特別法による募金は同法の適用から排除された。
以後、政府機関や一般的ＮＧＯは寄付金の募金が禁止されていたので、適切な救護活動のための募金さえ募集することが禁止されていた。政府は、1996年、当時の隣人救護金の募金を不法使用や横領などの事件[7]もあったことを受けて政府は規制強化のため規制法を改定した。
寄付金品の定義
‘寄付金品`は歓迎金品、祝賀金品、賛助金品など名称に関係なく反対給付なしに取得する金銭或いは物品(２条１項)を云う。それを書信や広告、其の他の方法を持って寄付金品の出捐を他人に依頼、勧誘、要求する行為を`寄付金品の募集`(２条２項)と言う。そして、‘募集者`は、４条の規定によって寄付金品の募集許可を得た者で、‘募集従事者‘募集者から指示、依頼を受け寄付金品の募集に従事する者(２条４項)を言う。
寄付金品の募集許可
寄付金品を募集する時は大統領令が定めている条項によって行政自治部或いは許可権者(特別市長、広域市長、道知事)の許可を得る必要がある(４条１項)。１項の規定は、１．国際的に行われる救護事業 ２．天災・事変其の他これに準する災害救護 ３．不遇の隣人誠金 ４．公益を目的として国民の積極的な参加が必要な場合である。他方、許可権者はこの規定によって寄付金品の募集を許可する際、前もって寄付審査委員会の審議を得る必要がある。
寄付金品の募集と接受の制限
国家や地方自治団体、そしてその所属機関と公務員は自発的に寄託する金品であっても法令に定められている場合を除いて原則的に接受するのは禁止されている(５条１項)。これは国家の権力を利用して国民を対象に無分別な寄付金の強要の弊害を防ぐためである。
但し、大統領令によって私用の用度と目的を指定した自発的寄託金の場合は、制限的に許容している。その時、寄付金審査委員会の審議を経て募集者の依頼によって単純に寄付金品を接受した募集者に伝達する時は制限条項を設けないと言う条項を明記している(５条２項)。
接受場所の制限
寄付金品は国家機関や地方自治団体、言論機関や金融機関など公開された場所で接受を行うように定められている(６条１項)。その時、募集者或いは募集従事者は寄付金品の接受の事実を帳簿に記載し寄付者に領収書を発行しなければならない(６条２項)。これは、寄付金品の募集が法によって統制できなくなって、無分別に行われるのを防ぐためである。
寄付金品の使用内訳の制限
募集された寄付金品は募集目的の用度以外には使用できない(１２条)。但し、寄付金品をその目的に合う部門に使用した後残った場合、寄付金品の２％を超過しない範囲での募集費用に使う場合には、大統領令の定めによって許可権者の許可を得て募集目的と類似な用度に使うことができる。
帳簿の備えと公開
募集者は寄付金品の募集状況、使用内訳の帳簿・書類などを作成し備える必要があり、寄付金品の使用と１２条の但し書きによって、他の目的に転用した場合、その結果を公開しなければならない(１３条)。
そして、募集者は寄付金品の募集を中断、完了した時、募集した金品を使ったとき、他の目的に転用した場合は、‘募集者の名前や名称`、`許可日字と許可番号`、‘集金品の総額、数量`、‘使用内訳`などを募集地域の新聞に１回以上公開する義務がある。
政府の統制条項-事前許可既定の存続
規制法が幾つかの改正によって募集許容の範囲が拡張したのは事実であるが、以後寄付金品ｎお募集に対する社会的要求が強まったのにも関わらず法の整備は不振である。実状、大半のNGOが今まで後援費や会費の名目で募金をしてきたので規制法は事実上死文化されたと言える。
規制法の中で、特にNGOの財政面での活動を統制する条項は、第４条１項(寄付金品を募集する時は大統領令が定めている条項によって行政自治部或いは許可権者(特別市長、広域市長、道知事)の許可を得る必要がある。)である。これは、国家権力や機関が恣意的に政府に批判的NGOの募金行為を問題視するなど悪用の可能性が高い[8]。
実際に、この条項を用いて、国家権力や機関が一種のNGO統制の手段として利用するケースも多かった[9]。そして、これは政府に批判的でけん制の機能を担当したNGOに対する勧告のNGOにとっては募金による資金調達を妨げることになる上で、結果的にNGOの重要な財政確保手段を法的に容認して貰えなく団体の活動上の萎縮を齎している。
政府の統制条項-募集費用の限度
募集費用と言うのは、後援の必要性を後援者に知らせて、その知らせを受けた後援者が後援金を提供するように誘導する過程に使われた経費とその後援金の使用処を後援者に報告するなど一連の事業過程に投入される基本的経費である[10]。
NGOの財政確保を難しくする第２の条項は、現行の規正法が明記している２％の募集費用の制限である(１２条３項)。これは募集された寄付金品を募集目的以外の用途に使えないと言うものであるが、その数値の日現実性が問題である。１９９９年、監査院の＜１９９９年度国内民間団体監査報告書＞にも募集費用に関して現実的に引き上げることを勧告した経緯もある。
政府の統制条項-寄付金品の接受場所の制限
規制法６条１項によると、寄付金品は国家機関や地方自治団体、言論機関や金融機関など公開された場所で接受を行うように定められているがこの条項の趣旨は寄付金品の無分別に行われるのを防ごうとするものである。しかし、この条項の‘公開された場所`と言う用語が曖昧である上に、透明性と責任性が保障されてない状況では、公開された場所であっても寄付金品の転用や乱用を監督できないので，単なる、統制のための条項であるだけという指摘もある。
2-1-2非営利民間団体支援法
前節の“寄付金品募集規制法”は韓国において制度面での間接的支援の一環であると見る時、“非営利民間団体支援法(以下支援法)”は直接的支援の類型であると言える。
支援法はNGOに対する政府の財政支援を骨子にした民間団体支援に関する法案の構想の結果で、一番初めに提案されたのは1994年5月、当時の与党であった民自党が民間団体に対する公平的支援を主とする立法方針を発表し、その年に国会に法案を提出したものであった。そのときは法案が通らなく廃棄されたが、1997年、各NGOは‘市民社会発展基本法’案を作るなど関心が高まって、1997年の10月、国会に`民間運動支援に関する法律`が提出されたが法案の審議が継続的に保留されていた。
その法律をめぐって市民社旗では関連法案に対する幾つの公聴会が開かれ、問題点や批判が論議されるようになったが、焦点は、市民運動の全般を管掌する‘市民社会発展委員会’の設置に対する問題で、NGOの自律性を損なう恐れがあると言う面で批判は集中した。そして、‘市民社会発展基金’の設置も個別NGOの募金活動を萎縮する憂慮に対し批判が相次いだ。
1998年11月18日、76個のNGOは政府が纏めた“民間運動支援に関する法律”案に対する違憲を整理し政府に伝達したが、NGOは政府の法律案が“民間団体の自律性を制約し、活動を萎縮させる欠陥を持っている”と主張した。その中で、政府の直接的支援が望ましいものであるかの論争が起こり、政府がその指摘を受けて関心を表明した。1999年に、初めて、非営利民間団体支援法の理念基づいた支援事業を行政自治部の実行に移すなどの活発な動きを見せた。その流れを受け、国会では与・野党が協調し、2000年1月12日、法律の制定・公布に至った。
立法の趣旨
支援法の第1条は“非営利民間団体の自発的活動を保障し健全な民間団体への成長を支援することによって非営利民間団体の公益活動の増進と民主社会の発展に寄与することを目的にする。”と明記されている。このため国家或いは地方自治団体は非営利民間団体の固有の活動領域を尊重しなければならないことと共に創意性と専門性を発揮し交易活動に参与できるよう積極的に努力しなければならない(3条)。そして、政府の財政支援が非営利民間団体の自律性を毀損しないよう努力しなければならない(5条1項)。
支援の要件
支援法は第2条に営利を追求しないで公益活動を遂行する非営利民間団体の要件を次のように明記している。
１． 事業の直接受恵者が不特定多数であること
２． 構成員の相互間利益の分配をしないこと
３． 事実上特定の政党や選出的候補を支持・支援することを主なる目的としたり、特定の宗教の教理の伝播を主なる目的とｓて設立・運営されないこと
４． 常時の構成員数が100人以上のこと
５． 最近1年以上公益活動の実績があること
６． 法人ではない団体の場合、代表者或いは管理人がいること
支援の方式
支援法の第6条によると、支援法を通じて支援を受ける経費は事業費を原則としている。ここで事業費というのは、NGOが補助金を受け遂行する公益活動に所要される人的・物的経費を通称する。
そして、支援法の施行令に第13条には、“行政自治部長官は支援事業の効率的運営のため事業関連長官又は市・道知事にたいして行政支援を要請できることと、同時に事業を遂行するNGOも事業の成功的遂行のために必要な場合事業に関連する機関に対して業務関連の協調を要請できる”と規定している。
事業費に対する直接的支援以外に間接的支援もあるが、“租税特例制限法や其の他税法が定めている規定による減税(支援法第10条)の恵沢、大量の郵便物を発送する際の郵便料金の減免制度”などがある。
支援事業の選定
現在、支援法の下でNGOに財政支援事業を行っている政府機関[11]は、各部別に設けられている個別法に基づいて支援事業や支援金額を決めて推進している。支援事業の中で先導的財政支援事業を行っていると評価される行政自治部の場合、まず、NGOが具体的事業の計画を提案する前、行政側が支援事業の類型を定め登録された団体が公平に参加できるようにして、NGO分野の概括的需要を類型化している[12]。この決定を登録したNGOに公告し、提案を募集する。
NGOからの事業計画書を‘公益事業選定委員会’[13]が審査し事業選定や事業費の配分を行う。支援事業の選定は公開競争方式を取り入れて行うが、選定委員会は‘支援事業の選定と支援事業の決定’、‘事業の評価方法’、‘其の他支援事業のしんさ、選定、評価過程において提起される重要事項’などを管轄する。
事業計画書の提出と審査、選定
登録したNGOが政府から支援を受けるためには事業計画書を会計年度３月末まで許可権者に提出する。その内容は、‘事業の目的、事業の目的を達成するための事業推進方法、事業推進日程など細部推進計画、期待効果、事業費の執行計画’などの記載する。
このように記載し提出された事業計画書を土台に公益事業選定委員会は‘独創性、経済性、波及効果、社会問題の解決と住民欲求の充足度、申請予算の妥当性と自体負担額の比率、前年度事業評価の結果，団体の専門性、責任性、開発性、公益活動の実績’などを基準に審査し支援事業の選定を行う。
3. NPOと政府の理論的関係
政府―NPOの関係をより明確に理解するためには、政府と NPOの関係を実証的に説明できる理論が必要である。そして、それがどんな風に相互作用をするのかを理解し、その過程を説明するためには既存の理論にどんな修正が必要であるかを明瞭にすることが重要である。
本研究の本節では、既存の 政府―NPOの関係に関する理論の問題点を把握することと、二つの部門間の相互作用を説明するために追加すべき理論的準拠に関して論議する。この接近方式を通じて多次元的で、韓国社会の特殊的な政府―NGOの関係へ近づこうとする。
3-1-1 補助金理論(Subsidy Theories)
NPOは民間の自発的補助だけでは運営が難しいので、実際に政府の補助に依存することがある[14]。Fama & Jensen[15]は政府の直・間接的補助金の支給、各種の税制減免、特別郵便料金の適用などの恵沢は NGOの機能活性化に重要な要素であると主張している。特に、営利機関と競争関係にある NPOの場合、そのような恵沢は
NPOの市場支配力を挙げるのに決定的要素として機能しているのは、Hansmann[16]の実証的分析で証明されている。
しかし､ このような接近方式は現像的イッシュを分析するのに止まっていて、政府とＮPＯ関系を体系的に説明することまでは至っていない。そして､政府-NGO関係を政府主導の一方的な関係として捉えていることと、政府の財政的支援だけに局限しているので法·制度的支援を含む戦略的資源を抜かしていることなどの限界を露出している。
3-2-2 第3者政府(Third-Party Government)
Nisbet
Berger & Neuhaus などの学者が主張してきた既存の福祉国家理論が持っている核心的問題は財源の供給者(provider
of funds)としての政府の役割とサービス伝達者(deliverer
of services)としての政府の役割を区分することができなかったことである。実証的研究によると、前者の意味での米国政府の役割は膨張してきたが、サービス伝達機能は広範囲において他の制度部門に移転した。それで、NPOに対する政府支援の拡大はSalamonの指摘のように第3者政府の拡大として捉えることができる。このような福祉サービスの委託は政府の構造と機能を牽制と均衡の観点から効果的に分離した米国憲法の構造から導かれたことであるが､第3者政府の概念は異なる次元から政府間の関係を超えてこの原理を包括的に拡大したものである。
福祉国家の特性を説明するとき、NGOを第3者政府という概念を持って説明する理論は，補助金理論とは異なってNGOを各種の社会サービスの提供において政府の執行業務を代行する補助的機能に焦点を合わせている。従って、政府は資源創出機能を、NGOはサービス伝達機能を遂行する単純形態の役割分担体制であると定義している。そして、第3者政府理論は、既存の政府失敗理論に比重を置いているので政府-NGO関係を競争的､ 対立的関係として見るのではなく協力的契約関係として説明している。
3-3-3 NPO失敗理論(NPO Failure Theory)
NPOと政府の関係をより良く説明する理論としてNPO失敗理論が挙げられる(Salamon)。NPO失敗理論は政府失敗理論を違った角度から見た理論である。即ち、政府をNGOが失敗した分野に対する代案的手段として理解するのがNPO失敗理論である。多くの場合政府が不足する公共財を供給するために払う取引費用は，NGOが払う費用より大きいと言える。
政府が特定の領域に介入するためには、まず問題の認識と法律の整備、国民の大半が認定する政策プログラムの策定、予算の確保をしなければならない。反面、NPOの場合は、意志を持つ少数の人間が外部からの支援有無や制度化などに関わらず政府より迅速に介入できる。従って、市場の失敗が存在する場合、NPOは政府より迅速に介入できる。
特に、その問題が局地的に発生したとすると、政府よりはNPOによる問題解決がより効果的である。そして、政府の介入はNPOの活動が失敗した場合や不十分である時行われる。例えば、非営利団体による財閥監視や統制はNPOが迅速的に問題を認識し、社会議題化できるが、NPO組織の能力、情報、そして、制裁手段の限界のため政府がその役割を受け取ることも有り得る。このような観点から把握すると、政府の介入はNPOを代置するのではなく補完することとなる。
Salamonは政府の介入を招くNPOの失敗には次のようなことがあると分析している｡ 第一は、博愛的不十分性(philanthropic
insufficiency)で、NGOが自分の活動のために必要な資源を安定的で持続的に得ることが難しいというものである。まず、NPOは内・外部に対する強制性がないため十分な量の資源を確保することが困難であることであり、部分的には無賃乗車の問題でもある。そして、社会の経済景気の浮沈に多大な影響を受けることと､ 活動する地域と支援者が多い地域とが異なる場合が大半であるということである。
第二は、博愛的排他主義(philanthropic
particularism)を挙げられる。NPOが提供するサービスはサービスを必要とする全対象に伝達することは無いということである。特定の宗教、人種団体などを背景にしているNPOは活動の領域とサービス供給の対象が限定されている場合が多い。そして、支援が必要な対象より支援を当然のことのように思う対象に支援する傾向があるので政府の介入を必要とする。これは資源の浪費とも繋がる場合がある。
NPOの介入は社会的需要だけではなく共同体的或いは個人的自尊心と関連する場合が多く見られる。その結果、各集団は他に同じ目的をもっている団体があるのにも関わらず自分の団体を持とうとして、類似のサービスを提供する組織の乱立を招き資源の浪費を齎す可能性もある。
第三は、博愛的温情主義(philanthropic
paternalism)である。NPOの活動内容と方式を決定するのは、そのNPOに最も多い資源を供給する個人或いは集団の決定によって左右されるということである。慈善団体から唯一の財源を供給して貰っているNPOの場合，何を、誰に奉仕するのかに対する決定は，全的にその慈善団体の恣意的決定によって決まることを想定できるのである。その結果、NPOの活動はNPOが奉仕する対象の選好を反映するのではなく、資源提供者である慈善団体の意思に従う結果を齎す可能性がある。
反面，政府の支援は民主的手続きを経て社会全体の選好を反映した結果であるので恣意性が少なくなる。従って，政府と協調関係にあるNPOはその活動と方式において公益を実現する可能性が高くなると言える。
博愛的アマチュアリズム(philanthropic
amateurism)もNPOの失敗の原因として指摘されている。社会問題の解決やサービスの提供は専門的知識を必要とする場合が多く，道徳的、宗教的信念に基づいた一般的援助は限界を持っている。例えば，職業教育や医療、無料法律サービスの提供などは園分野の専門家の助けを必要とするが，NPOの場合は，専門の人力を自発的参与やボランティアで一部は提供できても，不十分な財源からそのサービスを持続的に，十分に提供することは難しい[17]。
このようなNPOの失敗は政府の介入によって解決することができる。政府は社会的強制性を基に安定性，持続性を持って社会問題の解決に必要な資源を動員，民主的手続きによってイッシュ間の相対的重要性を決定、サービスの質を統制する基準を制度化することができる。このような政府の公共財供給においての長所は，NPOの長所と相互補完的協力関係を維持することによって効果的公共財の供給を可能にする[18]。
3-2 政府- NPO関係に関する新たな理論的接近
3-2-1 政府-NPO関係理論
Gidron外はNPOと政府間の複雑な関係を説明する概念として, 財政の供給・承認(financing & authorization)の主体とサービスの供給主体(service
provision)を挙げて，この二つの要因によって政府-NGO関係を政府主導型，第3セクター主導型，二元型，協同型の四つの類型に区分する＜表３－１＞。
＜表３－１＞ NPOと政府の関係
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機能 |
政府主導 (Government Dominant) |
重畳 (Dual) |
相互協同 (Collaboration) |
NGO主導 (Third Sector Dominant) |
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財政 (Finance) |
政府 (Government) |
政府 (Government/ NPO) |
政府 (Government) |
NPO (Third Sector) |
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サービス 供給 (Provision) |
政府 (Government) |
政府 (Government/ NPO) |
NPO (Third Sector) |
NPO (Third Sector) |
資料:Gidron 外，op.cit., p18を再構成．
3-2-3 Costonの政府-NPO関係理論
Costonは政府- NPO関係において政府のNPO政策を重要視し，NPOの制度化の可否，政府が制度的多元主義を認定した場合存在する対称的、非対称的権力関係の可否などの要因を活用し分析している。＜図―2＞のように，Costonは，政府-NPO関係の類型を政府のNPOへの接近，即ち，制度的多元主義に対する政府の受容或いは拒否の観点から抑圧型(repression)，対抗型(rivalry)，競争型(competition)，用役型(contracting)，第3者政府型(third-party
government)，協力型(cooperative)，補充型(complementary)，共助型(collaborative)等八つの類型に区分している｡
しかし、CostonのNPO-政府関係理論は政府との関係においてNPO部門の自発的で独立的役割を過小評価している｡ そして、政府がNPOに対して取る対称的或いは非対称的関係と、政府の対NGO政策の範囲と強度によって関係を設定している。従って，各制度圏を独立的客体として捉えて相互作用の関係を説明変数で説明しようとする具体的努力が必要であると考えられる。
＜図―2＞CostonによるNPO-政府関係の八つの類型
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資料：Coston，op.cit., 1998．
3-2-4資源依存模型による政府-NGO関係
本研究ではNPOと政府間の基本的関係が両者間の対称的資源交換関係から発生すると仮定して論議の焦点を組織間の関係分析を中心に個別組織間の関係或いは組織集合的観点から見るのではなく、NPOと政府部門を単一の行為者の観点から見る[19]。
NPO -政府の関係を資源依存模型の観点から観察する際、組織間の資源依存模型の観点から見る。組織間の相互依存関係は，組織間の資源交換によって形成され、Ａ組織のＢ組織に対する依存度はＢ組織がＡ組織に提供する資源の重要性と資源の代替可能性によって決定される。この組織間の資源依存度類型は<表―２>で整理する。
<表―２＞Ｂ組織のＡ組織の依存度決定要因[20]
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Ｂ組織がＡ組織に提供する |
資源の重要性 |
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高 |
低 |
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資源の代替可能性 |
低 |
高い依存関係 |
低い依存関係 |
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高 |
低い依存関係 |
独立的関係 |
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資料：Scarp(1978), p355を修正.
従って，Ｂ組織の提供する資源が重要であり，その資源の代替可能性が低いほどＡ組織のＢ組織に対する依存度が高いと言える。反対に，提供する資源の重要性が低く代替が可能であれば独立的関係であると言えるのである。そして，資源が他の通路によって提供できて，資源の重要性が低い場合は他の組織に対する依存度は低いと判断できるので，このような接近法は，組織が保有する戦略的資源が相手の組織及ぼす影響を中心に分析をする方法である。
このような観点から組織間の相互依存関係の類型は ＜表-３＞の組織間の相互依存度決定要因を中心に四つの類型に整理できる。
＜表―３＞ 組織間の相互依存関係の類型[21]
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類 型 |
Ａ組織に対するＢ組織の依存度 |
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高 |
低 |
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Ｂ組織に対するＡ組織の依存度 |
低 |
相互依存型 |
一方的依存関係 |
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高 |
一般的依存関係 |
相互独立型 |
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資料：Scarp(1978), p356.
本研究では、政府-NPO関係を対称的観点から接近しているが、それは政府とNPO間では相互補完或いは依存関係が存在すると見るからである｡[22] 政府の機能の短所はNPOによって、NPOの機能の短所は政府によって補完が可能である。政府は民主主義において手続きの正当性を優先し、サ-ビスの品質管理基準設定を通じてサービスの質の向上を図り、特権の擁護より国民の権利を重視する。従って、NPOの排他的家父長主義を補完、そしてより信頼できる資源と財源調達の経路を確保できる。
そのように、NPOもサービスの供給を特定の公共需要に一致させて政府の広範囲に渡る官僚的活動より小規模の活動ができるので、必要な公的組織の規模を縮小し、政府組織の官僚的活動より顧客の需要と要請を充足させる方向に調整する長所を持っている。