2003年度森基金研究成果報告
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 修士2年 80232411 永田 幸



<研究の題目>
「SSを活用した地域エネルギー需給の自律に関する考察」

<研究の経過>
  研究の経過であるが、当初の研究計画においては、石油会社のSS(サービスステーション)を中心とした一定領域に太陽光発電や定置式燃料電池を大量に普及させ、その領域内での電力の過不足を相互融通する“ルーター”としての機能をSSに持たせることを想定していた。

<当初想定したイメージ>(PDFファイル)

しかしながら、第1回ヒヤリング調査(2003年6月21日に実施)、フィールド調査(2003年7月4日から7日まで)、GISを用いたSSの空間分布の把握を通して、SSの活用は、以下「都市活動実態からみた分散型電源導入の可能性評価」の研究の成果から明らかとなる電力クラスターを成立させるための一手段に過ぎないことが明らかとなった。そこで、本研究の成果として報告するのは、都市活動実態に基づいた電力需給バランスのシミュレーションを行い、電力クラスターの成立条件を定量的かつ具体的に考察したものとする。その中で、電力クラスターがSSを中心とした一定領域でも実現可能であることを指摘した。また、都市活動実態に基づいたシミュレーションの結果に基づいて、分散型電源の導入に関する意識調査を第2回ヒヤリング調査を行い、「分散型電源導入への“関心”の高さは指摘できたが、導入の“意向”は極めて低い」ことが明らかとなっている。



<報告する研究成果のテーマ>
「都市活動実態からみた分散型電源導入の可能性評価
〜世田谷区における電力クラスターの成立条件の考察と政策への展開〜」

<研究成果の概要>
 世田谷区の都市活動実態に基づいて、分散型電源の大量導入を可能にする電力クラスターの成立条件を考察した。電力クラスターとは、電力の生産・消費・貯蔵・配給を行う要素からなる地域的な「塊」であり、自給を基本としクラスター内で電力の相互融通を行うものである。本研究では、町丁目をひとつの電力クラスターとみたてて、太陽光発電システムと定置式燃料電池を普及させ、その自給をガスタービンで支援することを想定した。電力需給バランス評価システムを構築し、2,5,8月の24時間単位の需給バランスの把握を通して、電力クラスターの成立に向けた課題を抽出した。電力クラスターの成立条件を(1)電力の需給バランスがとれる、(2)系統電力システムよりも二酸化炭素の排出量が少なくなる、(3)燃料電池の熱は設置した需要家によってすべて消費されるとするならば、(A)太陽光発電が限界普及量まで普及し、延べ床面積に占める屋上面積が広く、(B)体積率(延べ床面積/建築面積)の低いことが必要となる。電力クラスターのコンセプトの実現には、太陽電池の劇的な高効率化が要求され、都市の更新を視野に入れるならば、壁面設置型、窓一体型、塗布型の太陽光発電システムの開発・実用化を促進する必要がある。また、都市部の住宅地でのポテンシャルが確認されたことにより、日照の確保できる季節変化が小さい地域での導入可能性を追求していく必要がある。なお、電力クラスターの成立によって、最大31%の二酸化炭素排出量の削減が可能となった。また、電力クラスターは、町丁目単位のみならず、石油会社のSSや公共建物などを中心とした一定領域、島嶼、新興住宅地、大規模再開発エリアなども考えられる。

<研究成果報告(参考資料)>(PDFファイル)


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