2003年森泰吉郎記念活動報告書

企業とNPOが共同事業を行う際の阻害要因・促進要因の分析研究

政策・メディア研究科 ネットワークコミュニティ 修士1年
松田 剛
学籍番号:80332511
E-mail :tsuyoma@sfc.keio.ac.jp


研 究概要




近年、企業とNPO が共同事業を模索するケースは珍しくない。しかし、その一方で実際に事業化にまで

至ったケースはあまり多くはない。ではなぜ企業とNPOが協働事業を検討しているにも関わらず事業家の

途中で頓挫してしまうのか、その要因の調査研究を行う。調査対象を大企業に絞り、過去から現在までの

NPO との協働事業の取組み状況を調査する。その際の阻害要因と促進要因を調査し細分化していく。そ

の後これらの要素を仮説として捕らえ、NPO と企業のマッチングを実社会で行っていく。マッチングを行う

フィールドを「コラボ」(現在企業とNPO が40団体加盟している組織体である。双方が協働事業を模索し

ており事業機会を検討している)におき実証研究を行っていく。私自身が、この「コラボ」のスタッフである

ため、仮説を実社会で検証していけるという意義は大いにあるものと考えられる

研 究活動


 <企業とNPOの協働に関する研究活動>

 企業がNPOと協働を行う際に必要となる情報は何か、実証研究を交えながら研究活動を行ってきた。

 現在、T社(秘密保持契約締結先のため現時点ではT社としている)と共同研究(コラボプロジェクト※1)を行い

 NPOの選定基準作りを行っている。対象NPOを東京都23区(1894団体/2003年5月末時点)に絞り、

 協働できるNPOがどの程度あるのか、NPOの現状認識を行うための概要調査を行っている。

 現在は、新規事業の仮説を作りあげ、実際にNPOとの協働を行うための最終案を作成している段階である。

また、企業とのコラボレーションの実証実験と並行して、全国の協働事例を調査した。

北海道での調査や静岡、名古屋での調査、関西での調査をメインに行った。

 今後は、さらに視野を広げるために文献購読を行うと共に、様々な分野の人たちとの交流を深めていく。

 その他、企業とNPOの協働事業事例を調査すると共に、企業・NPOへのインタビューを実施していく。



研 究活動実績


■北海道での調査(9月14日〜9月27日)

北海道にて全国NPOフォーラムが開催されたため参加し、講演や事例報告を確認してきた。

特に、本フォーラムではNPOの資金調達に関するセミナーに参加し、情報収集を行ってきた。

参加団体も数十団体あり、日本全国の「NPOの資金調達」に関する報告がなされた。

その中でも、企業からの援助も多数あり、本研究においても大変参考になるものとなった。


また、実際の企業とNPOの調査も同時に行った。

対象企業: 札幌通運

対象NPO : 飛んでけ!車いす

【札幌通運が運送会社の特色を活かして、車いすの運送と保管を担当し、海外旅行者の手で

ベトナムをはじめとしたアジア諸国の障害者に直接届けるというユニークなシステムによって成功した事業である】



■静岡県での調査(9月5日〜9月8日)

実際の企業とNPOの協働に関する調査を行った。

対象企業: 東芝

対象NPO : アクションシニアタンク

【公共施設の地図情報を携帯電話を通してインターネットで提供する事業を東芝の協力を得て企画実行した。

特に、交通弱者といわれる老人や子供、障害者の方々に安心で安全な街を提供するために本事業を計画した】



■愛知県での調査(9月8日〜9月10日)

実際の企業とNPOの協働に関する調査を行った。

対象企業: デンソー

対象NPO : パンドラの会

【障害者の自立を目的に設立された「パンドラの会」が販路を拡大するために、当地域でNPOの活動に理解のある

デンソーの社内での販売を実施するに至った経緯等を調査した。】



■東京都での調査(9月25日)

実際の企業とNPOの協働に関する調査を行った。

対象企業: NEC

対象NPO : 環境文明21

【NECの「企業の社会的責任」の表現方法として、環境報告書を検討していたが、単なる社会貢献的な報告書ではなく

本質を突いた(環境経営)報告書を作成するために、NPOと協働し実際に作成された事例を調査した】



■兵庫県での調査(1月10日〜1月12日)(

NPOへの融資に関して調査を行った。

対象企業: 国民生活金融公庫(神戸支店)

【実際のNPOへの融資スタンスや実際のNPOへの融資状況を調査した。その他、関西の経済状況についても調査を行った。】



※その他、多数のフォーラムや市民活動に参加をしてきた。


研 究会活動


04/17(木)    森基金作成・発表

04/21(月)    森基金作成・発表

04/24(月)   「援助と社会関係資本〜序章」・「ボランタリー経済の誕生〜第3章」

05/08(木)   「哲学する民主主義」第1章発表

05/15(木)   「哲学する民主主義」第2章

05/22(木)   「哲学する民主主義」第3章

05/29(木)   「哲学する民主主義」第4章発表

06/05(木)   「哲学する民主主義」第5章

06/12(木)   「哲学する民主主義」第6章

06/19(木)   「Foundations of Social Theory」・「シビックコミュニティー論」発表

06/26(木)   「Social Capital」・「American Political Science Review」

07/03(木)   「ソーシャルキャピタル内閣府調査」&個人研究発表

07/10(木)    個人研究発表

09/25(木)    「ノース制度論」輪読

10/02(木)    「ノース制度論」輪読

10/09(木)    「ノース制度論」輪読

10/16(木)    「現代の2都物語」輪読

10/23(木)    「組織の限界」輪読

10/30(木)    「組織の限界」輪読

11/06(木)    「ネットワーク組織論」輪読

11/13(木)    「個人研究」発表

11/27(木)    「個人研究」発表

12/04(木)    「交換と権力」輪読

12/11(木)    「交換と権力」発表

12/18(木)    「ヒューマンサービスと信頼」輪読

01/15(木)    「個人研究」発表


参 考文献・資料


■文献

「哲学する民主主義」・「援助と社会関係資本〜序章」・「ボランタリー経済の誕生」

「Foundations of Social Theory」・「シビックコミュニティー論」「Social Capital」

「American Political Science Review」・「NPOと企業〜協働へのチャレンジ〜」

「成功するNPO・失敗するNPO」・「暮らしにみる企業の社会貢献」



■資料

「ソーシャルキャピタル内閣府調査」・「社会貢献活動団体との協働マニュアル」

「東京都市民活動団体基礎調査」・「ボランティア/NPO活動促進のための協働に関する提言」


                                     以上