2003年度 森泰吉郎記念研究振興基金 報告書

時間的因果関係を扱う動的な文脈解釈を伴った意味的連想検索方式の実現

政策・メディア研究科博士課程 1 年
鷹野 孝典 miu@mdbl.sfc.keio.ac.jp
80366412
※「意味的検索空間統合プロセスの実現についての研究」は, 提案方式について,実現可能性,および有効性を検証する評価実験を,より精度 よく行う必要がるため,当初と予定を変更し,本研究成果を発表することをご了承 下さい.

本研究の概要を1.に述べる. 本研究の成果として, ワークショップでの学会発表[1] ,修士論文[2], および共著者として[3]の論文発表を行った.

1. 概要

検索者の与える検索語を1つの事象としてとらえることが可能な領域を対象として, 事象間の因果関係を扱う意味的連想検索方式を示す.本方式の実現により,検索者 の与える事象に因果関係のある事象について記述された文書データを検索すること が可能となる.本稿では,宇宙工学分野における不具合事象を対象とした意味的検 索空間を生成し,擬似的な文書データを用いた実験により,提案方式の有効性を明 らかにする.

We discuss a semantic associative search method with temporal cause-and-effect relationship between events. The method is used for the domain in which a query given by a user can be regarded as an event. The method enables to retrieve a document data set having the relationship with a query. We created a semantic search space for the space engineering field and clarify effectiveness of the method by an experiment using a dummy document data set.

>>本文(研究成果[1]) pdf

2. 研究背景

研究背景を下図に示す.

3. 提案方式の特徴

提案方式の特徴は,検索対象メディアデータおよび問合せ語のベクトルについて, 事象群の因果関係を表現する特徴語群の中から,原因のみに関係する特徴語を設定 したベクトル(原因ベクトル)と結果のみに関係する特徴語を設定したベクトル (結果ベクトル)とに,それぞれ区別して形成しておき,検索目的に応じて, 検索対象メディアデータおよび問合せ語のベクトルについて原因ベクトル/結果 ベクトルの組合せを決定し,ベクトル間の相関量計算を行なう点である.


具体的には,ある事象の原因について検索する目的の場合には,問合せ語として, 問合せ語の「原因ベクトル」を用い,検索対象メディアデータとして,検索対象 メディアデータの「結果ベクトル」を用いて,両者のベクトルの相関量を計量する. この結果,検索語として入力した事象について,原因となる事象について記述され たメディアデータの検索が可能になる.また,ある事象の結果について検索する目 的の場合には,問合せ語として,問合せ語の「結果ベクトル」を用い,検索対象メ ディアデータとして,検索対象メディアデータの「原因ベクトル」を用いて,両者 のベクトルの相関量を計量する.この結果,検索語として入力した事象について, 結果となる事象について記述されたメディアデータの検索が可能になる.


4. 提案方式のモデル

提案する時間的因果関係を扱うベクトル空間生成方式のモデルを下図に示す.




5. 今後の予定

  • 大量の実事象データ・文書データを対象とした,有効性評価実験を行う.
  • 知識発見方法としての文書クラスタリング/マイニング技術への適用を行う.
  • 因果関係を計量するベクトル空間を用いた因果関係分析技術の提案を行う.

    6. 研究成果

    [1]鷹野 孝典,図子泰三,清木 康,但田 育直,波内 みさ: ``時間的因果関係を扱う動的な文脈解釈を伴った意味的連想検索方式の実現,'' 情報処理学会研究報告, 2003-DBS-131, pp.483-489, July, 2003.
    [2]鷹野孝典: ``時間的因果関係を扱う意味的連想検索方式の信頼・安全性情報への応用に関する研究,'' 修士論文 (TM@2003@1221), July, 2003.
    [3]図子 泰三,鷹野 孝典,清木 康: ``事象データ群の時間因果関係を扱う意味的連想検索方式,'' 情報処理学会研究報告, 2003-DBS-130, pp.71-77, May, 2003.