2004年度 森泰吉郎記念研究振興基金 研究報告書

 

インターネットを利用した「知」の共有と新しい大学教育

 

井上 理穂子*

*慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程

 

 

1.1.研究の概要

 森基金の助成により行わせて頂いた研究の概要について述べる。

インターネットを利用した「知」の共有と新しい大学教育という題目で研究費を頂いた。大学教育におけるインターネットを利用した「知」の共有の具体的事例を分析し、大学教育における「知」の共有の現状を明らかにした。近年、大学教育は、単位発行、学位発行、社会人教育、市民講座などのあらゆる役割を果たす(大学教育の多様化)ようになり、「知」の共有も、有料で行っていく例、広く一般の人々に完全なる無料で共有を促す例など様々であった。そのため、一般的なモデルを構築することは難しいことが分かった。また、それらの問題の中心には、著作権問題があり、法律や社会制度の整備が必要であることは明確であるが、大学教育の多様化などから、統一的な解決策は取ることが難しいことが分かった。

そこで、教育の範囲を狭め、さらに著作権問題についても限定的なデジタルコンテンツの種類を扱うことを考えた。著作権者と利用者の利益バランスを考慮した、初等中等教育におけるストリーミングコンテンツ配信・利用モデルを検討した。ストリーミングコンテンツの初等中等教育における利用の有効性や、ストリーミングコンテンツの著作権法上の位置づけなどを明らかにし、さらに、既存のデジタルコンテンツ配信・利用システムの要求要件を検討し、モデルの要求要件を明らかにした。

 

2.2.主な研究成果

【学術論文(査読付)】

・井上理穂子「初等中等教育におけるストリーミングコンテンツ配信・利用モデル〜著作権者と利用者の利益バランスを考慮して〜」を日本教育工学会論文誌に投稿中

「初等中等教育におけるストリーミングコンテンツ配信・利用モデル〜著作権者と利用者の利益バランスを考慮して〜」

 

【学会発表】

・井上理穂子 日本教育工学会 第20回大会 2004925

e-learningにおける第三者著作物利用に関する考察     著作権法におけるストリーミングとダウンロード ─」

 

【その他の口頭発表】

Masahiro Yachi, Rihoko Inoue “Streaming contents Utilization model for educational purposes” The 21st Century COE Program “Next Generation Media and Intelligent Social Infrastructure”, Keio University International Workshop on “Collaborate! In search for Intelligent Social Infrastructure” 2005.1.28 East Research Bldg., Mita Campus, Keio University

 

【書籍など】

・慶應義塾大学出版会より「現代社会と著作権法――デジタル・ネットワーク社会の知的財産権」20054月刊行予定、第4章 Eラーニングにおける第三者著作物利用に関する考察 を 執筆