2004年度
森泰吉郎記念研究振興資金 研究者育成費 研究成果報告書


- - - 研究申請プロジェクト - - -
研究課題名:地方政治システムのリソースとパートナーシップ概念の関係について
氏名:中田 雄介
所属:政策・メディア研究科 修士課程 (政策形成と電子政府プログラム)



森泰吉郎記念研究振興資金から助成を受けた本研究は、その調査分析の結果を、
「政策過程における市民活動団体と行政との協働の地域間比較分析
−東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県内の市区を対象にして−」
(慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 修士論文)としてまとめた。


1.研究の概要
本研究の目的は、市民活動団体と行政の協働関係について、住民属性や産業構成の異なる地
域間に差異はあるのか、また行政の開放性の度合いが異なる地域間に差異はあるのか検証す
ることである。そして地域間に差異が確認された場合、その差異を縮小するための方策を提示す
することにある。
そのため本研究では1都3県の政令指定都市を除く市と特別区を調査対象の母集団とし、高齢者
在宅福祉政策と児童福祉(子育て支援)政策について、どのような要因が市民活動団対と行政との
の協働関係に影響を及ぼしているのか調査を行った。また本研究では住民属性や産業構成など
の地域特性により地方自治体を分類し、地域環境の異なる3地域カテゴリーについて、市民活動
団体と行政の協働関係の調査を行った。さらに行政の市民参加施策の導入・検討状況を指標化し
た行政の開放性の高低により、市民活動団体と行政の関係に差異はあるのか比較分析を行った。


2.研究の枠組み
NPO法人等の市民活動団体の活動が盛んである福祉分野のうち、潜在的な受益者規模が地域
ごとに予測することができる高齢者在宅福祉、児童福祉の2政策分野を対象とし、当該領域におけ
る市民活動団体と行政との協働を調査した。
また地域特性に多くの差異があることが明らかな場合、地域間の比較調査を行うことは困難であ
るとともに、恣意的な結果しか得られないと考えられる。そのため同一都道府県内あるいは同一
圏内の地域を調査対象とし、それらの調査対象を地域環境の類似性から分類し、限定的な差異
についてその影響を比較することが調査方法としては望ましいと考えられる。そこで本研究では地
域特性の極端な差異を排除しつつ、かつ比較枠組みを計量的に構築するためには一定量の調査
対象自治体が必要なことから、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の政令指定都市と町村を除く
市と特別区を母集団とし、統計的に地方自治体の地域分類を行った。そして類似の地域環境を有
する地方自治体ごとに7つの地域カテゴリーに分類した。さらに、地方自治体の開放性が高まれば、
市民活動団体と行政の協力関係が深まるということを論じるため、政治的機会構造という概念を援
用することにし、本研究では政治的機会構造として、行政の市民参加施策の累積性を指標とした。


3.研究結果
調査分析の結果、高齢者在宅福祉政策における市民活動団体と行政との協働について、地域分
類、行政の開放性の高低による統計的に有意な差異が確認され、一方、児童福祉(子育て支援)
領域では、地域カテゴリー間の差異は確認されず、行政の開放性の高低による差異のみが確認
された。そしてこのことから、行政の開放性が政治的機会構造として市民活動団体の市政参加を
促すことにより、地域間の差異の縮小を図ることの可能なことが示唆された。また高齢者在宅福祉
分野では過去の革新市政の影響が確認されたことから、過去の福祉や参加に関する政治文化の
経路依存的な影響が地域差を生み出していると考えられるとともに、児童福祉(子育て支援)分野
では、財政的硬直性や財政的な自由度の高さが協働を促すわけではないことが明らかとなった。
さらに協働事業の事例調査を通じ、市民活動団体が地区に密着した活動を行いつつ行政との関
係を深めるためには、市民活動団体の複合体としてのネットワーク団体の活動だけでなく、行政
担当部課が庁内で連携し、政策領域を超えた市民活動団体間の交流や連携を促す必要性が浮
かび上がった。


4.研究助成金の活用方法
森基金から受けた助成をもとに、本研究では86自治体を対象とするアンケート調査を実施した。
以下がその調査の概要である。
----アンケート調査の概要----
・調査対象自治体
1都3県の政令指定都市・町村を除く、市と特別区について、統計分析から全7地域カテゴリーに
地域を分類し、本調査では特にそのうち3地域カテゴリー(86自治体)についてアンケート調査を実施した。
地域カテゴリー(1):42自治体
  地域カテゴリー(2):25自治体
地域カテゴリー(3):19自治体

・調査対象領域
市政全般に関する点、高齢者在宅福祉政策分野、児童福祉(子育て支援)政策分野について、
地域内の市民活動団体と行政との協働に関する3つの調査票を作成し、担当部課の職員に
回答を依頼した。

・調査スケジュール
2004年 7月26日  調査票発送 (希望返却期限:8月13日)
2004年 8月23日  再依頼状(督促)発送