研究概要
コンピュータによる電子メールの普及が高まる中,コンピュータ初心者は,
いわゆるネチケットに反して,サイズの大きいファイルをそのまま添付してしまう問題が散見される.
本研究では,コンピュータユーザにファイルサイズをわかりやすく示す手法として、
水のメタファと実世界の操作感,そして重量感を与える外観を用いた新しい
情報表示化手法を提案する.コンピュータの利用者の間では,
大きいサイズのファイルを重いと表現することから,本研究では,
ファイルの大きさを「重さ」としての感覚に訴えるインタフェースを提案する.
また,一般に重いというときに,質量としての「重さ」と密度の大小としての「
重さ」があるが,本論文では,両者を区別せず「重さ」として使用する.
現実世界では,水の中で軽いものが浮き重いものが沈むことや、
軽いものは容易に移動でき,重いものは移動させるのに時間がかかることは
一般に広く知られている.そこで,水の中に浮遊しているような浮き沈みの
感覚を用いてデータの重さを表現し,さらにデータをドラッグする際にデータの
重さに応じた操作感覚を与えることでユーザにファイルの重さを伝える.
本論文では,はじめに,より明確な重量感をユーザに伝えるため重さを感じる
色彩表現や動きなどの実験を行い,さらに正規順位法を用いて分析を行った.
この結果を基に,現実世界の重量感を表現するメタファをパソコンの仮想空間に
取り入れることで,ユーザが感覚的にデータの重さを知ることができるシステム
"VisualWeight"を実装した(図1).
さらに,実装に基づき仮想空間で重量感を表現するのに適した方法を
探るため実験を行い,仮想空間で重量感を表現するのに効果的な方法を
追求した.仮想空間にて重量感を表現するのに適した方法としては
ドラッグ速度などの操作に関する行為を制御することが有効であるという
結論を得た.また,VisualWeightの表現が,被験者にとって従来の数値を
用いたデータの重さの表現よりわかりやすく,メールにおけるファイル添付
などのデータ転送のときに重いファイルの送信を思いとどまらせる
効果があることを確認した.