2004年度森基金研究成果報告

- 藤沢市遠藤笹窪谷戸における水域環境の現状分析および提案 -
政策・メディア研究科1年(80425735)柳谷牧子


    1. はじめに
    2. 年度始めに模索していたテーマを改良しながらテーマを決定し、さらに調査手法の検討、実際の調査を行った。


    3. 研究テーマ
    4. 水環境を調査するにあたり、春学期は水域における空間および時間的複雑性に着目したのだが、
      これは修士の2年間といったタイムスパンではとても計測しきれるものではないと考えた。
      そこで生物面・物理面・化学面から水系を捉え、谷戸内の水域に関する類型化を行い、
      これに周辺の土地利用や気象・斜面林の構成データを併せていくことで、
      水域を保全するための管理・開発について考察していきたいと考えた。。


    5. 調査手法の検討
    6. 対象フィールドの細流に7つのステーションを設け、それぞれのステーションごとに以下の調査を行っている。
      3-1.化学的調査
      月に3回行い、以下の水質項目を計測する。尚、資材・実験室に関しては日本大学海洋環境学研究室のご協力を頂いている。
      ・水温(比色法)
      ・pH(ガラス電極法)
      ・TC/IC/TOC(比色法)
      ・TN(比色法)
      ・COD(滴定法)
      ・栄養塩(比色法)

      3-2.物理的調査
      月に3回行い、以下の項目について調査する。
      ・水深
      ・水路幅
      ・底質(10段階評価)
      ・瀬と淵の構造(10段階評価)
      ・護岸形態
      ・流速・流量→流速と水路幅、水深から算出

      3-3.生物調査
      1ステーション10回づつ底質を網で救い、見られた生物を記録する。月に1度調査する。
      水域内・護岸の植生については被度と優先種について月3回調査を行う。
      人為的影響の有無についても4段階評価で月3回行う。

      またこれらに必要な調査記録用紙を作成した。


    7. 調査データ収集
    8. 対象フィールドにおいての水域の分布把握
      これにより、笹窪谷戸には一般的な谷戸地形に存在する斜面林と谷底部の境に流れる細流が一部見られない箇所があることがわかった。
      また、周辺住宅地の雨水がパイプで谷戸内と通過していることがわかった。

      相観植生調査
      まだ途中であるが、現在のところまでからでもモウソウチク林が広範囲に分布し、落葉広葉樹が衰退していることが確認できた。
      水質調査
      11月のプレ調査を踏まえ、本調査を12月2日からスタートさせた。1/30現在6回の調査が終了している。
      まだ調査回数が少ないため本格的な分析は行っていないが、有機物は少ないが栄養塩の値が非常に高いと推測される。
      またCODの値が低すぎるため、計測しても測定誤差の範囲と考えられ、有効な解析ができないと思われること、
      無機物の計測結果から有機物の値も計測できることから、CODを計測することのコストパフォーマンスは低いと考えている。
      一方、流速の非常に遅い2つのステーションが確認でき、これらのステーションのDOを一度計測してみる必要性や、
      底質と水質の関係性について考えていく必要が有る。以上から、調査項目の見直しも考えているところである。



      図1:水温の変動


      図2:pHの変動


      図3:TCの変動


      図4:ICの変動


      図5:TOCの変動


      図6:CODの変動

    9. 春休みおよび来学期について
    10. 時系列データを継続的にとっていくとともに、気象・周辺土地利用などのデータと水域のデータをどのように統合させていくか
      文献を調べていく。
      また、相観植生図を完成させる。


    11. 参考文献

    12. ・田中正 (1985) アキアカネの移動. インセクト 36(1):1-9
      ・高橋雄一 (1987) アカトンボ属の生態をめぐって. 東北の自然 27:8-10
      ・上田哲行 (1988) アキアカネの生活史の多様性. 石川県農業短期大学研究報告 18:98-109
      ・平松晋也, 石川芳治 , 水山高久(1991) 山腹斜面における雨水の挙動と数値モデルによる再現性に関する研究. 砂防学会誌 44(1):21-30
      ・NAKAYAMA T, WATANABE M, MURAKAMI S, WANG Q, HAYASHI S (2002) Simulation of Drying Phenomena Associated with Vegetation Change by Using NICE Model in the Kushiro Mire. CGER's Supercomput Act Rep 11:105-118
      ・柳田達雄 (2004) 河川の流れ形態変化のシミュレーション. 理論応用力学講演会論文集 (53):341-342
      ・有村玄洋 (1984) 黒ボク水田転換畑の畑地化における2・3の物理的特徴. 茨城県農業試験場研究報告 75:18-19
      ・平山力 (1987) 霞ケ浦周辺干拓地土壌の改良に関する研究 VI 高浜入底土の乾燥化と理化学性の変化. 茨城県農業試験場研究報告 27:81-89
      ・橘治国,南出美奈子,川村哲司,堀田暁子 (1995) 湿原環境と地下水水質. 寒地技術論文・報告集 11:216-221
      ・西川洋子,宮木雅美,堀繁久 (1996) サロベツ湿原における25年間の湿原面積減少の状況. 北海道環境科学研究センター所報 23:92-93
      ・西川洋子, 宮木雅美, 堀繁久 (1997) 学術自然保護地区「上美唄湿原」の乾燥化と植生の復元. 北海道環境科学研究センター所報 24:93-94
      ・大橋唯太 ,木田秀次 (2002) 複数の都市で発達する局地循環と郊外の乾燥化現象の関係. 日本気象学会大会講演予稿集 1(82):303
      ・川鍋礼子,高橋英紀 (2003) 北海道北部稚咲内砂丘帯周辺の土地利用変化と湖沼群野消長. 北海道の農業気象 55:29-41
      ・名久井孝史,清水康行,藤田隆保 (2003) 釧路湿原における河川氾濫に伴う土砂堆積と乾燥化現象の関連性に関する研究. 水工学論文集 47:907-912
      ・宇野剛(2002) ヒートアイランド強度算出に使われる気象観測点周辺の局地的温度分布. 日本気象学会大会講演予稿集 1(82):302
      ・池田昌弘, 松波克洋,藤田龍之,知野泰明 (2003) 郡山の都市形成過程とため池の現状に関する調査. 土木史研究講演集 23:119-124