2004年度 森基金報告書

研究課題名:コミュニティサイト調査分析システム開発

テクスト意味空間分析システム開発

大学院プロジェクト「ソシオセマンティクス工房」(深谷研究会)では現在、SFCにおいて文部科学省の21世紀COEプログラムに採択された「日本・アジアにおける総合政策学先導拠点」の研究グループとして資金援助を受け、Web社会調査法の開発に重点を置きながら活動を行っている。2004年度は「テキスト意味空間分析システム」のメジャーバージョンアップのための設計開発を軸として活動を進めた。

「テキスト意味空間分析システム」とは、文法理論に基づく意味のまとまりをテキストデータから抽出し、統計処理を行う、自然言語処理技術を用いた新しいテキストマイニングツールである。テキストデータからの分析作業は最終的には分析者の解釈によるものとなるが、そういった分析者の解釈を体系化すること、利便化することを本システムの目的としている。活動としては、毎週火曜日に富士ゼロックス研究所(FX PAL JAPAN)から研究者を招いての定例ミーティングを実施し、深谷教授、および院生・学部生を含むプロジェクト参加者全員と、企画・要求分析・設計・実装・事例分析・プロジェクト進行管理を含む打ち合わせを行っている。2004年度はバージョンを刷新したバージョン2の設計を一からやり直し、プロトタイプの実装までに至った。秋には、「SFC OPEN RESEARCH FORUM 2004(ORF2004)」において成果発表を行い、学術・ビジネスの各方面から多数の好評価とフィードバックを得、次期メジャーバージョンアップのバージョン3開発に向けた指針を得ることができた。

また、「テキスト意味空間分析システム」は開発中ではありつつも、2004年度中に様々な講義内において積極的にシステムの概要や蓄積された事例研究についての発表を行ってきた。深谷教授担当の「ソシオセマンティクス特論」および「概念構築K」、「コミュニケーションダイナミクス」、および「プロジェクト総合講座A(小島教授担当)」では体系的にシステムについての発表(発表資料)を行い、一定のフィードバックを得た。

また、学部研究プロジェクト(深谷研究会)においても、ソシオセマンティクス工房と合同するかたちでプロジェクトについての発表・議論を行ったほか、理論的な基礎付けとして、社会学における意味理論の文献輪読を進めて隔週で発表を行うワークショップを行った。

オンラインコミュニティに適した意味分析手法の開発

個人研究としては、「テキスト意味空間分析システム」を用いたオンラインコミュニティの分析と、オンラインコミュニティに適した意味分析手法としての、話題の連なりとしてのコメントチェーンの構造分析と意味内容分析とを融合した分析手法の開発をテーマとしている。

2004年度は、「ソシオセマンティクス特論」「概念構築K」の講義、および深谷研究会において、個人研究計画の改善とその発表を軸として個人研究活動を進めた。

また、2004年度はネットワーク上のコミュニティについての知見を広げるために、金子郁容教授の大学院プロジェクト「ネットワークコミュニティ」にも積極的な聴講参加を行った。ネットワーク型組織の成功の条件としての仮説である「ソーシャルキャピタル」という概念を初めて学んだが、パットナム、アロー、コールマンなどの基礎的文献を多く読み進め、ネットワーク型組織、あるいはコミュニティ型組織についての構造的、政治学的知見を広めることができた。