杉並区の敬老会館利用高齢者の社会活動と属性および心身の指標に関する研究
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 修士課程2年
80331727 医療福祉政策・経営プロジェクト 小坂淑子
研究要約
<研究目的>
本研究の目的は、杉並区における敬老会館利用高齢者の社会活動について、高齢者の基本属性および心身の指標を総合的に用いて実態把握と詳細な分析を行い、社会活動に影響する変数を検討し、杉並区の高齢者活動支援施策の資料とすることである。
<研究方法>
杉並区高齢者施策課および32箇所の敬老会館の協力を得て、訪問調査および留置法により320部のアンケートを配布し、286部を回収し、有効回答282部(有効回答率88.1%)を集計対象とした。分析は単純集計に加え相関分析と、重回帰分析A,Bを行った。また、数回にわたり敬老会館を訪問し利用者へのインタビューを行いデータの解釈に役立てた。
<分析結果>
1.
学習行動の平均得点が特に低く、重回帰モデルの説明力も非常に低い結果となった。
2.
経済的ゆとりは、主観的健康感・体力自己評価、ボランティア、国内旅行、市民講座・各種研修会・講演会に正の影響を与えているという結果になった。また、インタビュー調査より、「付き合いにかかる費用」がかかるということが聞かれた。
3.
教育年数は、多くの項目に負の影響を与えている。(町内会自治会、老人クラブ、趣味の会、ボランティア、スポーツ・運動、レクリエーション、近所づきあい、近所での買い物、近くの友人・友達・親戚訪問、お寺参り)しかし、学習行動には負の影響がないという結果になった。
4.
単身世帯は、主観的健康感・体力自己評価・経済的ゆとり、活動総合得点と負の相関関係にあるという結果になった。
5.
IADL(社会的役割)では、社会活動のうち、団体行動と個人行動が、IADL得点のなかでも最も低群率の高い「社会的役割」の項目にプラスの影響を与えていることが示唆された。
6.
体力自己評価については、今回の研究では、相関関係は全ての領域で有意に見つけられたものの、活動が体力自己評価与えるにプラスの影響のみ有意なβ値が表れた。
7.
SE尺度得点は、先行研究(青木2004)と異なり、負の影響を与えていた。
<本研究から得られた示唆>
・健康支援講座、単身世帯同士のつながりをつくるような集いを開くなどの策が考えられる