慶應義塾大学大学院 2004年度 森基金報告書

 

構造改革特区の研究 〜株式会社による病院経営参入問題を事例に〜

 

氏名:鈴木広崇

所属慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 修士課程1

 

1・今年度の研究進捗状況

 

 本研究は構造改革特別区域(以降、特区)に関する研究である。研究にあたっては株式会社による病院経営参入が何故見送られたのかを明らかにする。

 2004年度は本研究の1年目であることを鑑み、基礎的な情報の収集及びヒアリング調査に多くの時間を費やすことになった。特に(1)提案主体からの特区案提案とそれに対する各省庁による回答表の整理、(2)福島県でのヒアリング調査、(3)社団法人関係者へのヒアリング調査の3つが、本年度の研究作業の大部分を占めることとなった。

 

2・研究作業の内容

 

 先に述べたように、2004年度の研究作業は(1)提案主体からの特区案提案とそれに対する各省庁による回答表の整理、(2)福島県でのヒアリング調査、(3)社団法人関係者へのヒアリング調査の3つを柱に行った。

 (1)は構造改革特区推進室(以降、推進室)が同室のウェブページで発表している各種データを処理する作業である。推進室のページには自治体を中心とした提案主体から、具体的にどのような特区案が提案されているかの情報が公開されている。こうしたデータは、それら特区案に対する各省庁の回答(実施の可否等を含む)と並んで重要な一次情報となりうる。一方で提供されるデータはPDF形式のもので、そのままでは統計処理を含めたデータ処理が難しい。よって提供されるPDFデータをExcel形式へ変換する作業を行った。データ変換の作業にも一定のめどが立ったことから、2005年度以降はデータ処理によって明らかになった特徴をもとに、本格的な研究が進められるものと期待している。

 (2)は福島県福島市を中心に行ったヒアリング調査である。本研究の主目的の1つが病院経営を巡る民間参入の是非であることから、病院関係者へのヒアリングを重点的に行った。ヒアリングにあたっては福島市の私立病院理事長にお話をお聞きし、従来の病院および医師会から見た医療特区について理解を深めることが出来た。

 (3)は特区に関する研究及び提言等を行っている団体との意見交換である。年度後半には(1)に挙げたデータ処理の方法および元データを提供して頂けるなど、研究を進める上で大きな前進であった。本年度にこうした外部の研究期間・個人とのコネクションが構築出来たことは、2005年度以降の研究に有用であると考える。

 

3・森基金利用の内訳

 

 2004年度の研究にあたっては森基金を元に必要機材や交通費の捻出を行った。研究作業を進展させてくれただけでなく、作業の効率化にも大きく貢献したものばかりである。

 

 まずデータ処理用に必要なPC機材を導入した。こうした機材導入が森基金の主な利用先となっている。データ処理のために必要なPC装置(領収証番号【1】)、データを出力するプリンター(領収証番号【2】)、インターネット接続のための無線LAN装置(領収証番号【3】)、データ閲覧・入力用の情報端末装置(領収証番号【4】)がそれに該当する。

 作業にあったては無線LAN装置及びPC装置を用いデータを入手し、引き続きプリンターでデータを紙出力する。電子データ及び紙データをもとにPC装置および情報端末装置を使ってデータの変換や入力を行っている。

 当初、森基金の申請段階ではデータベースソフト及びスキャナーの購入を予定していた。しかし研究作業を開始すると、(A)実際にはスキャナーを用いたデータ取り込みがPDFデータの場合は不適切なことや、(B)データベースソフトと比較してExcel利用は汎用性が高く、他の研究者とのデータ交換も容易であるといった点を考慮し、購入を見合わせた。これに代わってプリンター、無線LAN装置、情報端末装置を導入しており、実質的には作業効率を予定以上に上げることが出来たと感じている。

 加えてヒアリング調査の鉄道料金(領収証番号【5】並びに【6】)にも利用しており、遠隔地でのヒアリング調査を実現出来た。

 

4・今後の研究課題

 

 特区の研究にあたっては、2004年度をかけてデータ収集及び処理に一定のめどを立てることが出来た。2005年度以降は、これらデータをもとに、各省庁・自治体・関係団体・研究者等へのヒアリング作業を本格化させると同時に、分析対象の絞り込みを行っていきたい。

 こうしたヒアリング及び分析対象の絞り込みには、2004年度に森基金を活用して行ったデータ処理及びヒアリングの結果が有効に作用するものと思われる。森基金に感謝すると共に、来年度以降もより一層の研究成果実現に向けて邁進していきたいと考えている。

 

以上。