“英語コミュニケーションを促すツールの開発と評価”

本研究は,小学校での英語活動を教育の場としてではなく,コミュニケーションの場として捉える事で英語教育経験のない小学校の先生に英語活動をデザインする事を提唱し,それを支援するメディアを制作する事を目的とする.

現代の子供(小学生)にとって,将来,英語を使って何かをしなければならない場面に出会う可能性は非常にたかい.それに加え,彼らは日常生活の色々なものや海外旅行の経験からすでに多くの英語を知っている.中学校で教科として英語が教えられる前に,テストがなく,自由に活動をデザインできる小学校のうちに英語を自分の道具として使うという経験をもつ事は将来のためにも有効的である.

本研究では,小学校の先生が「英語教育の経験がない」といった理由で英語活動を児童に提供できない事,小学校英語活動が歌やゲームなどの活動にパターン化されている傾向がある事に問題意識を持ち,小学校の担任の先生がもつリソースを英語活動デザインに活かし,ヴァリエーション豊富な英語活動を創発するための支援メディアを制作する事を具体的目標とした.手法として,まずは自然なコミュニケーションメカニズムを利用し,英語活動に関連するさまざまな要素を再定義した.そして小学校英語活動のコミュニケーションとしての捉え方をモデルとして提示した.次に,そのモデルを英語教育以外の分野にあてはめて実践する事で,コミュニケーションを構成する要素間の関係を考察し,モデルを小学校英語教育に応用する場合の活用法を絞り出した.そして,小学校の先生が英語活動をデザインする際の発想の手助けとなるような支援メディアを制作した.評価は,小学校の先生からの「メディアとしての評価」と,筆者が支援メディアを利用して実際に英語活動を実施した際の「活動の考え方としての評価」の2方向から行った.

以上の過程から,小学校英語活動をコミュニケーションモデルの枠組みで考え,活動をデザインしていく事で児童が英語活動を楽しむ事ができる事がわかった.また,そうした考え方を小学校の先生のためのナレッジとして提供する事にも意味がある,という評価をした.

キーワード

小学校英語活動,コミュニケーションモデル,

プレイフル,ミーニングフル,ナレッジマネジメント

Abstract of Masters Thesis Academic Year 2004

慶應義塾大学 政策・メディア研究科 高野直子