2004年度 森泰吉郎記念研究振興基金 研究成果報告書

酵母モデルによる近動的遺伝子発現ネットワークアルゴリズムの検証
政策・メディア研究科 バイオインフォマティクスプログラム
修士課程 1年 中山 敦子

学籍番号 80425297 

研究課題

本研究では、大規模一括遺伝子ネットワークの近動的シミュレーションを目的として開発された MicroArray-based Semi-Kinetic method(MASK法)の妥当性を、酵母の代謝、遺伝子発現統合モデルによって 検証することを目的とする。 MASK法はマイクロアレイデータと速度論的な式を組み合わせることによって 大規模な遺伝子ネットワークを一括してモデル化することを可能にした手法である。 検証の対象となる系は、データと既存の代謝モデルの存在という理由から酵母を ターゲットする。 検証方法としては酵母代謝モデルに遺伝子発現を組み込み、実験データと
比較する。これにより、アルゴリズムの妥当性とその問題点を提示する。

成果の要約

酵母解糖系遺伝子ネットワークをモデリングの対象として選定した。 その後、MASK手法の検証に適した解糖系遺伝子の制御ネットワークを作成し、酵母解糖系遺伝子ネットワークモデルを 構築した。MASK法を用いて構築した酵母解糖系遺伝子発現モデルによる予測が実験的に取得された遺伝子発現プロファイルとどの程度合致するかを調べた。 結果、対象とした遺伝子発現の制御レベルは、制御の度合いをMASK法が想定する誤差の範囲内で表現できていた。 次に、その酵母解糖系遺伝子ネットワークモデルとTeusink at el.によって構築された酵母解糖系代謝モデルを組み合わせ、グルコース濃度がそれぞれvery low(0.01%),low(0.1%)、high(1%)の場合の定常状態における代謝物質の濃度を取得し、酵母解糖系代謝モデルの予測結果と比較した。今回の制御として想定しているのは、転写に関してのみである。代謝の部分 で議論を行うには、翻訳部分の制御など加味する必要がある。

目次

  1. 序論
  2. 調査と対象
  3. 結果
  4. 議論、今後の課題

参考文献

[1]Daran-Lapujade, P., Jansen, M.L., Daran, J.M., van Gulik, W., de Winde, J.H., Pronk, J.T.(2004)J Biol Chem,279, 9125--38.

[2]DeRisi, J.L., Iyer, V.R., Brown, P.O.(1997)Science,278,680--6

[3]Teusink, B., Passarge, J., Reijenga, C.A., Esgalhado, E., van der Weijden, C.C., Schepper, M., Walsh, M.C., Bakker, B.M., van Dam, K., Westerhoff, H.V., Snoep, J.L.(2004)Eur J Biochem,267,5313--29.