調査と対象

酵母解糖系遺伝子ネットワークをモデリングの対象とした理由は以下の3つである。 MASK手法は時系列マイクロアレイデータを用いてモデル構築を行う。 酵母解糖系遺伝子モデル構築の際には、DeRisiら[2]によって測定された、 2%グルコースの培地で生育した酵母株DBY7286(MATa,ura3,GAL2)がグルコースを消費し、%菌名 貧グルコース状態に遷移する過程を、主要代謝の遺伝子発現に焦点をあわせ 時系列マイクロアレイデータを7点測定したものを使用した。 このようなグルコース条件の変化によって引き起こされる酵母の状態の遷移をジオキシックシフト(diauxic shift)と呼ぶ。 この時、酵母細胞はNADH/NADの比とATPレベルを保つためにエタノールを利用するという特性を持つ。 DeRisiらのデータから、貧グルコース状態に遷移する過程では、解糖系遺伝子群はmRNAレベルで発現が抑制されることがわかっている。

MASK手法の検証に適した解糖系遺伝子の制御ネットワークを作成するため、 グルコース枯渇時の遺伝子制御に関してを調査を行った。 外部環境から解糖系遺伝子発現へのシグナルの調査と解糖系遺伝子発現の調査 を行った。以上の調査を踏まえ、グルコース誘導経路を対象とした 遺伝子ネットワークの作成を行った。 制御をうける各解糖系遺伝子の配列に存在する共通のDNA結合因子の結合モチーフから 制御する遺伝子候補を挙げた。その中からデータベースTRANSFACを用いて 実際実験で結合が確認されているもののみを制御遺伝子とした。 さらに文献調査を行い、そこから判明した解糖系遺伝子の中で、 ENO2,PGK1,PYK1,PDC1,ADH1が炭素源による制御を受けることを確認した。