慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科

森基金研究報告書

岡本 かやの

グループリビングの運営支援に関する研究

キーワード:1.グループリビング 2.運営 3.支援 4.コーディネーター 5.継続性

 

研究要旨

  日本では高齢化が加速的に進んでおり、その特徴として、高齢者の絶対数・割合ともに増加するということや、単独世帯が増加し、今後もその傾向が続くという ことが挙げられる。また、戦後の核家族の増加によって親と子の別居が顕著になり、高齢者を家族でケアすることが難しくなってきている。同時に、2015年には団塊の世代が高齢期に突入し、高齢期の住まいを考えることは必須の課題になってきている。

 

 そのような背景のなか、自ら高齢期の住まいについて考えようと一部の市民によって活動が進められ、グループリビングという暮らしが実践されている。グループリビングとは、概ね60歳以上で、血縁関係にないものが住宅の一部を共有しながら共に住まうという暮らし方のことである。

  グループリビングで暮らすメリットは、孤独から開放され、一人暮らしには無い安心感が得られること、また、施設などでは時間的拘束や管理者による規則など があるのに対して、グループリビングでは自由度が高く、自分で生活を設計できるという点である。従来では高齢期の住まいというと自宅か施設かという二択で あったが、グループリビングを始めとして第三の選択肢となる住宅が注目を浴びている。

 

  しかし、現状としては、グループリビングという住まいを一般的に表す一つの定義というものは存在しない。開設前から、その後の運営に関してもマニュアルの ようなものは存在せず、現存する事例は各々が試行錯誤を重ねて実践に移している。また、作りたいという意志があっても、情報や手法が十分にないために断念 せざるを得ないケースも少なくない。

 

  そこで、首都圏に存在するいくつかのグループリビングを対象としてヒアリング調査を行い、その運営方法、入居者の生活様式や支援方法、地域との連携を分析 することを試みた。そして分析を通して、今後のグループリビングの展開に向けて、継続的な運営を行うには何が必要なのか、また有効となる運営方法を実践す るのに必要とされる支援についての考察を行う。

 

 目的

1)入居者の生活様式とそのコーディネートに必要とされる人材や支援について

2)グループリビングの地域資源との連携と、そのために必要な支援について

以上のことを明瞭にする。

 

 方法

1.グループリビング運営主体へのヒアリング調査

2.入居者へのインタビュー調査

以上を、首都圏を中心としたグループリビングの7つの事例において実施する。

 

結論とまとめ

1)入居者が円滑に生活を営むためには、入居者の合意形成によるルール策定とコーディネーターが必要。

2)地域と連携していくには、外部資源の開拓と活用、そして資源の内部生産が有効である。

考察として、継続的な運営には包括的な組織運営と、地域連携を支援する中間組織の存在が必須である。