| 2004年度森基金/研究成果報告書 | ||||||||||||||||
| 軍事組織のパブリック・アフェアーズに関する日米比較研究 | ||||||||||||||||
| 近藤 匡 ８０３３１８０５ |
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| 研究概要 本年度は、昨年の研究活動を踏まえて、イラク戦争後の防衛庁・自衛隊の広報に焦点を当てて調査研究を行った。また、その成果を、修士論文として執筆した。 本年度当初は日米の比較を行うこととしていたが、研究の方針を修正し、日本の事例を中心に研究を実施した。具体的には、米国における軍とマスメディアの関係の先行研究成果を踏まえた上で、自衛隊イラク派遣を事例として日本における軍事組織の広報とマスメディアの関係を分析した。 活動概要 本研究においては、以下の具体的な活動を通して研究を進めた。
研究要旨 以下に、研究の要旨として、修士論文の概要を述べる。 １ 研究背景と問題関心 日本において、自衛隊の任務・活動が拡大（国内の防衛→国際貢献） ・国民は自衛隊の海外での国際貢献活動を容認するようになった 。 ・派遣に関しては、関心も高い。（派遣決定に至るまでは、連日報道） ↓ 政府側（防衛庁・自衛隊）は、「広報」を重要視するようになった。 （例：イベントや広報誌の充実、ＨＰの作成） しかし、派遣後は自衛隊の活動は報道されなくなる。（図１参照） 自国の実力部隊の海外派遣活動は、国民の理解が必要。 しかし、日本では、国民・政府・自衛隊が三位一体になっているとは言えない 。 また、政府と報道機関の関係も良好ではない。 （例：イラクは件時期の決定を巡る官邸、防衛庁、報道機関の確執など） ↓ 防衛庁・自衛隊の広報と報道機関の関係に問題？（情報に関する不必要な制限？） ２ 軍事組織の広報とマスメディアの関係 政治コミュニケーションにおける広報 ・ 政治コミュニケーションの手段の一つ（図2参照） *政府にとって発信する情報の信頼度が高い主要な手段 *市民にとって主要な情報源の一つ 軍事組織の広報とマスメディアが衝突する理由 ・ 軍事組織は「国家（部隊）の安全」を理由に限定的な情報開示 ・ マスメディアは国民の「知る権利」を充足するため国家を監視し、情報を提供する役割を担う 軍事組織の要求とマスメディアの要求は相反するものであり、それぞれの要求を発揮しようとするときに衝突する。 軍事活動に関する報道において、軍事組織は情報へのアクセス又は報道を制限しようとし、報道機関は自らの機能を発揮するために情報の選択権を守ろうとする。 ３ 軍事組織とマスメディアの関係に関する先行研究 軍事組織の広報に関する歴史の概観（米英を中心に） ・米軍の広報は大きな戦争毎に変化 * ベトナム → 自由な取材が可能 → 軍はマスメディアへ不信感 * フォークランド→報道管制と情報操作 → 強い批判、米軍が注目（グレナダへ） * グレナダ → 完全に報道機関を排除 → 非常に強い批判 * パナマ → 一部代表制取材（失敗） → 強い批判 * 湾岸戦争 → 代表制取材・一括情報配布 → 強い批判、 * イラク戦争 → 大規模な従軍取材の復活 → 軍・メディアとも好意的な評価 ・ 先行研究における軍事組織の広報とマスメディアの関係の類型と特徴 ベトナム戦争以降を「ベトナム戦争（無制限）型」「グレナダ侵攻（完全遮断）型」「湾岸戦争（プール取材制）型」「イラク戦争（従軍取材）型」の4つの型に区分する。
４ イラク復興支援活動における防衛庁・自衛隊の広報と報道機関の関係 防衛庁・自衛隊の広報と報道機関の関係に影響を与える出来事を境にして「自衛隊イラク派遣から報道協定締結まで」「報道協定締結から邦人記者退避まで」「邦人記者退避後」の3つの期間に区分する。各期間毎に、報道機関の情報へのアクセスと報道に対する制約に着目して分析する。また、各時期区分における報道の状況についても分析する。 ・ 自衛隊イラク派遣から報道協定締結まで * 情報へのアクセスに制限はない状態。 * 報道に関する規制もない状態。 * ベトナム戦争（無制限）型とほぼ同じ構造。 ・ 報道協定締結から邦人記者退避まで * 情報へのアクセスに、ほぼ制限がない状態（ただし、自衛隊が記者を管理） * 「報道協定」によって報道に関する制限が設けられる。 * イラク戦争（従軍取材）型に似た構造。 ・ 邦人記者退避後 * 邦人記者退避によって、直接的な情報へのアクセスが非常に制限された状態。 * 「報道協定」によって報道に関する制限が継続。 * 湾岸戦争（プール取材制）型に近い型の構造。
・防衛庁・自衛隊の広報と報道機関の関係変化の報道への影響 * 自衛隊の広報と報道機関の関係が、双方向コミュニケーションを制限する形に変化 * 「報道協定」「邦人退避」によるニュースバリューの減少・喪失 ↓ イラク復興支援活動に関する報道量の減少へ ５ 結論 防衛庁・自衛隊の広報と報道機関の関係「問題はある」。 ・ 情報へのアクセス、報道への制限がある関係へ変化 →偏った報道になる可能性 ↓ * 報道機関はその社会的責任を果たせない状況にある。 * 防衛庁・自衛隊側は説明責任を果たす機会を失っている。 参考文献（抜粋） ・ 井之上喬編『入門パブリック・リレーションズ』PHP研究所、2001年 ・ 大石裕『政治コミュニケーション−理論と分析−』勁草書房、1998年 ・ 大石裕・岩田温・藤田真文『現代ニュース論』有斐閣、2000年 ・ 黒川貢三郎『マス・コミュニケーション論』南窓社、1997年 ・ 柴山哲也『戦争歩道とアメリカ』（PHP新書）PHP研究所、2003年 ・ 高瀬淳一『シリーズ〈21世紀の政治学〉10 情報と政治』新評論、1999年 ・ 武田徹『戦争報道』（ちくま新書）筑摩書房、2003年 ・ 花井等『新外交政策論』東洋経済新報社、1998年 ・ 藤江俊彦『現代の広報−戦略と実際−』電通、1995年 ・ 防衛研究会編『防衛庁・自衛隊』新版 かや書房、1996年 ・ 防衛庁編『日本の防衛 −防衛白書−』（昭和45年度版-平成16年度版） 国立印刷局、2004年 ・ 中馬清福『密約外交』（文春新書）文藝春秋、2002年 ・ 門奈直樹『現代の戦争報道』（岩波新書）岩波書店、2004年 ・ ハリー・Ｇ・サマーズＪｒ．『アメリカの戦争の仕方』杉之尾宜生・久保博司訳 講談社、2002年 ・ R・A・ダール『デモクラシーとは何か』中村孝文訳 岩波書店、2001年 ・ Ｄ．マクウェール『マス・コミュニケーションの理論』竹内郁郎・三上俊治・竹下俊郎・水野博介訳 新曜社、1985年 ・ Aukofer, Frank and William p. Lawrence, America’s team: the odd couple. Vanderbilt University, 1995. ・ Baroody, Judith Raine, Media Access and the Military: The Case of the Gulf War. Lanham: University Press of America, Inc., 1998 ・ Belknap, Margaret H., The CNN effect: Strategic enable or operational risk?. Carlisle Barracks: U.S. Army College,. 2001. ・ Carruthers, Susan L., The Media at War communication and conflict in the twentieth century. Basingstoke : Macmillan ; New York : St. Martin's Press , 2000. ・ Hooper, Alan, The military and the media. Aldershot, Hants, England: Gower, 1982. ・ Katovsky, Bill and Timothy Carlson, Embedded: the media at war in Iraq. Guilford: Lyons Press, 2003. ・ Mcnair, Brian, An introduction to political communication. 3rd ed. London : Routledge , 2003. ・ Shepard, Alicia C., Narrowing the gap Military, Media and the Iraq War. Chicago: McCormick Tribune Foundation, 2004. ・ Thrall, A. Trevor, War in the Media Age. Cresskill: Hampton Press, inc., 2000. ・ Tumber, Howard and Jerry Palmer, Media at war the Iraq crisis. London: SAGE, 2004. ・ Young, Peter and Peter Jesser, The media and the military : from the Crimea to Desert Strike: Basingstoke : Macmillan, 1997 |
