2004年度 森泰吉郎記念研究振興基金 研究助成金報告書

「自然共生都市の形成に向けたエコロジカル・プランニング」

政策・メディア研究科 1年 80424158番 石渡 洋充

 

 

研究課題

本研究は、今後の都市政策における重点的課題である自然との共生について、その基礎となるエコロジカル・プランニングの方法論の構築を目的とする。エコロジカル・プランニングとは、人間と自然の生態系が有機的に調和した生活空間の実現を目指し地域や都市の計画論に取り入れるものであり、その知見を土地利用、環境利用計画へ反映していくものである。具体的な研究は、次の三つの段階を踏んで行う。@GIS(地理情報システム)及び現地調査による自然環境の解析。A自然環境とそれを支える市民・企業・行政の役割の枠組みについての研究として、ワークショップの開催。B全二者を統合し、時間軸を考慮したアクションプランニングの策定とそれに連動したストラテジープログラムの構築。

 

社会環境解析―土地利用の観点から現存または将来の緑の変化を法規制等を含め把握することを目的とする。緑地を構成する土地要素として都市公園や都市公園以外の緑地また、風致地区や生産緑地など様々に分類される土地利用形態を調査する。また、これらの土地利用形態とともに、各務原市の人口規模・法規制等の状況・関連計画及び事業等のデータを過去から将来まで時系列的に収集することで、現存の緑および将来見込まれる緑の状況を把握する。

@     各務原市の近年と過去の都市計画図より緑地に関するデータを摘出しデータベース化する。緑地の分断状況と歴史を調査する。

A     過去の都市計画図から現在までを比較し、土地利用の変化や緑地の侵食・緑地の増減を調査する。

B     緑地と市街地が隣接する部分に着目し、緑地がどのような使われ方をしているのかを調査し、各務原市の主要な緑地を今後どのように整備する必要があるのかの判断材料とする。

 

2.市民・企業・行政の役割に関する分析

自然共生都市の形成プランニングに永続性を持たせるためには、市民・企業・行政がそれぞれ明確な役割の枠組みを持つ必要性がある。  

本研究における初期調査として、各務原市主催の「パークシステム発掘ウォークラリー」に参加したことで緑地形態の分布を把握。また、その後のワークショップ(全2回)への参画を通して市民・行政と今後の「水と緑の回廊計画」推進にあたり意見・情報交換をした。

 

研究の意義と期待される成果

 

@本研究は市街化や開発に伴う緑地の孤立・分断化に対しての調査を行い、持続的な自然共生都市の形成に向けて都市の計画論や環境利用計画の際に一つの解決策を提案することができる。これらに関しては今後、学際的な研究の必要性が高まることが予想され、経済発展のめざましいアジア諸国や諸外国に対しても開発や計画立案に際して意義を持った有益な研究となる。

 

A自然環境との共生という人類にとって大きな問題は、単体の解決策では不十分であるが、本研究を進めていくことで環境共生型のまちづくりを進めていく上での制度上・計画上の問題点と周辺環境への変化が明らかとなり、住民の理解を深め重要性を認知してもらうことが真の環境共生への一歩に繋がる。

 

1年を通して得られた研究の成果と今後の展望

 

2004年夏と秋に、岐阜県各務原市及び川島町においてワークショップを開催。これは、景観法の施行に伴い注目を浴びている「景観」という概念に着目する趣旨のものであり、住民・行政と共にその具体化案として、岐阜県各務原市鵜沼地区における鵜沼駅前広場計画を提案するにいたった。

 

今後は、さらに研究を深めていくことで、自然共生都市の形成に向けた施策・方策を検討していく。そして、研究の成果として挙げられたものを、汎用性のあるものに移行していく  試みも積極的に行っていくことで、本研究の意義をさらに高めていく。