2004年度春学期プロジェクト活動成果報告書
政策・メディア研究科 修士課程1年
80424173
泉和宏
研究テーマ
3DCGキャラクタの手の新たな表現手法の研究と提案
研究概要
3DCG技術を用いた映像コンテンツを制作する上で登場キャラクタのモデリング及びアニメーションというものは、そのコンテンツの完成度・評価を左右する重要なファクターの一つである。本研究は演劇や舞台などで扱われるパフォーミングアーツ分野の動きの要素を、既存の技術であるモーションキャプチャリングシステムを用いて取り入れ、3DCGの映像コンテンツ制作におけるキャラクタの表現の幅を広げ、制作における手のアニメーションの効率化を図る手法の研究・提案をすることを目的とするものである。
今学期の活動内容
有澤誠研究会EENグループ所属の学部生、窪田万里・荒川大輔両名の企画立案による3DCGアニメーションコンテンツ「ボロット三団」に、制作進行兼制作スタッフとして参加した。携わった制作工程はモデリング・質感設定・アニメーション・コンポジットである。具体的な作業としては、コンテンツ内の環境のセットアップとトラックのモデリング・質感設定である。また担当するカットのアニメーションからコンポジットまでを請け負った。以下はそのスクリーンショットである。
成果と考察
今期の制作を通じて、主に以下のような問題点が見受けられた。
・指の可動域と指同士の衝突判定
・物体を掴む動作における、物体との衝突判定
・表現力の乏しさ
まず可動域に関しての問題だが、指の可動域というのは想像以上に広く、特に手を握るなどの内側に折り曲げる動作の場合にポリゴン同士のめり込みが発生してしまい芳しくない結果となってしまうことが多々あった。また、特に親指はさらに自由度の高い動きが可能であるため、既存のボーン構造を利用するだけではこの問題が顕著に現れた。
次に物体を掴む動作における問題点である。物を掴むという動作を3DCGのキャラクタにさせる場合、掴む対象となる物体の形状によってアニメーション付けの際の難易度にかなりの変化が生じてくる。特に握る(ここでは親指とそのほかの指とで円環を描く動作を指すことにする)という動作の場合それが顕著に出てくる。この問題点においても親指の可動範囲とその動きが重要なファクターになると思われる。
最後の表現力については判断の基準となりうる要素が曖昧ではあるが一例を挙げると、その場面に合ったそれらしい手の表情付け(キャラクタが怒っているシーンでは拳を握り締めているなど)は可能であるが、それ以上の表現(手の動きだけでキャラクタの表情や動作を現すこと)をさせるのは難しいということがある。
以上のように今期の制作を通じて手の動きを表現する上での問題点が数多く得られた。来期以降はこれを元に、1)モデリングからのアプローチ、2)ボーン構造からのアプローチ、3)パフォーミングアーツからのアプローチという3つの視点からのアプローチを試みて、その解決策となりうる手法を研究していく予定である。
今後の研究計画
引き続き文献等からの調査を行う。来期は特にパフォーミングアーツ分野での表現手法を中心に調査を行う予定である。また、並行して研究会学部生のプロジェクトに参加し実際の制作を通じて問題点へのアプローチを模索する。
参考文献
[1]メディアコンテンツの制作
金子満著、財団法人画像情報振興協会、1998.5
[2]CGアニメーションのための手の動きのモデリング
安室喜弘・陳謙・千原国宏、情報処理学会研究報告 グラフィックスとCAD、1999.2
[3]モーションキャプチャリングシステムおよび、キャプチャリングデータを利用したキャラクタ・アニメーション生成における表現の研究と支援トゥールの提案
長嶋裕里香、慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 修士論文、2002.3
[4]ディズニーアニメーション 生命を吹き込む魔法 -The Illusion of Life-
徳間書店、2002.4
[5]Principles 3Dimentional Computer Animation, 3rd edition
MO'rourle、WWNorton、2003