消費者行動特性の解明と快適な消費者環境の提案

―雑誌購買行動を例に―

 

慶応義塾大学大学院 政策・メディア研究科

80425046 修士課程1

高原直子

 

従来の消費者行動研究において、人間の認知・身体特性に注目し購買行動特性に言及した研究はほとんど存在しない。また、生体反応を手がかりとした研究も実験室実験がほとんどであった。本研究は、認知・身体特性を考慮し、空間移動を伴う行動を分析する手法を提案するとともに、購買行動特性を解明することを目的とする。消費者の眼球運動、行動、意識を同時に記述し、書店での購買行動を分析した。これにより、購買行動時の視線と行動に関するいくつかの特性を見出した。また、購買行動のみならず人間の行動全般の共通特性も明らかになった。現在、消費者の意識と注意の範囲と推移についても検討中である。本研究の成果は、消費者心理解明の方法論構築や人間中心の環境設計への応用が期待される。

 



1.     本研究の目的

 本研究の目的は、認知・身体特性を考慮した空間移動を伴う行動を分析する手法を提案するとともに、購買行動特性を明らかにすることである。また、購買行動時の注意の範囲やその推移パターンを解明することによって、効果的な消費者理解の方法論構築も目指す。

 

2.     問題の所在

従来の消費者行動研究では、環境の中での消費者の行動特性についてはほとんど研究がなされていない。また、生体反応を用いた有効な消費者理解の方法論もほとんど存在しない。このような現状においては、有効な知見は得にくく、研究が発展しないと考えられる。よって、消費者と環境の関連を考慮し、認知・身体の側面からの消費者理解の方法論構築が求められる。

 

3.     研究方法

(実験)

書店において購買行動実験を行った。実験の詳細は以下の通りである。

 

被験者:7(女子大学生、20.7±0.75)

実験方法:小型・軽量アイカメラ(EMR-8B,ナックイメージテクノロジー社製)を装着(1)

データの記録:眼球運動データおよび一連の行動はDVテープに記録された

インタビュー:別室で行動ビデオを呈示しながらインタビューを行った

 

 

1 アイカメラの映像(左)と実験中の被験者(右)

 

(分析方法)

記録されたデータは同期され、コマ送りで記述した。これにより、購買行動の全体的な特徴が明らかになった。また、各被験者の購買行動を身体運動と視線を考慮し連続的に記述した。これにより、行動と視線の関連性、空間移動を伴う行動の共通特性等が明らかになった。

 

1.     今後の展望と研究成果の応用

今後は、行動・視線パターンの確立と購買行動の推移をより詳細に検討する予定である。また、意識や注意に関しても言及していく。本研究の成果は、消費者理解のための方法論構築や、消費者行動のみならず幅広い分野での人間中心の環境設計への応用が期待される。