2005年度 森泰吉郎記念研究振興基金 研究助成金申請書

循環型社会における部材のリユーサブルシステムの構築

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 池田靖史研究室 修士2年 村本貴史

 

研究要旨

 

 地球環境問題が一般に認識されるようになった昨今,建築産業においても環境負荷を低減しようという様々な取り組みがなされている。リデュース,リユース,リサイクルという3Rの中でもリユースはエネルギー負荷が低く有効な循環手法であるにも関わらず,実例は少なく社会的なシステムとして確立されていない。そこで,リユースがうまくいかない原因を探り,リユースを促すためのモデルを提示することが本研究の目的である。

 

 自らが取組んできた,構成材の繰り返し使用を目的とした仮設建築プロジェクトを通して,リユースを促すためには,構法といった建築の物理的側面に加え,部材の調達,加工,運搬,組立,解体,管理といった一連のプロセスが重要であるとして,構法,流通形態,情報管理という3つの指標を導き出した。

 

 そこで,一般の建築生産のプロセスにおいて,構法,流通形態,情報管理という側面がどのように考えられ建築されているかを把握するため,市場形態,工業化の発展度合いの異なる4つの事例を対象に,構法上主要な部材の流れについて考察を行った。

 

 そして,リユースを促すためには,流通形態では地域に根ざしたより小さな循環が有効であることがわかった。現代の日本のように流通ネットワークが広域化し高度に発達した社会においては,経年変化や解体予定など後からしか分からない情報と,後から生まれるリユースのニーズとをマッチングさせる可能性を高めるものとして,情報管理技術のあり方が重要であるという結論に至った。

 

 キーワード

   1 リユース 2 構法 3 流通形態 4 プレファブリケーション 5 トレーサビリティ