2005年度森泰吉郎記念研究振興基金 研究成果報告書
ユーザ動作を基にしたデータ間関連度とデータ着目度算出機構

慶應義塾大学 政策・メディア研究科
大澤亮

[ 研究概要 ]

PCユーザは文書や画像,映像,音楽などのデータを日々PC上で参照するが,過去に参照したデータを再度参照するのは思ったより困難である. そこでローカルディスクに保存された文書や画像,映像,音楽などのデータやWeb上にあるデータを検索可能にするソフトウェア,俺デスクを実装した. 俺デスクはデータ間関連度とデータ着目度を算出し,データ間関連度を用いた関連検索ツールとデータ着目度を用いたタイムラインビューアをユーザに提供する.

- 関連検索ツール



関連検索ツールとは,あるデータと関連のあるデータを検索できるツールである.俺デスクはユーザ操作の履歴情報を基にデータ間関連度を算出する. 具体的には参照時刻,テキスト内検索,クリップボードの利用履歴などから算出し,これらが関連しあっているデータ同士ほど関連度が高くなる. ユーザ操作を基にした関連度を用いることで,検索システムはユーザに対して参照記憶を基にした検索を提供できる.例えばユーザは検索システムに対して 「Wordを使って企画書を作成していたときに参照していたWebページを検索」といった要求ができる.人間の記憶は連想からなるため, ユーザのデータ参照履歴の検索を効果的に支援できる.

- タイムラインビューア



タイムラインビューア上記に示す.タイムラインビューアはユーザのデータ参照状況を視覚化したものである.タイムラインビューアは,横軸に時間をとり, データ参照時間をラインで表示し,その中央にユーザが実際に参照したWebページやドキュメントのサムネイルを表示する.タイムラインビューアを 使うことで「一昨日の夜中に参照していたレストランガイドをもう一回見たい」という要求が可能になる.縦軸はデータ着目度を表しており, データ着目度が高いデータほど上位に表示される.データ着目度とはユーザのデータに対する注目の度合いを示した指標である.データ着目度は, データの参照時間や参照回数,選択文字列の反転回数などの計測結果から算出され,これらが大きいほど着目度は高くなる.これを利用して, ユーザが過去に深く参照していたと思ったデータを探す場合は上位を探し,一瞬だけ参照したデータを探す場合は下位を探しに行くといった使い方ができる.

- 実装環境



俺デスクは基本的にOSのイベントをフックするがそれに加えてアプリケーションのイベントもフックする. アプリケーションのイベントを監視するためには,アプリケーションごとにプラグインを作成しなければならない. 現時点ではMicrosoft Office,Internet Explorer,Mozilla Firefox,OpenOffice.org,Skype用のプラグインを作成した. OSはWindows 2000/XPに対応し,開発言語はC++を用いた.データベースエンジンは提供ソフトウェアに組み込み可能なSQLiteを利用した. また,語彙のパターンマッチングにはGoogle Desktop SDKを用い,関連検索ツールのGUIはMFCでタイムラインビューアのGUIはDirectXで実装した. DirectXを利用する際,低速のマシンでも動作するようにフレームレートを落とした. また,イベント監視対象となっていないアプリケーションも細かい指定はできないが検索対象にはできる.

[ ソフトウェアダウンロード ]

俺デスク 0.1.0 インストーラ (for WindowsXP)
対応プラグイン
- Internet Explorer
- Microsoft Word (XP/2003)
- Skype

*アンインストールはコントロールパネルから行ってください.

使用上の注意
- ロギングしたいアプリケーションは俺デスクが起動した後に起動してください.
- Internet Explorerのプラグインは「表示>ツールバー>俺デスク for IE」で起動させてください.

[ 関連Webサイト ]

http://oredesk.net/

[ 学会発表 ]

俺デスク:ユーザ操作履歴に基づく情報想起支援ツール
大澤亮, 高汐一紀, 徳田英幸
情報処理学会第47回プログラミング・シンポジウム 2006.1

ユーザの過去動作を基にした履歴検索用データ間関連度とデータ着目度算出機構の構築
大澤亮, 出内将夫, 高汐一紀, 徳田英幸
情報処理学会第99回システムソフトウェアとオペレーティング・システム研究会 2005.5

[ デモンストレーション発表 ]

Open Research Forum 2005.11

インタラクション2006 2006.3

[ メディア掲載 ]

Web記事「PC Watch」「ITmedia」2005.11