2005年度 森泰吉郎記念研究振興基金 報告書 サイコロ型映像デバイスZ-agonの統合的デザイン
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 修士2年
メディアデザインプログラム 奥出研究室
松本隆史 #80333256
(2005年 9月卒業 現博士課程1年 #80549446) 研究課題
サイコロ型映像デバイスZ-agonの統合的デザイン
修士研究として、立方体状に構成されたマルチディスプレイによる、マルチメディアデバイス"Z-agon"の研究・開発を行っている。ユビキタス環境のネットワーク上で、膨大な映像コンテンツを扱うために、立方体を回転する事により情報の検索・表示を行う、タンジブルインターフェースを利用する。六面体のディスプレーを用いる事で、アルゴリズムによって面と面の情報を関連づけ、行為と視覚の連動した新しい映像体験をもたらす。本年度波、アクティビティセオリーによるコミュニケーションユースの開発と、ユーザー観察によるインターフェースの検証・評価を行い、LCDモジュールとプロセッサを用いたハイエンド・プロトタイプの製作による、コンセプト・デモンストレーションを目指す。
1, 活動概要
1-1, メンバー
松本隆史(政策・メディア研究科 修士課程2年 (9月生)
中嶋志保里(環境情報学部3年)
堀口大輔(総合政策学部3年)
上田淳也(環境情報学部4年)
Z-agonでは、松本を中心にコラボレーションチームを結成して、研究を行ってきた。総合的なプロダクションとして、デザイン検証から、実装、Webによる広報までを幅広くあつかった。 1-2,コンテンツ開発・プロトタイプ開発
今学期の主要なデザイン活動として、アクティビティセオリーを利用したコンテンツ開発を行った。マルチディスプレイを利用した地図のコンテンツ(Z-map)と、迷路(Z-maze)のインタラクティブコンテンツの開発を行った。また、ユーザー観察によるインタフェースのユーザビリティ検証を行った。これらのコンテンツデザインを通して、インターフェース機構の詳細が決定した。
また、LCDを用いたモックアップの開発等、プロダクトの技術的実現可能性の調査なども行った。
1-4, websiteの更新
広報活動の一貫としてWebsiteの情報構造を改良した。プル型の情報発信を行った。最新情報はwebsiteを参照。

z-agon.com
2,学会発表等
2-1, EPFL CAIF WorkShop
スイス・ローザンヌ工科大学(EPFL) CRAFT主催の、Collaborative Artifact Interactive Furniture Workshopに参加した。Z-agonの紹介と、図書館システムのコンセプト・デザインに参加した。
2-2, LED-Matrix Z-agon (Siggraph 2005)
LEDマトリクスを用いたZ-agonのプロトタイプと制御のアルゴリズムの紹介。Siggraph 2005 Posterに採択され、発表を行った。
T. Matsumoto and N. Okude, LED-Matrix Z-agon: The Tangible Multi-Display Cube and Algorithm, Siggraph 2005 Poster - Interaction Session, Siggraph 2005
2-3, Z-agon/QR-QBコラボレーション (Ubicomp 2005)
田中浩也研究室の立方体2次元バーコード"QR-QB"とのコラボレーションを行い、Z-agonとのインタラクションの融合をはかった。Ubicomp 2005 posterに採択され、発表を行った。
T. Matsumoto, H. Tanaka, N. Okude, QR-QB and Z-agon: An Integration of A 2D-barcode Cube and A Cubic Display Device, Ubicomp 2005 - Poster P-19, Ubicomp 2005.
2-4, ORF2005での発表
オープンリサーチフォーラム2005に奥出研究室より出品した。
紹介記事:PC Watch 人と機械の境界面
2-5, CHI2006 Alt.CHI
Z-agonのデザイン概要を示したセミロングペーパーが国際会議CHI2006のAlt.CHiセッションに招待を受けた。 Z-agonをモバイル・ブラウザとして位置づけ、コンセプトデザインから、ネットワークサービスとして統合するビジョンまでを紹介している。4月発表予定。
T. Matsumoto, D. Horiguchi, S. Nakashima, and N. Okude, Z-agon: Mobile Multi-DIsplay Browser Cube, CHI '06 Alt.CHI, Quebec Canada, April 2006.
3, 修士論文の執筆
Z-agon: サイコロ型映像デバイスの統合的デザイン 概要 Z-agonは、立方体すべての面を映像ディスプレイにしたマルチメディアプレイヤーである。立方体を回転させるタンジブルインターフェースと、幾何学的に組まれたマルチディスプレイでの情報表示を行う。この全く新しいデバイスのコンセプトをユーザーのニーズから見つけ出し、イノベーティブなプロダクトとしてマーケットに提案にするために、Z-agonでは技術開発からマーケット戦略までを一体としてデザインする手法をとった。これを統合的デザインと呼び、本論文では、Z-agonのデザイン・プロセスにおける5つの段階を通じて、プロダクト開発での統合的なデザインマネジメント手法を紹介する。
キーワード 立方体、タンジブル・インターフェース、ユビキタス・コンテンツ、身体的インタラクション、メディア・デザイン
4, 成果等
4-1, 相磯賞受賞
修士研究が、2005年度SFC相磯賞を受賞した。
4-2, 海外メディアでの紹介
スイスWorkshopでの発表がきっかけとなり、各国のTech News・雑誌web等で紹介された。下記はその一部。
we-make-money-not-art "Magic cubic movie player"
T3 "Wireless cube TV with six screens - The Z-agon cube TV could change the layout of our living rooms forever."
engadget "Z-agon portable movie player in a cube"
Soft(ru) "Z-agon"
4-3, デザイン専門誌での紹介
複数のデザイン専門雑誌で、未来のデバイスのプロトタイプとして、写真入りで紹介された。
・AXIS Magazine Vol 118 (日本)特集●アドバンスモデルが語る未来のビジョン
・K. Magazine(ロシア Afisha Publishing House)
5, 今後の予定
博士課程にて、Z-agonで作ったプロダクトデザインをたたき台に、Web 2.0などのWeb共有システムと、モバイルデバイスのデザインを統合するサービスの、ビジネスモデルと技術的フレームワークを研究中。
以上。