2005年度森泰吉郎記念研究振興基金 報告書 |
· 氏名:菅沼久美子
· 学籍番号:80524821
· 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 修士課程1年
· 政策形成とソーシャルイノベーション(PS)所属
· 所属プロジェクト:ネットワークコミュニティ
地域活性化に向けた創発的な市民活動に関する研究 |
研究の目的 |
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本研究の目的は、地域活性化の一方策として、藤沢市における中高年者が構築する情報通信メディアを活用した市民活動に着目し、事例対象として3つの市民団体による協働事業やNPOやボランティアを含めた他団体との交流、シンポジウム開催などの多様な活動が活発にかつ持続可能な地域参加、情報化、活性化に及ぼす効果を提示することである。 |
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研究の背景 藤沢市市民電子会議室運営委員会、市民活動推進委員会の委員として活動するなか、2003年6月にネットワーク上のコミュニティ形成を目指す市民電子会議室に中高年者が参加する会議室を開設した。新しいネットワークコミュニティで発言する参加者達の多くは、これまで培った情報メディアの専門知識や経験を生かして、活動団体を設立し、行政との協働運営や、地域・海外支援など積極的な事業展開を図っている。また、2004年版国民生活白書では、NPOなどの市民活動が「地域の中で人と人とのつながりを生み、人・モノ・情報のネットワークを広め、地域の活力を高めることになる」として、地域を活性化させる面からもその重要性が求められていることを強調している。経済の再構築や少子高齢化の到来に伴う社会状況の変容などを背景として、 定年退職前後からビジネスやNPOを設立して、変革と創造に向けた社会貢献の準備をする中高年者が多くなった。また、メディア環境の発達により、ネットワークを活用した中高年者の市民活動には、情報化社会における人々の社会参加のあり方を模索する上で重要な意味をもつと考える。 |
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研究活動報告 2005年度における「地域活性化に向けた創発的な市民活動」に関する個別課題として、「中高年者」「市民活動」「協働」「コミュニティ・ビジネス」「他県の状況」を設定し集中的な研究活動を推進した。活動報告は以下のとおりである。 |
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■市民活動団体における協働プロジェクト |
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東京と神奈川の通勤圏内にあり、近郊住宅都市としての成熟期を迎えた藤沢市には、ビジネス経験豊かな人々の市民活動が活発でありながら活動する場が不足していた。そのような中、次に示す情報通信メディアを活用した中高年者が構築する3つの市民活動団体は、多様な方法で個人とコミュニティの間に共通の目的を作り出し発展している。
・ NPO法人 湘南ふじさわシニアネット ・ NPO法人 コネット湘南 ・ 有償ボランティア IT講師懇談会(Let’sふじさわ) これらの市民活動団体は、地域社会で多様な利害や環境のなかから共通の目的を見い出し、発展するという信念を共有しながら、相互理解と協働によって中高年者が気軽に参加できる場を作り出している。そこでは市内における産業支援、市民交流、商業活性化など、コミュニティ・ビジネス強化による地域活性化を実践している。 また、各団体が円滑な協働事業を行うための環境基盤は、地域社会や市民などより多くの広い層への理解を推進し、質の高い情報の受発信と持続的な活動基盤の整備が必要である。協働事業は最終的には「人と人との関係」が重要であり、目標に至るまでのプロセスにおいての日常的な情報受発信の環境整備は、協働活動の促進のためにもあらゆる分野との連携に不可欠であることがそれぞれの団体関係者に周知徹底されてきた。また、活動における問題解決のために現実的な共通の場を見つけるためには対話を多くとり入れている。対話は問題解決のための選択肢を明確に認識させ、どのようにしたらより良い関係になるのか、可能性について意識させるからである。対話の目的は相手の言うことに耳を傾けることで多様な考えをとり入れ、相互理解と協働的なものに変えてくれる。これらの協働が個人の視点からコミュニティの視点への方向づけを行い、信頼を生み出している。 今後の課題として他市の先進的事例などに習い、共通分野の市民活動団体との交流はできているが、一方で、財政面、仕事内容の質、組織運営、事業評価、という本来の事業活動の面で総合的なマネジメント体制の未成熟が見受けられる。商店街などからこうしたマネジメント面でも積極的に参画を深めてもらい、日常から市民活動団体と接する機会を作り出すことが必要である。また、社会貢献分野の市民活動団体として、当事者性や先見性から、より早い段階で地域問題を発見できる利点を有効に発揮させ信頼されることが、地域が期待するコミュニティ・ビジネスの協働の役割ではないかと考える。商店街などへの支援活動には、住民視座に立ち、小さな段階で課題を対処し、場合によっては先行的な情報システムや総合的なメディア開発に繋がる事業活動を実践しながら、地域住民との信頼関係が構築されていくのではないかと考える。 さらに、今後の協働活動には、団塊の世代が定年退職を迎え始める2007年に向け、彼らが長年培ってきた知識・技能・経験を活用して、地域に密着した社会参加、社会貢献などの活動を築いていただけるよう支援する活動(「ふじさわ団塊塾」)が加わることになり、自治の基礎組織としての運営が求められてきた。これらは、地域の生活文化や生活様式に基づく先輩中高年者の市民活動の経験をもとに、団塊世代の多様な活動の充実化を目指した市民活動像を参加者が共有し、協働で実現していく創造的な活動である。伝統的なアイデンティティを継承するとともに、新たなアイデンティティを創造していく活動でもある。個人の主体的な参加による集団的取り組みを通して、参加者間の連帯意識を高め、団塊の世代が市民活動の新たな担い手としての住民に成長していくための支援活動でもある。 こうした3つの市民団体による協働活動を円滑に進めていくためには、民主的な組織運営が重要になる。新たな参加者との信頼関係を高めるためには、情報の共有化が大切であり、問題の把握や解決のための専門的な力量も求められる。しかし、これらの役割を特定の個人が担うことは困難である。そこで、市民活動に意欲や経験がある個人の集団組織であるNPOやボランティア団体が連携による補完と連携を協働化することが必要であった。適切な補完関係をコーディネートし、新たな参加者である団塊の世代が市民活動に取り組むことによって蓄積されていく活動の成熟化をフォローアップする市民活動の支援組織である。 |
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